第29話 ボス部屋到達。そして……

 初の戦闘が終了してからも油断なく、ダンジョン内を探索中だ。

 ちなみにこの世界のダンジョンは、一定周期でMAPが変わるダンジョンも存在する。入口&出口の転移陣のある部屋だけが影響を受けないのだ。

 そして、このダンジョンはBそれに該当してる。

 Cランク階層は、第一から第三層まで全て同じような石畳に石壁の景色が続いているダンジョンで、目印になるようなものもなく、基本的には四角の部屋の組み合わせで構成されている階層だ。


 各部屋や部屋と部屋を結ぶ通路のようなもの、いずれの場所でもモンスターは出現する。最初から存在しており、こちらを視認後に襲い掛かるリザードマンや、天井から強襲してくるスライムなどを討伐しながら順調に進んでいる。

 どうやら最初の戦闘で、モンスター出現の場に居合わせたのは稀な出来事だったようだ。以降は、最初から存在しているモンスターからの襲撃に対応する形で、戦闘が開始されている。


「《フレイム・ストーム》」

 イズミの杖の先から発生した炎と嵐が融合した炎嵐が、天井から強襲したスライムを焼き払う。

 しばらく轟音と焼ける匂いが立ち込めるが、その後に残されているのは5つの魔石だ。


「これで魔石も28個目か。1層目の攻略で順調と言えるか」

 キョウコ先生が、床に落ちている魔石を拾いながらつぶやく。


「はぁ~でもちょっと魔力残量が心許ないないかもです。まだまだ魔力制御が甘いのか、ちょっと威力のある魔法だと、5回くらいで魔力枯渇の状態になりそうです」


「イズミ。ちゃんと回復しておけよ?」

 俺はイズミに魔力回復ポーションを手渡す。


「これマズイのよね、タカくん口移ししちゃう?……あ、すみません。睨まないでください。怖いです」

 ミキとユイの殺意の籠った視線にイズミがたじろいでいる。


「ほら?行くぞおまえ達」


「う~ん、普通ならハーレム羨ましいとか思うのかもしれんが、あの中には入りたくないな。キョウコ先生は入らないので?」


「締め落とされたいのか?ユウキは。それにあたしのような年上に興味はあるまい」


「いや、タカはキョウコ先生みたいなタイプはのはずですよ」


「なっ?!……本気か??……くっ、貴様、教師をからかうとはようだな!!」


「キョウコ先生、漫才やってないで、先に進みません?」


「おまえに言われたくないわ、鹿モノめっ!!」

 解せん……何故怒られたのか??


 ちょっとした休憩で一度緊張をほぐれたようだ。さあ、仕切り直しだ。

 ちなみに俺とミキ、ユイは1階層目では見守るだけで、戦闘には参戦していない。話し合った結果、先生たち3人だけで実践経験を積んでもらっているのだ。


 さらに奥へと進んでいったところで、ダンジョンに変化が見える。


「ん?何だこの部屋は?奥に何かあるな?」

 戦闘に立つキョウコ先生がつぶやく。

 その部屋の奥には今までの扉とは異なる意匠が施されており、魔法陣が扉に刻まれている。


「もしや、ボス部屋では?」

 確か城の書籍で読んだものに、ダンジョンには一定階層ごとに階層ボスと呼ばれる協力な個体がいると書かれていた。


 そして、俺達が部屋の中央に近づくと、それは起こった!

 中央に黒い炎のようなものが現れたのだ。そしてその中からは現れた。

 炎を纏った獅子のようなモンスター。Cランクダンジョンの隠しボス《炎獅子》

 本来ならここで登場するのは、《ジェネラル・リザードマン》のはず。


 各ダンジョンには、条件は不明ながら、稀に強力な個体がボス部屋に出現することがあるそうだ。それがこのCランクダンジョンの隠しボス《炎獅子》。このダンジョンについて書かれていた書籍にも情報はあった。Bランクボスに匹敵する隠しボスとして登場する《炎獅子》の出現条件を引き当ててしまったらしい。過去この《炎獅子》によって、Bランクパーティを全滅に追い込んだ記録もある。


「どうします?キョウコ先生。イレギュラーな事態です。俺がやりましょうか?」


「……いや、タカト。あたし達にやらせてくれ。ここは任せてくれないか?」


「……大丈夫ですか?炎獅子はBランク相当ですよ?」


「頼む。いいか?イズミにユウキも」


「「はい。やりましょう!」」


「分かりました。でもヤバイと思ったら、すぐ参戦しますからね」


「いいの?タカ?(ねえ、あれは少し強そうよ??)」

 ミキは心配そうだ。そりゃそうだよな。


「(あぁ、少し強い感じがするな。でもあの3人ならいける。そん気もする)」

 小声で俺も答える。


「(お兄ちゃんの言う通り、無理と判断したら介入しましょう。ね、ミキちゃん)」

 ユイはすぐに介入できるように、既に戦闘準備をしている。


「わかったわ。駄目と思ったら、すぐに《レールガン》叩きこんでやるわ」

 ミキは既に魔法準備に入ってる。気持ちは分かるが、介入する気満々じゃないか。



「よし、イズミにユウキ……やるぞ。炎獅子ぐらいあたし達だけでどうにかできないと、ただの足手纏いだからな」


「えぇ、前衛が俺とキョウコ先生。後衛にイズミのパターンでいいですね?」


「あぁ、それが一番機能してるからな。よし、行くぞ!」


「フルサポートかけます!……《マルチ・エンチャント》!」

 キョウコ先生、ユウキの全身が虹色に輝く。


(ほぉ~凄いなっ!パワー・ディフェンス・スピードの補助魔法を連続発動した!)



炎獅子は余裕をもって佇んでいる。一定範囲に敵が近づいてから、戦闘行為をするようだな。


「「いくぞっ!!炎獅子!!!!」」

 キョウコ先生、ユウキが炎獅子の前に躍り出る。


 そして、そこからさらに加速!一瞬で炎獅子の左右から襲い掛かる。


《VS炎獅子に続く》




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