私の暴露
アネモネ
第3話
大人になり、野中がヤス子さんと婚約した時も中本だけは遊んでいましたし、唯一の文学さえ疎かにしだした為に、私達は中本とは少し距離を置くことにしました。
然し、中本はそんな事など関係ないと言わんばかりに野中や私の家にやって来ては酒を飲んで過ごし、帰るということを繰り返していく内に、ヤス子さんに目をつけたのでしょう。
最初の頃はヤス子さんも野中に対して、貞操が悪いと思っていたのでしょうが元々、ヤス子さん自体も中本に興味があったのでしょう、次第に中本へと傾いていくのが分かりました。
野中はそんなヤス子さんを別に引き留めようともしている風はありませんでした。
野中は何時か私に話したことがあるのです。
「妻が自分から離れていくのは己の不甲斐なさが原因である」と。
例え、周りが彼女を中傷したとて自分だけは彼女の事を中傷はしない、こんな己にここ迄着いてきてくれたのだから、と。
「では、中本についてはどうするのだ」と問うたこともありました。
それに対しての答えは至極簡単でした。
「今迄通りの付き合いは無理だろう。だが、少なくとも己は友人で居たい。彼奴の持つ文学観はいくら学んでも届かない場所にあるのだ。」
口惜しいことに、中本の文学観は私達3人の中でも中々に達観していました。
野中も私もその事については嫌という程痛感しておりましたから、その点については認めざるを得ませんでした。
然し、その点を抜きにしても野中の懐の広さは御分かり頂けると思います。
私の暴露 アネモネ @kadenn
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