魔法学校の不適格者〜現代魔法と失われた魔法

天羽睦月

第1章 始まる運命

第1話 運命の動く日

 科学が発達するより数十世紀前。魔法文明が発達していた時代にて、光と闇の戦いがあった。一人の光属性を持つ若い女性と一人の闇の属性を持つ男性が世界の命運をかけて熾烈な戦闘を行っていた。


 その女性は世界で一人だけが扱える光属性の魔法を駆使して、女性と同じく世界で一人だけが扱える闇の魔法を用いて人々を洗脳して世界を手中に収めようとしている男性を追い詰めているようである。


「もう終わりよ! あなたが世界を手中に収めることは出来ないわ!」

「またお前か! お前はいつもいつもいつもいつも……いつも! 私の邪魔をする!」


 女性と男性は魔法文明により発達をした大都市に前方に広がる草原で戦っていた。女性の後ろに広がる都市は、防衛を担当をしている都市防衛部隊が防御魔法を展開して、都市の守りを固めている。


 男性の後ろには五人の幹部達と男性によって洗脳をされた防衛をしている都市以外の住民や主要都市の重鎮達がいた。また、さらにその後ろには魔物や魔獣の群れが女性を威嚇している。


「あなたはまたしても洗脳して、人々の心を弄んで! どこまで人をモノのように扱えば気が済むの!」

「そんなこと俺が知るわけないだろう! 世界は俺にひれ伏して意のままに動けばいいんだ!」

「そんなことは私がさせない! 何度でも私が倒すわ! 例え一人になっても!」


 女性が声高々に男性に対して叫ぶと、男性が両手を都市に向けて伸ばした。そしてそのまま閻撃と叫ぶと、男性の両手から太い黒い光線のようなものが放たれた。その光線は都市を守る防御魔法に衝突すると、耳を劈く程の音が辺り一帯に響き渡った。


「そんな防御魔法など、私の魔法の敵ではないわ!」

「させない! もう攻撃させないわ! 私の魔法であなたを止める! 絶光!」


 女性が男性に向けて光属性の魔法を放つ。すると、後ろにいた幹部二人が女性の攻撃を防いだ。


「させない……主様の邪魔はさせない!」

「主様の邪魔をするな!」


 二人の幹部は女性に向けて攻撃を始めると、女性はどこからか剣を取りだして応戦をしていた。女性が一人で戦っていると、都市から四人の男女が女性のもとに走ってきていた。


「待たせたな! 幹部達は俺達に任せろ!」

「あなたはあいつを倒して! みんなのために戦って!」

「そうだ! お前の今までの気持ちを無駄にするな!」

「世界を救うのは君なんだ! 君が今まで救ってきた人達のために!」


 仲間達が女性に対して言うと、女性の体から白いオーラが溢れ始めた。女性はそのオーラを纏いながら男性に対して一直線に走ると、剣を持つ右手に力を籠める。


「仲間のために、世界のために、あなたを今日! ここで! 打ち滅ぼすわ!」

「やってみろ! お前の弱い心では俺を滅ぼすことは不可能だ!」


 その会話の後、女性と男性は三日三晩戦い続けたという。その戦いは世界を命運を分ける戦いとなり、後に明暗戦争と呼ばれることとなる。その戦争から数十世紀後、世界に再び闇が忍びよろうとしているが、希望は存在していた。その希望は一人の少年に託され、光と闇の戦いが再び始まろうとしていた。 


 春の季節が近づいて、暖かい日が差し込んでくる三月の中旬。休日の朝日が眩しい午前中、自室のベットに寝転がって黒羽出雲は息を整えていた。出雲は弱い癖がついている薄い茶色の髪を弄りながら高鳴る心臓を鎮めようとしていた。


 出雲は身長百七十五センチの細い体型ながらも体を鍛えていたので、筋肉が程よく付いている。出雲は自身の二重の目を右手で擦り、周囲の人達から平均よりは格好いい顔と言われているも、本人にはその自覚はない。


 出雲はベットから起き上がると、窓側にある机の上に乗せている国立中央魔法学校高等部の試験結果が届いていた。出雲は静かに机の方に歩き、机の上に乗せてある洋型封筒を右手で握った。


