第10話

「ずいぶんと久しぶりだね。

 お前は何も覚えていないだろう。」


「俺とあなたは、、」


「まぁ、落ち着いて。

 順を追って話をしようじゃないか。」


そういわれ俺は一度深呼吸をした。


「わたしには当時大学生の息子がいてね。

 その子は大学生活を本当に楽しみにしてて

 実際大学に行くようになってから

 友達もできて毎日楽しそうだったよ。

 家から一番近い大学に行って休みの日は

 お店を手伝ってくれてね。


 でもあの子が三年生の夏、

 ある日事故にあってね。

 即死だったそうだ。

 これからやりたいことや夢もあったろう。

 一人残されたわたしは哀しみと悔しさで

 胸が張り裂けそうだった。


 それから二十年以上過ぎたある日

 店の前を掃除したいたら一人の

 男の子が目についてね。

 びっくりしてしばらく動けなかったよ。

 あの子と顔が瓜二つだったんだ。

 しかも、あの大学に通ってた。

 わたしは、あぁあの子はきっと

 もっと大学生活を楽しみたくて

 無念で無念で、、

 生まれ変わってわたしの前に

 現れたんだろうなって。

 毎日その子の元気な姿を見るのが

 わたしの唯一の生き甲斐だった。


 だが、三年ほど経ったある日から

 姿を見かけなくなってね。

 最初は風邪でも引いたんだろうって。

 少しした時前を通った子たちが

 話しているのが聞こえてね。

 まさか、そんな、あの子じゃない

 って、でも気になって気になって

 その子たちに話かけたんだ。


 イジメに耐えきれず大学の屋上から

 飛び降りた子がいる。って。


 あの子かどうかわからなかった。

 わたしはあの子を見なくなった日からの

 新聞を読み漁ったよ。

 見かけなくなった次の日の新聞に

 載っていたんだ。

 写真をみて青ざめたよ。

 あの子だった。」

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