第11話 女神の使徒VS勇者

「宮本ー!!!!!」

 鷲宮の身体がぶれる。


「!」

 こいつ、勇者の身体能力を十分に使えているようだ。

 目の前に迫る鷲宮。しかも、いきなり殺傷力高い突きがきた。


「はぁー!!!!!!」

 鋭い突きが俺を正面に捉えている。


(ふむ。高速思考の効果か。凄いなこれは。頭の回転が速くなると言うよりは、思考と現実が切り離されて現実の動きがスローに見える。思考が現実速度を超えて加速される影響の副産物か……)


 高い身体能力もあり、高速思考で加速している認識にあわせて、俺は余裕を持って流れるように攻撃を躱す。


「チッ、……なら、これならどうだっ!」


 突きから流れるように横なぎの斬撃


(ふむ、流石に剣術スキル持ちか)


 俺は、横なぎの斬撃に自分の木刀をあわせる。

 そして、木刀が触れる瞬間に上に軽く受け流す。


 俺達が本気で真正面から打ち合えば木刀が破壊されてしまう。


「チッ、こしゃくな!ならば、こうだ!」


 体勢を崩しながらも、勇者の身体能力を活用して、強引に身体を回転しながらも、再度斜め上から斬り下げてきた。


 さて、少し女神の使徒らしい戦いを見せてやるか。

 自分がどれだけ動けるかも確認しときたいしな。


 俺は斬り下げに合わせて、ヤツの眼前に木刀を

 圧倒的なスピードと高速思考で捉えた鷲宮の攻撃を予測。をとる。


「うっ!!!」

 鷲宮は信じられない顔をしている。

 一方的に攻め立てていたのに、いつの間か眼前に俺の木刀が

 さぞ、慌てたことだろう。


「まだやるか?鷲宮」


「……当たり前だ。本気を見せてやる」

 そしてヤツの身体が目の前から掻き消えた!」


(……身体強化か。流石は腐っても勇者か。いきなり使いこなすとは)


 身体強化は魔力を身体に循環させて、身体能力を爆発的に強化する魔力を用いた技。魔力を持ちコントロールできるなら効果に差はあれど、大抵の人は使える技だ。ステータス確認で自分にできる事を理解できるのだが、初めてにしては身体強化を使いこなしているようだ。


「なかなか、やるじゃないか」

(さて、実践で使うのは初めてだが、使徒の身体強化も試してみるか……)


 俺の身体を魔力とが包みこむ


 後から斬りかかってきた鷲宮を余裕を持って躱す。

 俺も使えるさ、これぐらいの身体強化ぐらい。

 おまえよりも上の力で。


 俺の身体強化は勇者とは違う。

 女神の《神気》を纏わせて強化される俺の身体強化は、魔力による身体強化に加えて、纏わせた神気が敵を捕捉し捉える。だから目を閉じていても、鷲宮の動きが手にとるように分かる。


 横なぎ、斬り下げ、そこからの斬り上げも余裕を持って躱す。

 右に左に襲いくる鷲宮の攻撃は当たらない。ことごとく躱していく。


「ふ、ふざけやがって……これならどうだーっ!!」

 鷲宮は左手を前に突き出し、魔力を集中させている。


「……《フレイム・ストーム》!!」


「!」


 奴の手から凄まじい炎が吹き出し、収束していく。そして、弾けようとしている。


「魔法!?」


 弾けた炎の轟音が修練場に轟き、爆発的な風を伴い、それはとなった。

 そして、炎の嵐は俺だけを目掛け迫ってきていた。


「ゆ、勇者殿ー、それはル、ルール違反ですぞー!!!!!」


「鷲宮!ルールすら守れんか」


(ならば……)


「し、使徒様ー!お、お逃げください!」


 俺は襲いくる炎の嵐を……


 シッ……


 《神気》を纏わせた木刀で断ち切った。


「な!!」


「鷲宮……ここまでだ」

 圧倒的な早さで、鷲宮の背後に回り込み、奴の首に手刀を落とす。


「……」

 静かに崩れ落ちる鷲宮。


 俺と鷲宮の勝負は、俺の完勝で幕を下ろした。



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