第28話 ダンジョン攻略1日目

 眩い光と共に、浮遊感が全身を包み込む。地に足がつかない。そんな感じだ。

 時間にしてみれば一瞬だったのかもしれない。

 これが転移か……そう思った瞬間には足は地に着き、風景が一変していた。


 俺達はついにダンジョンに足を踏み入れた。


 イルティリスダンジョンCランク階層。このダンジョンは全三回層で構成されている。今回の依頼内容は、階層内で100匹のモンスターの間引き。そして討伐後に出現する魔石の回収だ。これが討伐の証となる。

 モンスターを倒して入手できる魔石は、この世界では様々な魔道具の動力源として活用される。つまりこの世界にとって、モンスターはなのだ。


 転移魔法陣の置かれた部屋は、円形の部屋になっており、魔法陣だけが存在している部屋のようだ。壁も床も、光沢のある石材のようなもので構成されている。継ぎ目も綺麗だし人工的な建築物としか思えない。床も壁も綺麗すぎるのだ。

 だが、これこそがダンジョンの特徴なのだ。場所や階層によっては森林や砂漠地帯、火山のようなものまでが、ダンジョンとして再現されているらしい。

 Cランク階層が、たまたま人工建築物のような石材で構成されたダンジョンであるだけなのだ。


「まさにゲームで見るようなダンジョンね」


「ですね、あの扉から出た先からは、モンスターもいるんですよね?」


「あぁ、そのようだ。初めての命のやり取りが発生する戦闘だ。皆、気を引き締めていくぞ!」

 ミキ、ユイ、キョウコ先生と続いてゆく会話。いよいよ冒険者として俺達の活動が開始されようとしている。


「なあ、タカ」


「どうした?ユウキ」


「最初はメインで戦うのは、俺やイズミ、キョウコ先生に任せてくれよ?」


「あぁ、大丈夫だ。何かあればフォローするよ」


「頼む。だけどギリギリまでは、俺達にやらせてくれ。俺達も早くタカやミキちゃん、ユイちゃんと並んで戦えるようになりたいからな。何より俺とイズミは見習いを脱却したい」


「わかった。極力3人に任せるよ。

 じゃあ、そろそろ行きましょうか、キョウコ先生」


「ヒカワも大丈夫か?」


「大丈夫です。ここから、イズミの大賢者伝説が始まるのですよ!」


「……まあ、大丈夫そうだな。では、前衛にあたしとスドウ。後衛がヒカワだ。

 ミヤモト兄妹、ナルカミは、イズミの後方で待機で頼む」


「「「「「了解!」」」」」


「あ、キョウコ先生その前に一つだけ。」

 ユウキから出鼻をくじかれた。皆もユウキに注目している。


「ん?なんだ?」


「いや、せっかくなんで、キョウコ先生も俺達のこと名前で呼びません?タカやユイちゃんは同じミヤモトだし。俺達はここでは、同じパーティメンバーで命を預け合う仲間でしょ?ここは呼び方も皆、でいきましょうよ」


「む……うむ、そうだな……分かった。では行こうか?


「はい。行きましょう!!」

 ユウキは嬉しそうだ。確かに名前で呼び合うのはいい考えだ。特にキョウコ先生には、名前で呼ばれたい。


「よし、では行くぞ!」

 改めてキョウコ先生の言葉に、俺達はセーフティルームの扉を開け、モンスターのいる危険地帯にいま一歩を踏み出す。



 扉の先は、それなりに空間として広い。横幅も広く、しばらくは真っ直ぐの道のようだ。いわゆる長方形のような部屋のようだ


「ここはだだっ広いが、特に何もない部屋だな」

 俺達は警戒しつつ、ダンジョン探索を進める。

 そして、広い部屋をそのまま進み、視界に新たな扉が見えてきた時だった。


 !!


 何だ?中央にモヤのようなものが渦を巻いている。しかも何かな感じがする。


「これは!モンスター出現の兆候かっ!全員戦闘準備っ!!」



 前衛のユウキとキョウコ先生がそれぞれの得物を手に構えに入る。

 ユウキは、《斬れ味向上の魔法効果が付与された魔剣》に《防御力向上の魔法効果が付与された片手用の盾》と身体には《防御力向上の魔法効果が付与された鎧》を装備している。


 キョウコ先生は、メインが格闘体術なので、《打撃の魔法効果が付与された革製のナックル》、身体はチャイナ服のようなセクシーな装いだが、《防御力と速度向上の魔法効果が付与された武道服》である。


 後衛に控えるイズミは、《魔法威力向上の魔法効果が付与された魔杖》と《防御力と魔力制御向上の魔法効果が付与された魔法士用のローブ》を装備している。


 いずれも城から支給された一級品の装備だ。それだけ期待をかけられている証でもある。


さきほどのモヤが徐々に濃くなり、そして人型に近い異形を作る。この間に攻撃しちゃえば良いと思うのだが、この間に攻撃しても何も効果がない。モンスターが実体化してからじゃないと双方攻撃はできないのだ。

と、見てる間にいよいよモンスター登場のようだ。

出現したのは、全5体のリザードマンタイプのモンスター。剣士タイプの《ソード・リザードマン》が3体、魔術士タイプ《メイジ・リザードマン》が2体が出現した。


「相手も連携をとってくる。先手を取るぞ、ユウキ!」


「はい!いきます」


「イズミ。サポートを!」


「はい!……《スピード・エンチャント》」


魔法により加速した二人。相手の陣形が整う前に、ユウキとキョウコ先生が敵の前衛に到達した。

ユウキの斬撃がソード・リザードマンの反応を許さず首を斬り落とす。

そしてキョウコ先生の拳が1体のソード・リザードマンの顔を捉える。さらにそこから身体を回転して回し蹴り。残るソード・リザードマンの首を一瞬で刈り取る。


「……《サンダー・ボルト》」

詠唱に合わせて、魔法が発動する。

ユウキとキョウコ先生の攻撃にあわせて、後衛のメイジ・リザードマンの上空に出現した雷を纏う雲から、直下に雷撃が落ちる。その雷撃がメイジ・リザードマンに直撃、さらにそこから範囲を広げて、もう1体のメイジ・リザードマンにも雷撃が及ぶ。そして爆散。雷光が消えたあとには2個のがあるだけ。


一蹴と言えるだろう。キョウコ先生、ユウキ、イズミによる電光石火のような連携で、5体のリザードマンは一瞬でに変わっていた。


「……正直、モンスターとは言え命を取る行為。あたし達に出来るのかと思ったが、精神的には落ち着いて行動ができた。自分が変わってしまったようで、怖い気持ちもあるが、のには必要な変化なのだろうな」


「そうですね。自分でも驚くほど落ち着いています。ちょっと思うところはありますが、戦えずに仲間の負担になるぐらいなら、俺は戦える方が良いです」


「イズミもです。人が相手でも同じようにいけるかは分かりませんが、少なくともモンスター相手に怖気ずくことはなさそうです」


こうして、ダンジョンでの初戦闘、初めてのモンスターとの命の駆け引きは一瞬で勝負がついた。


討伐数 5/100(魔石5/100)



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