第32話 隠しミッション

 第一階層のボス ジェネラル・リザードマンを討伐後、ボス部屋奥の扉に刻まれた魔法陣が輝き出していた。

 しばらく輝いたところで、急に輝きが消え失せてゆく。そして、魔法陣が消えたと同時に、ゆっくりと扉が開いていく。


 扉の中には新たなる転移魔法陣。どうやら階段などで下っていく訳ではないらしい。


「この魔法陣で第二階層へ転移できるようですね?先生」


「あぁ、そのようだな。第二階層へ行こうと思うが、皆は問題ないか?」

 キョウコ先生は後ろから、扉に入ってきたミキ達に確認を取り、皆が頷く。


「良し!では行くか。では、魔法陣の中へ移動しよう」

 キョウコ先生の言葉に皆が魔法陣へ集まる。

 そして、魔法陣が起動。すると、頭に声が響く……


「第二階層へ移動しますか?それとも、入場転移陣へ移動しますか?」


「ここから入場転移陣にも戻れるのか……先生、昨日もここに入れば良かったですね?」


「あぁ、全くだ。なるほどな、下の階層から入場転移陣に戻るのが大変だなと、思っていたが、これは便利なものだな」


「では、予定通り第二階層へ移動する。皆、良いな?」

皆が頷く。


「では、第二階層へ移動を頼む」


「承知しました。照合……パーティメンバー全員を第二階層へ転移します」


 眩い光と共に、浮遊感が全身を包み込む。

 転移を意識した次の瞬間には、足は地に着き、黒い光を放つ石材で構成された部屋へ移動したようだ。


「第一階層と違い、天井や床や壁の光る色が黒なのだな」

 キョウコ先生のつぶやきが聞こえる。


「さあ、ここから敵が強くなるはずです。気を引き締めて行きましょう!」

 俺の言葉に皆が頷く。さあ、第二階層だ。


 ―――――――――――――――


 転移陣の部屋から出ると、そこは丸型の大きな部屋になっていた。

 入口は高い位置にあり、壁を伝うように壁に沿った階段状になっており、どうやらその階段を使い、中心へ向けて降っていくような部屋のようだ。

 部屋の下部分には円形の舞台のようになっている。まるで格闘場の舞台のようにも見える。

 俺達は警戒しながらも、下に向けて降っていく。


「これ、絶対に下の舞台みたいなとこに降りたら、イベント発生しそうだな」

 階段を降りながら、隣にいるユイに話しかける。


「うん、もしかしてこのボスの間だったりして?」


「ねえ、タカにユイちゃん。私達もそろそろ実戦しておかない?」


「そうだなぁ~俺達はまだ対モンスターの実戦経験ないからな。キョウコ先生?」


「あぁ、ずっとあたし達だけが戦っていたからな。確かにこの辺でおまえ達3人も戦っておいた方が良いだろう。ユウキにイズミ、ここの部屋で戦闘があるようなら、タカト達に任せるで良いか?」


「俺も戦いけど、大丈夫です。タカ達の闘いをちゃんと見るいい機会だし」


「はい。イズミも問題なしです。タカくん頑張って~」


「よし、ミキ、ユイここの部屋で戦闘あるようなら、俺達でやるぞ。

 そういえば、3人で一緒に戦闘するのは初めてだな。イズミの魔法に対処した以外では」


「グハッ!!!」

 イズミが吐血してる素振りで、ショックを受けてる。


「お兄ちゃんとわたしのコンビネーション見せてやりましょうね!」

 ユイが嬉しそうに俺の腕に、自分の腕を絡ませる。


「いや、いや、私もいるからねっ!酷くないユイちゃん」

 冗談を言いながら、ユイとミキが笑いあっている。


 まあ、冗談を言い合っているものの、油断はしていない。

 注意への索敵は、イズミが魔法で行っているし、俺も神気で周囲を探ってもいる。

 現状は、何も異常がないまま、が迫ってきていた。


 そして、階段を降りきった。目の前には、明らかに怪しい舞台がある。


「何が起きるか分からない。とりあえず俺が舞台に上がってみるよ」


「「タカ(お兄ちゃん)、気をつけて!」」


 そして、そのまま舞台に俺だけが降り立った。

 ……何も起きないのか?そのまま舞台中央まで歩いて行く。


 すると、頭に声が響く……

「一人で闘技場への侵入を確認。パーティメンバーは戦闘エリア範囲外に待機。条件を満たしました」


(!なんだ!?この声は!これは転移時の声と同じか?)


「「え!?」」

 ミキとユイが慌てて、舞台に上がろうとするが、一瞬の差でそれは叶わない。


 円形の舞台を覆うように薄暗い膜が広がり、すっぽりと覆われてしまったのだ。


「これは……出れないし、ここには入れない。俺だけ隔離されたか」


 そして、再び頭の中に声が聞こえる。

「隠しミッション。バトルロイヤルを開始します。参加者は一人で炎獅子100体を1時間以内に討伐してください。」


「「「な!?、100体!!!」」」

 キョウコ先生、イズミ、ユウキの三人が叫ぶ、ミキとユイは……


「「炎獅子なら何とかなるか。でも参加がタカ(お兄ちゃん)じゃないとヤバかったかも」」

 ミキとユイは、あまり心配していないようだ。……ちょっとは心配して欲しい。


(でも、俺で良かったか。先生達では、炎獅子が100体は荷が重いだろう)



 そして……舞台、いや闘技場と言ったか。闘技場の上に無数の黒い炎が浮かび上がる。隠しミッションとやらが、始まったのだ!




 ―――――――――――――――

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