「この封筒の中に俺の人生の結果が書いてあるのか……この封筒の中の紙で人生が変わるって怖いな……」


 出雲は着ているジャージの皺を手で伸ばすと、何度か息を吐いて意を決して封筒を開いた。すると、封筒の中に一枚の折られている紙が入っていた。その紙には合格通知書と題名が書かれており、出雲はその合格という文字を見て絶叫をしてしまう。


「やったー! よっしゃー! これで約束を守れる!」


 出雲が絶叫をしていると、部屋の扉を何度も強く叩く音がして勢いよく扉が開いた。扉を開けて入って来たのは一歳年下の妹の奏である。奏は髪色は黒色で前髪は右わけの斜めバングをしている。奏はその髪型も相まって目鼻立ちがハッキリしている美少女と近所で有名である。


「もう! お兄ちゃん朝からうるさいよ! 何かあったの?」

「あっ! 聞いてくれよ奏! 俺合格したんだよ! 国立中央魔法学校に!」

「嘘でしょ!? あの魔法が判明していなくて扱える魔法がないお兄ちゃんが!?」


 奏が言っている魔法が判明していないとはどういうことか。それは、人は生まれた際に淡い様々なその人特有の決まった色を纏って生まれてくる。火属性なら淡い赤を、水属性なら淡い青色を纏いながら生まれてくる。しかし、出雲は淡い白色を纏いながら生まれていたのである。

 

 淡い白色はこれまでに報告された事例がなく、どの属性を扱えるのか特定が出来なかった。それ故に出雲は魔法の才能がないと言われ続けていた。しかしそれでも基礎魔法などは扱えるために、全くないという訳ではないと示し続けている。


「属性が判明していないだけで魔法は扱えるから! 現に試験に受かってるからね!」


 出雲は奏の頭を右手で撫でながら言うと、奏が撫で過ぎと言いながら出雲の右手を払った。


「お兄ちゃんは受かったのはいいけど、お母さん達は記念受験な感じでいたようだけど、どう説明するの?」

「それは……普通に受かったから行くと言うわ! それしかない!」

「そうだね。 お母さん達は喜んでくれるよ! お兄ちゃんが魔法学校に通うのは不安だけど、前から言ってた約束ってやつを果たすためだもんね!」


 奏が言った約束とは、十年前に公園で出会った少女との約束のことである。この国一番の魔法学校で再開をしようという約束のことであり、少女の名前も知らなかったが、会えば分かるだろうと出雲は考えていた。


「うん! 約束を果たすため、またあの女の子に会うために俺は国立中央魔法学校に今まで頑張ってきたんだ。 奏も夢を叶えるために頑張ってね」

「当然よ! 私も夢は沢山あるからね。お兄ちゃんに負けないくらい大きな夢よ」

「そうだね。奏はいつも夢のために頑張ってるみたいだし、いつかどんな夢か教えてな」

「叶ったら教えてあげる!」


 出雲と奏は笑い合って楽しく話していた。その会話を数分間続けていると、出雲が親に伝えてくると言って部屋を出て行く。出雲の家は日本の首都である東都の端にある大川区に存在し、駅まで徒歩数十分の場所に建てられている一軒家の家に出雲は両親と共に住んでいる。出雲は妹の奏と父親と母親の四人家族で仲良く暮らしている。建物の一階部分に両親の部屋があり、二階部分はリビング、そして三階部分には出雲と奏の部屋がある。


 父親は出雲より大柄な体型をし、黒髪の短髪をしている。容姿は出雲よりも男らしい印象を受ける。母親は奏を大人にしたような容姿をし、母親と奏が二人で出歩くと、姉妹のように毎度見られていた。ちなみに。父親の名前は正人、母親は楓という。


「父さん! 母さん! 俺合格したよ!」

「何突然? 何に合格したの?」

「いきなり朝からテンション高いなー。何に合格したんだ?」

「俺が進学したかった国立中央魔法学校だよ! 俺合格したんだよ!」


 出雲は声を上げながら書類を両親に見せた。その書類に近寄りながら二人が書類を見ると、二人はハモりながら嘘でしょと声を上げた。


「あの出雲が……あの出雲が……国一番の国立中央魔法学校に合格した!? 嘘でしょ!?」

「出雲が合格したのか! どうやって合格したんだ!?」

「嘘じゃないし! 普通に試験を真正面から受けて合格したんだよ! 少しは子供を信じなよ!?」


 出雲が両親に向けて信じてよと言うと、二人は良く頑張ったなと優しい口調で言った。その言葉を聞いた出雲はありがとうと返した。

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