第19話 聖女レナ・ボーグ
「使徒様、私に何かございましたか?もちろん構いませんよ」
ファリス神官長が応じる。
「ありがとうございます。少し伺いたいことがありまして」
「では、使徒様。よろしければ私の部屋にご案内しましょう」
「えぇ、お願いします。皆、少し俺はファリス神官長と話をして来るよ」
「あぁ、分かった。ではあとでな。じゃあ、他の皆はあたしの部屋に来ないか?先ほどの提案について少し話をしよう」
「俺もあとでキョウコ先生の部屋に行きますよ。……では、ファリス神官長行きましょうか」
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場所を移して、ファリス神官長の部屋に着いた。
神官長の部屋にはずいぶん本が多い。時間があればこの国の本にも興味があるんだが、今は聖女の件をはっきりさせよう。
「使徒様、どうぞ」
ファリス神官長がお茶を差し出してくれる。うむ、いい匂いだ。
「えぇ、頂きます。……うん。美味しいです」
「ハハハ良かった。使徒様のお口にあったようでなによりです。では、さっそく。何か私にお聞きになりたいことでも?」
「……そうですね(いきなり聖女レナ・ボーグの名を出すのは危険か?)」
「ファリス神官長、この世界には、聖女と呼ばれる称号なり、加護なりを持つ者はいますか?実は俺の世界でも、聖女と呼ばれる人たちは絶大な力を持つ者として有名なんですよ。それで、この世界でもそのような人物がいるのか?と、少し気になってまして」
「ほぉ?聖女ですか?……使徒様の世界にも聖女が?もしや、勇者と呼ばれるような存在もそちらの世界にいらっしゃるので?」
少し考えながら、ファリス神官長も話を進めてくる。
「俺たちの世界では勇者とは、あくまで空想上の物語などでしか語られませんね。聖女は、実際にこの世界とは意味が異なるかもしれませんが、聖女のような人物は、実在の人物として語られることがありました(嘘はついてないぞ。自然な聞き方じゃないかな俺!)」
平然と答える俺。ここで怪しまれると聞きだせないからな。
「そうなのですか?となると、聖女は全世界共通なのですかな?私も嬉しく存じますよ」
「ん?嬉しいですか?」
「えぇ、私の家系に……そうですな、約300年ほど前ですかな。聖女様がいらっしゃるのですよ」
「ん?300年前ですか?(あれ?ちょっと予想と違う流れなのだが……)」
「えぇ、ボーグの家系でも一番の誇りとされるレナ様と言う聖女がいらっしゃいましてな」
「!!(キタぞ!だが、300年前だと?)」
「えぇ~と、つまりファリス神官長の祖先に聖女様がいらっしゃったと?そして、お名前がレナ・ボーグ様ということでしょうか?」
「えぇ、その通りです。使徒様」
ファリス神官長は誇らしげに笑みを浮かべる。その笑顔に他意はなさそうで本当に誇らしそうだ。
(メッセージでまだ生きていると聞いていたが……それに俺が死んだのは、17年前じゃないのか?まさか、時間の流れが違うのか?過去の俺からのメッセージは俺が300年後の世界に戻ることを想定していない?)
「どうかされましたか?使徒様?」
「あ、いえ大丈夫です。(まだ判断材料が少ない。もう少し情報を集めよう。)ちなみに、その聖女レナ様でしたか。レナ様は聖女として立派な人生を歩まれたのでしょうね?良ければ、もう少しレナ様のお話を伺えますか?」
「えぇ、もちろん構いません。我がボーグの家系では、英雄とされる聖女様ですからな。さて……どこからお話しましょうかな」
そこから語られたのは、以下のようなものだった。
・300年前に4体いた魔王討伐の為に3人の勇者と共に旅立ったこと。
・勇者と共に各地で魔族を討伐。救った命は数多く、各地でも逸話になるほどのものだったこと。
・4体いた魔王のうち2体を討伐。だが、北の魔王と呼ばれる魔王との戦いで、仲間の勇者と共に魔王と相討ち。しかし、命失われる前に行使された聖女の大魔法により、残っていた2体の魔王も封印。見事に使命を果たした。
・聖女レナ・ボーグと共に戦った勇者の名は、「魔法の勇者アーシェ・ロギンス」「槍の勇者ナイト」そして「無名の勇者と言われる剣の勇者」の4名
(どうしよう?聞いてた話と違ってるんだが??過去の俺、どうなってんの?)
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