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「今日も綺麗だね。早く僕のものになればいいのに。」

太ももから始まり、首元まで、彼の指がわたしの身体をなぞる。

「昨日は、誰と寝たの?」

背中の一点をトントンと指で叩かれた。

「キスマークでも付いてた?」

「傷跡になりそうなくらいのものが付いてるよ。君に本気なんじゃない?」

「それは、貴方もでしょう。」

跡に嫉妬をするような力強い指先が、背骨をつたる。

「はは、仰る通り。これ、上書きしたら怒る?」

「好きにしていいよ。」

誰が付けた傷跡とか、誰がそれを上書きしたとか、私はどうせ、起きたら忘れている。

「好きにしていいなんて優しい言葉をかけるから、男は勘違いするんだよ。そのうち誰かに刺されるって…」

「刺されたらその時は、その時かな。」

「あ、そう。まあ、いいや…ね、咥えてよ。」

誰でもいい。何でもいい。


今日も私は、誰かと寝る。快楽に溺れる。


行為を終え、下着を手に取る。

「君は、誰とも付き合わないの?」

彼が口を開いた。

「何故?」

「色んな男に言い寄られているなら、一人くらい優良物件がいてもおかしくないだろ?」

「付き合うなんて面倒くさい事、したくないし興味も無いよ。」

「俺は、どう?」

タール12mgの煙草に火を付け、煙を纏いながら彼は、こちらを見る。

「……私にメリットが無い。」

「俺、こう見えても稼いでいるからね。君は一生働かなくていいし、お金に困らない。」

彼の口説き文句は、浅はかで薄っぺらいものだった。この関係を割り切れているようで、割り切れていない。冗談のように好意を示しているが、彼は本気で口説いているのだ。

「結婚相手を探しているなら、婚活アプリでも始めたらどう?」

二本目の煙草を咥えた彼に、遠目で笑いかけた。

「……本当に好きでもない男と寝れるんだね。俺は、君のおもちゃか。」

「おもちゃだなんて人聞きが悪いよ。貴方の気持ちには答えられない。それが事実としてそこにあるだけよ。」

「そうか…」

最近はこんなことばかりだ。彼らは、変化を求めて関係性を変えたがる。

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