最終話
おばあさんが言っていることが
今ひとつ理解できない。
だが、俺は黙っておばあさんの話を聞いた。
「それから数年してわたしは体を壊してね。
店も閉めることに、、末期の癌だったよ。
半年ともたないと言われた。
でもね、あの子のことが忘れられなくて。
もしかしたら、またあの子は
生まれ変わって現れるかもしれない。
それを見守りたい。死にたくないと。
でも病はわたしの体を蝕んだ。
5ヶ月ともたなかったよ。
あの店だけは残しておきたかった。
あの子との思い出が詰まったお店を。
でもね、あのお店を潰そうとする人が
現れたんだ。
あんなボロいお店だ、仕方ない。
でも、わたしはそれが許せなかった。
わたしもその思いが強かったんだろうね。
こうして中に入った悪いやつは
外に出れないよう、このお店を
潰そうとする人間が現れないようにした。
そしたら、あんたがきたんだよ。
あんたが、、もうわたしは嬉しくて、、
それに、ここまでたどり着いてくれた。
あぁ、こんな日が訪れるなんて。
またあんたと会って話すことができた。
こんな嬉しいことはないよ。
なぁ、今の人生は楽しいかい?
やり残した事、ないかい?
ちゃんと、、幸せかい?」
俺の頭は真っ白だった。
でも、なんか温かい気持ちになった。
俺の頬には涙が流れていた。
「幸せだよ。」
俺は泣きながら笑顔で応えた。
そんな俺の姿を見ておばあさん、、
いや、母さんも涙を流しながら微笑んだ。
「俺、もう十分だよ。
一緒に行こう?母さん。」
俺がこの世にいたことを賢二や
他の友人たちは誰も覚えていない。
いきなり身近な人が居なくなったら
残された人の気持ちはどうだろう。
はなからいなかったことにすれば
相手を傷つけずに済む。
だったら最初から一人で生きればいい話。
だが人間一人では生きていけない。
生きていく上で沢山の人に出会う。
誰かの大切な人になるかもしれない。
生きるのも死ぬのも簡単ではない。
人生やり直せるとしたら
あなたはどうしますか?
今と同じ選択をしますか?
真夜中の本屋 ゆち @_yuchi_
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