3
「今日も綺麗だね。早く僕のものになればいいのに。」
太ももから始まり、首元まで、彼の指がわたしの身体をなぞる。
「昨日は、誰と寝たの?」
背中の一点をトントンと指で叩かれた。
「キスマークでも付いてた?」
「傷跡になりそうなくらいのものが付いてるよ。君に本気なんじゃない?」
「それは、貴方もでしょう。」
跡に嫉妬をするような力強い指先が、背骨をつたる。
「はは、仰る通り。これ、上書きしたら怒る?」
「好きにしていいよ。」
誰が付けた傷跡とか、誰がそれを上書きしたとか、私はどうせ、起きたら忘れている。
「好きにしていいなんて優しい言葉をかけるから、男は勘違いするんだよ。そのうち誰かに刺されるって…」
「刺されたらその時は、その時かな。」
「あ、そう。まあ、いいや…ね、咥えてよ。」
誰でもいい。何でもいい。
今日も私は、誰かと寝る。快楽に溺れる。
行為を終え、下着を手に取る。
「君は、誰とも付き合わないの?」
彼が口を開いた。
「何故?」
「色んな男に言い寄られているなら、一人くらい優良物件がいてもおかしくないだろ?」
「付き合うなんて面倒くさい事、したくないし興味も無いよ。」
「俺は、どう?」
タール12mgの煙草に火を付け、煙を纏いながら彼は、こちらを見る。
「……私にメリットが無い。」
「俺、こう見えても稼いでいるからね。君は一生働かなくていいし、お金に困らない。」
彼の口説き文句は、浅はかで薄っぺらいものだった。この関係を割り切れているようで、割り切れていない。冗談のように好意を示しているが、彼は本気で口説いているのだ。
「結婚相手を探しているなら、婚活アプリでも始めたらどう?」
二本目の煙草を咥えた彼に、遠目で笑いかけた。
「……本当に好きでもない男と寝れるんだね。俺は、君のおもちゃか。」
「おもちゃだなんて人聞きが悪いよ。貴方の気持ちには答えられない。それが事実としてそこにあるだけよ。」
「そうか…」
最近はこんなことばかりだ。彼らは、変化を求めて関係性を変えたがる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます