第10話 勇者の怒り

「宮本ーーーーーっ!」

 鷲宮の声が広間に響きわたる。


「なんだ?」


「俺と勝負しろ!女神の使徒だと?それがどうした?

 俺は勇者だぞ。須藤のような勇者見習いなんぞとは違う。俺こそが真の勇者。

 誰が一番かをはっきりさせようじゃないか。なぁ、宮本ーっ!!!」


「あぁ、いいぞ」

 祐樹をバカにしたような態度が気に入らない。さらに女の子を物扱いするような態度も気に入らない。何よりミキに色目を使うようなヤツはギルティである。


(ふむ、あの勇者は少々我が強いようだ。使徒様に実力の差を分からされて、大人しくなる方が良かろうて)


「使徒様、宜しければ城の地下に修練場がございます。そちらで勝負なさってはいかがでしょう?」

 ファリス神官長が申し出る。


「いいですよ。じゃあ、早速移動しましょうか」


「チッ、舐めやがって……後悔させてやるぞ。勇者の力見せてやろう」


「宮本、大丈夫なのか?」

「おい、タカ大丈夫か?」

「宮本君、やっちゃえ……あいつは女の敵」

響子先生、祐樹、氷川さんが心配してくれる。


「ねえ、ミキちゃん」

「何?ユイちゃん」

「どう思う?お兄ちゃんとあの人との勝負?」

「フフ、勝負にならないでしょう?だって女神の加護あるんだしね」


「使徒様と勇者の勝負、胸が高まりますわね~」

「余の城が破壊されねば良いがな……だが、使徒様と勇者の力を見る良い機会じゃな」

 アザリア魔法士長にゼファル王も勝負に賛成のようだ。


「チッ、何だ?どいつもこいつも。分らせてやるさ、勇者の力をな!」

鷲宮がイライラしている。少しは落ちつけよ


「騎士団長よ」


「はっ!王」

 ん?王の後ろに控えてたのは騎士団長か。なかなか強そうだなぁ


「女神様の使徒様と勇者殿を、修練場へ案内せよ」


「はっ!お任せを」

騎士団長が案内してくれるようだ。



 ―――――――――――――――


 騎士団長に案内されたのは、城の地下に設けられた広い闘技場のような空間。中央には円形の舞台のようなものがある。


(ふむ、ここが修練場か?)


「使徒様と勇者殿が手合わせされる。騎士団長、準備を!」

王様に様づけされるとムズムズする……


「はっ!ただちに」


 準備が進められている間に再度自分の力を確認しておこう。

 俺は目を閉じ、自身の中にある力を意識する。魔力にスキル……、そして加護……、んこれは、神気か……


 ―――――――――――――――


 そして……10分もすれば準備は整ったようだ。

 ガヤガヤ、ザワザワと人の気配がずいぶんと増えていた。


(しかし、ギャラリー多いな?たくさんの兵士やあれはメイドさんか?ずいぶん集まってきたな。)


「勇者様かっこいい!」


「あれが、女神の使徒様……」


(む?メイドさんは勇者の方が好印象と見える!チッ)


「さて、使徒様に勇者殿。準備はよろしいか?

 ルールは……」


「待て、ルールは剣だ。魔法は使わずに剣のみでやろう。俺の魔法は強大だろうしな、ハンデをくれてやろう」


「うわ?あの人剣スキル持ちだから、剣スキルのないお兄ちゃんに剣なら勝てると踏んでるんだわ」

ユイが指差し鷲宮を詰る。


「相変わらず、小さい男ね、鷲宮は」

ミキも呆れている。


「……あんだけ大口叩いてセコい野郎だな」


「やっちゃえー宮本君〜」


「宮本……いや、二人とも怪我がないようにな」

祐樹、氷川さん、響子先生達の激励を背にして、舞台へと向かう。


「使徒様は、剣でよろしいので?」

 騎士団長が確認を取ってくる。


「えぇ、構いませんよ。剣で」


「分かりました。では、ルールは剣を使用。魔法は禁止です。ただし、身体強化など魔力を用いた技は問題ありません。もちろん相手への殺傷行為は禁止です。

 危険と判断したら、私が止めに入りその場で終了とします!よろしいですね?」

 騎士団長が審判役を担ってくれるようだ。


「それで大丈夫です」

まあ、剣だけで十分だろう。いまの鷲宮なら


「では、剣はこちらの木刀をお使いください。魔力を纏わせておりますので、そうそうは折れません」


「いつでもどうぞ」


「チッ、後悔しろ。宮本」


「では……はじめ!」

騎士団長の合図で、俺と鷲宮との勝負が始まった。



 ―――――――――――――――

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