第25話 ギルドマスター
「フフフ……エルフが珍しいかの?」
「あ、すみません。ジロジロと見てしまいまして」
「あぁ、構わんよ。世界で一番の美貌と名高いワタシだ。見惚れないなんてことは無理じゃろう?それに異世界から来た客人は、例外なくワタシのようなエルフには、まあ食いつく食いつく。
なんで、慣れっこさ。もっと舐めるように見てくれても良いんじゃぞ。おっと!でも、お触りは厳禁じゃ」
ジー……
やばいギルドに来てから、女性陣からの評価の下落が止まらない。
いや、でもほら?ユウキなんかまだエルフ様をガン見してるんだから、俺を睨まないで欲しい。
ジー…
ユウキは見惚れたまま固まってやがる。
「う、美しい……」
「フフフ…では、改めてご挨拶を。
ギルドマスターのラインハルト・ローゼンと言う。ちなみにハイエルフじゃ。本来なら故郷の森を統べるべき王族に連なる血筋なんじゃが、ワタシは放蕩エルフでな。故郷を離れてこんなとこでギルドマスターなんかやっておるんじゃ。
一応、元Sランク冒険者さ。それなりに長生きしておるからの、異世界から来た客人に会うのも初めてじゃないのさ。もっとも、女神様の名を冠する非常識な称号持ちの客人は初めてじゃがな」
「ゴホンっ。うちの男共が失礼を……。はじめまして。あたしは、キョウコ・センゴク。称号は女王。こいつらの教師……いや、一応代表みたいなものと思って頂きたい」
「さあ、皆も自己紹介を」
キョウコ先生に促され、俺達も自己紹介をしていく。
「タカト・ミヤガワです。称号は女神の使徒。よろしくお願いします」
「ミキ・ナルカミ。私の称号は、謎の女神?まあ、女神関係なのは確かね。よろしくお願いします」
「ユイ・ミヤガワです。名前の通りタカトの妹です。わたしは女神の巫女の称号です。兄共々よろしくお願いします」
「お、俺は、ゆ、ユウキ・スドウでございます。本日はお日柄も良く絶好のお見合いび、び、」
「イズミ・ヒカワです!将来的に大賢者に到ります。もしかしたら女神に至る可能性もあります。よろしくお願いします!」
ユウキの自己紹介ぶった切ったなイズミ。日本に居た頃と別人なんだが……
「クックク、此度の異世界からの客人達は面白いのぉ。
消去法でユウキ殿とやらが勇者見習いかな?一応、城から聞いていた情報通りだな。ちなみに1人指名手配になったアホがいるようだな」
「「「「「「!!!」」」」」」
「あぁ、すまん。もしかしたら友人関係だったかもしれんかったか。詫びよう、無神経じゃったな」
「……正直申し上げて、鷲宮は、容疑通りであるならば救いようがないので、気遣いは無用です。こちらこそ同郷の者が大変ご迷惑をおかけして、申し訳ない」
「まあ、我々ギルドも捜査には協力しておるからの、だいたいのことは聞いておる。少なくともアレのやらかしに、皆が責任を感じる必要はあるまい。そうさな、冒険者について話す前に捜査状況を知らせておこうか。城へ報告をあげるところだったから、最新の最新情報だよ」
「!?」
「まずはヤツは既に国内にはおらん。行方をくらましてから、ついに国境にまで到り、強引に抜けたのが確認されとる。予想以上に移動が早く、追いつけずじまいだったらしい。どうも昼夜問わず休むこともなく移動しているらしい。おまけに身体能力が異常じゃな。たまたま相対した冒険者はAランクだったらしいが、それでも振り切られたらしい」
「あまり聞きたくはないですが、犠牲者はさらに増えてますか?」
ここは俺達も目をそらしてはいけないところだ。
「……残念だが、兵士に少し出ておる。現状は逃げることに重点を置いておるようだから、犠牲者も少ない方なのだろうな。同等または格上かもしれんような相手には逃げの一手に徹しておるそうだ。
で、現在は完全に見失ってしまった。少なくともギルドのある5ヵ国の主要な街にはおらん。女神教にも捜索は協力してもらっておるが、それでも分からん。ワタシは、魔国にでも入られたかもしれんと見ておる」
「魔国……確か魔王の支配する地ですね?」
「よく勉強しておるな。さすが使徒様じゃな。そうじゃ魔国に入られてしもうたなら、ちょっと手が出せん。迂闊に動くと魔国との戦端が開いてしまうからの」
(厄介なヤツだな、罪を犯し逃げたばかりか、魔国に逃げた可能性があるとはな。ん?何で知識もロクにないのに、魔国なんかに逃げた??)
「ギルドマスターちょっと気になったんですが?」
「固いのぉ、ラインと愛称で呼んでおくれ?使徒様?」
「えっと、じゃあラインさん」
「うむ。何で魔国なんかに逃げた可能性があるのか?じゃろ?どうもな、ヤツに途中から同行者がおるようなんじゃ。しかも暗黒魔法らしいものを使う者らしいと報告が来ておる。事実ならば魔国の者かもしれん。ギルドと女神教が消息をつかめん。さらに同行者が暗黒魔法の使い手の疑いがある。以上から魔国に逃げ込んだ可能性アリと見ておる」
「捜索は一旦中断ですかね?」
「引き続き、ギルドや女神教での捜索は継続するさ、だがすぐに進展があるかは厳しいかもしれん」
(……いずれ俺達の手で決着をつけないといけないかもしれないな)
「「「「「……」」」」」
しかし、皆考えこんでしまった。せっかくの冒険者デビューだったのに。
「ほれほれ、考え込んだところで仕方あるまい?皆が今日参った目的を忘れておらんか?」
「そ、そうでしたね。分かりました。何かあればあたし達も同郷の者として協力を惜しみません。ですが、まずは冒険者として力をつけることを優先したいと思います。ご説明頂いても?」
キョウコ先生の言葉に皆も頷く。
「無論じゃ。そのためにギルドマスターとして、ここにおるからの」
「さて、まずはギルドについてと冒険者について知っておることもあろうが、知らせておこうか」
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