第33話 神技 暁

 闘技場の上に黒い炎が次々と出現している。あの一つ一つが炎獅子として形を成すのだろう。

 さて、どう戦うか?近接で戦う?それとも女神魔法で戦う?

 選択肢は無数にある。実際にやれることは多い。


(そうだな……まずは、神技を実戦で試してみようか)


 これは、女神の使徒用の身体強化を一段引き上げた技だ。光の女神の力、闇の女神の力を得ている俺にしか出来ない戦闘スタイルのはずだ。


「「「「「「ガァーーーーーーーー」」」」」」

 無数の咆哮が重なる。かなりの数の炎獅子が闘技場に出現したようだ。いずれも第一階層に出現した隠しボスと1体1体が同じ力を持つと分かる。

 まだ、100体は出現していないと見える。おそらく数を減らしていけばその分補充されるのだろう。ざっと見たところ……20体と言ったところか。


「さあ、はじめようか。高速思考に神気による身体強化発動……」

 俺の身体を薄く黒いオーラが包み込む。これが闇の女神の力を得て使える神気による身体強化の《纏い》。今までも出力を落として身体強化と共に使用はしていた。だが、出力を落とさない全力の纏いは初めてだ。

 そして、戦闘時と学習時に俺がよく使用する高速思考。発動すると思考速度が名の通りに加速する、結果的に俺と周囲の認識の時間の流れが変わるのだ。いまの俺には、のだ。


「これが全力の女神の使徒専用の身体強化だ」

 全開出力で光の高速思考と闇の纏いを使用するのは初である。名付けて……


神技しんぎあかつき

 暁。夜から夜明けを意味し、光と闇をつなぐ意味を込めて俺が名付けた技だ。

 効果は……


 一瞬で俺の持つ日本刀(過去召喚された日本人が残した一品)により、刻まれた10体の炎獅子が魔石に変わる。

 炎獅子は何をされたのかも分からないだろう。高速思考により加速した思考に、纏いにより大幅に強化された身体能力が追いつく。俺には敵が全て止まって見える。そして敵の認識外からの神速での攻撃。

 これが神技しんぎ あかつきだ!


 この技に求められるのは、魔力制御だ。この技は、燃費が悪いのだ。だが、魔力制御なら任せてもらおう。

 伊達に日本で生まれて17年。何のためかも分からない魔力制御の訓練を、ルーチン作業として昼夜問わずにしていたのだから。


 と、解説しながらも残り10体の炎獅子が魔石に変わる。


 この神技を使う俺は、しているようなものだ。俺だけが超速で考え、動ける。敵は全てが止まって見えるのだ。


 ここで神技しんぎあかつきを解除する。

「ふぅ~」

 いくら魔力制御に長けているとはいえ、この技はチートだ。だから発動にそれなりの魔力を消費する。今までの模擬戦等では、出力20%程度で使用していたのだ。


「「「「「「!」」」」」

 皆の驚く声が闘技場の外から聞こえる。流石にいきなり使ったから、皆は認識できなかったか……

 恐らくミキやユイは、女神魔法の応用で近いことはできるかもしれないが、無理してもあっという間に魔力を使い切ってしまうだけだろう。


 そして、再び頭の中に声が聞こえる。

「対象の戦闘力が条件を満たしました。炎獅子80体に変わり、レアボスを召喚。獄炎獣1体を討伐対象に変更します」


「……獄炎獣ね、しかし、よく条件が変わるな。だいたいミッションって何だろうか?」


 ここで闘技場に変化が起こる。

 中心に闇が広がる。そして闇が徐々に暗い暗い炎へと姿を変えていく。そして炎から次第に姿を変えていく。

 時間にして10秒くらいだろう。暗い炎が生物の姿へと変貌していく。

 出現したのは、炎獅子よりも禍々しく大きな姿……


 そして、再び頭の中に声が響く。


「《獄炎獣ケルベロス》……対象を討伐したら本ミッションは完了です。……ミッションスタート」



 合図と同時にケルベロスがかき消えた。

 そして、闘技場には巨大なクレーター。タカトの立っていた位置にクレーターが出現していた。それを為したのは、ケルベロスの前足から繰り出された一撃。


「もちろん。当たってないぞ?ケルベロスさんよ」


 当然、躱した。ケルベロス出現と同時に発動した神技しんぎあかつきなら躱せる。

 だが、こいつは


「上等だ。本気で殺ろうか。ケルベロス!」


《VSケルベロスに続く》



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