第35話 帰還
ミッションをクリアしたことで、闘技場を覆っていた結界のようなものがなくなった。
闘技場から戻る俺を仲間たちが出迎えてくれた。
「タカくん。……イズミの魔法パクりましたね?しかも、あっさりと」
「ははは、うん。パクった。あの場で思いついたのがブラックホールだったからね。
でも、アノ魔法は危険だな。今回は問題なかったけど、ほんの少しミスったら、仲間も巻き込んで全滅しかねない。魔力消費も激し過ぎる」
「お兄ちゃん、お疲れさま」
「タカ、お疲れさま」
「うん、ありがとう。結局変なミッションに巻き込まれたから、3人で戦うのは次までお預けだな」
「そうね、今日はここまでだろうから、明日またやりましょう」
「ですね、明日こそ3人でやりましょうね」
「キョウコさん。今日は帰りましょうか」
「き、キョウコさん!?な、なんだ、突然!?」
何か超照れてる。普段強気な分、照れると破壊力が凄い。
「あ、何かつい。イヤでした?」
「いや、しかし、うーん、ま、まあ、そうだな。いつまでも先生は堅苦しいか……あたし達は命を預け合う仲間だしな。よし、キョウコさんで良いぞ」
「じゃあ、キョウコさんで」(俺)
「「キョウコさん」」(ミキ&ユイ)
「キョウコちゃん」(イズミ)
「キョウコ」(ユウキ)
「おいっ!キョウコちゃんはやめろ、イズミ!!」
「あと、ユウキ!貴様、どさくさに呼び捨てしたな!締めるぞ!!このっ勇者(仮)めっ!!」
「か、仮……そ、その仮は勘弁してください。ゴメンなさいキョウコさん」
「ふん、まあ、良い。じゃあ、今日は帰ろうか。
しかし、この部屋は闘技場しかないが、どうやって先に進むんだ?」
「あぁ、アレじゃないですかね?」
俺が指差した方角を皆が注目する。
先ほどまで一面壁が囲む部屋だったが、壁から扉が出現していた。そしてあの扉は、第一階層から、第二階層に向かう際の部屋にあった扉と、まったく同じ意匠である。つまりあの扉は、第三階層に至る扉ではないだろうか。
「あれは……いつの間に……だが、あの意匠の扉は第三階層に続く部屋か?
しかし、この第二階層はこの部屋だけか。そして闘技場での戦闘イベントが、メインの階層ということか。」
「そのようですね。あのミッションはボス戦も兼ねてるんでしょうね。
じゃあ、早速行きましょうか。
第一階層の部屋と同じなら、転移陣から入場転移陣に移動できると思います」
キョウコさんも頷く。
扉の先には予想通りの転移魔法陣だ。
早速皆で魔法陣の上に移動する。
「第三階層へ移動されますか?または入場転移陣へ移動されますか?」
「入場転移陣まで頼む」
キョウコさんが代表して答える。
「そのまま退場されますか?」
「そのまま帰れるのか?帰れるなら、そのまま退場で良い。」
「承知しました。では、入場転移陣を通して皆様を転移させます。照合スタート……確認。パーティーメンバー全員を退場させます」
眩い光と共に、浮遊感が全身を包み込む。
転移を意識した次の瞬間には、足は地に着き、ギルドの転移陣だった。
これは楽だな、最寄りの転移陣なら何処からでも帰還できるのは有難い。
―――――――――――――――
トントン
扉を叩く音がする。
「皆様、お帰りですか?失礼しますよ?」
受付嬢のジュリエットさんが扉を開け部屋に入って来た。
「よく分かりましたね?戻ったの」
「えぇ、ギルドで管理してますので、転移時には担当受付嬢に分かるようになってるのですよ」
微笑む、ジュリエット嬢。めちゃめちゃ可憐な笑顔だ。
「ところで一度、進捗をお伺いしたいのですが、お疲れとは思いますが、お時間頂けますか?」
この笑顔で断れる訳がない。ユウキも首振りマシーンのように首を縦に振っている。
そして、またしても女性陣の視線が氷点下だ。
俺達は、別室でジュリエットさんに、昨日と今日の成果を報告する。
2日目終了後の実績
討伐数 78/100(魔石56/100)
※炎獅子の魔石×21は、ブラックホールで消滅。
※獄炎獣ケルベロスの魔石×1は、ブラックホールで消滅。
討伐数と魔石の数が合わないこと、レアボスを続けて当たりをひいたこと、神器を入手したことを報告すると、ドン引きしていたのだった。
こうして、俺達の2日目の攻略が終了した。
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