第5話 ステータス

 俺たちは、ファリス神官長の案内で別室に案内されていた。

「勇者候補の皆さま、混乱もあるでしょう。

 しばし、この部屋で休まれるが良いでしょう。

 決して、悪いようにはしません。皆さまの安全は国が保証いたします。

 詳しいお話は明日にでも王より話がありますが、今日はあとで鑑定だけを受けて頂く予定です。

 では、私は一旦これで失礼します」

 そう言いながら俺たちを残し、部屋をあとにした。


 俺たちは混乱していた。当然だろう。ここは日本じゃない。外国どころか地球じゃない。異世界だ。異世界のイルティリス王国だそうだ。


 ここに通される前に召喚の経緯を説明されたが、すんなり納得できるかは別の話だ。


 説明された内容はこんな感じだった。

 ・ここは異世界であること。

 ・召喚された者は、召喚された時点で言語・文字の読み書きができるように調整される(確かに意識しなかったけど不自由がない)

 ・この世界では各国が持ち回りで、10年ほど貯めた魔力で召喚陣を起動する。

 ・召喚されるのは異世界に忌避感がなく、能力適正の高い人種が選択される。(やはり過去も日本人が多いらしい。これは異世界召喚を題材にした小説やアニメ、ゲーム等で抵抗感がないのが、日本人に多い影響かもしれない)

 ・異世界召喚される対象は例外なく元の世界で”死が確定した人間”に限定される。

 ・異世界召喚される対象は、概ね全盛時の年齢で召喚される。(つまり対象に選ばれた人間が40~50代なら10~20代の姿で召喚される)

 ・異世界召喚を行うのは、召喚される者が高い能力を持った人間が多く、対魔族に対する戦力として期待されるから。

 ・異世界召喚の技術は女神により伝えられた秘儀であること。


 ここで気になるのは、これだ。

 

 召喚が現実な以上、あれも夢じゃないのは確定だろう。

 召喚前に現れた闇の女神に、あの時俺は聞いた「俺は死んだのか?」と。

 女神はこう言った「死んでないですよ。まさかの事故ですね、アレは」と。

 つまり俺達は死んでいない。違うはずだ。

 すると、怪しいのは響子先生の持っていたか?あからさまに光っていたしな。さらに何故まで巻き込まれた?


 今はまだ情報が足りない。さて、どうしたものかな……


 ―――――――――――――――


「嘘でしょ…」

 俺の天使(妹)の結衣は、震えながらずっと俺の服の裾を掴んで離さない。


「異世界転移って、タカのよく読んでいた小説みたいなことが、本当にあるなんて」

 光姫も動揺が激しいのか、結衣と一緒に俺にピッタリと寄り添っている。


「理事長のアレのせいか?」

 響子先生もいつもの元気さは影を潜め、少し影のある表情を見せている。


「響子先生、結局あの理事長の手紙は何だったんですか?」


「あれは教員朝礼時に、理事長の秘書と言う人から、があるので、HR時に読むようにと言われてな。私のクラスだけじゃないんだ。学年問わず全クラスの担任が手紙を渡されていたんだ」


「全クラス?(あの手紙が原因なら、それで結衣も巻き込まれた?)」


「だいたいあの手紙にはが書かれていただけでな。全く意味が分からんよ」


(……召喚に繋がる原因は、やはりあの手紙か?でも調べようがないぞ、クソッ)



「クッククク…」

 鷲宮は皆と離れた場所で薄っすらと笑っている。

(ん?、鷲宮はなんでニヤニヤしてるんだ?大丈夫かアイツ)


「おまえはずいぶん落ち着いてるな?タカ」

 祐樹がそばに来て話かけてきた。


「まぁな、結衣もいるし俺はしっかりしないとな」

(ぶっちゃけ多少混乱はあるが、アレも夢じゃなかったみたいだしな)


 俺は、この世界に召喚される前に出会った『闇の女神クロム』のことを考えていた。

 そういえばだったか?やってみるか?

(心で念じるんだよな?……ステータス)


 ―――――――――――――――

【名 前】タカト・ミヤモト

【称号】《女神の使徒【光・闇】》

【加護】《女神の寵愛》

【スキル】《魔力制御》《女神魔法》《高速思考》《神気》《創造(封印)》

【SP】-

【その他】メッセージがあります

 ―――――――――――――――

(!!!!!!なんじゃこりゃ、ゲームかよ)


 俺の目の前にまるでゲームのような表示が浮かんだ。


(ん?メッセージがあります?なんだこれは?)


(メッセージを見ますか? Y/N)


(何だ?意識したらシステムメッセージみたいなものが出たぞ)


(とりあえずYだ。)


(メッセージを開封します)

 ―――――――――――――――

 送信元:タカ

 件名:未来の俺へ

 本文:

 よう、俺はタカ。過去のおまえで剣の勇者だったものだ。

 まあ、何のことか分からんだろうな。

 記憶は封じたからな、ちょっと事情があってな。

 さて、メッセージとして残すのも限度があるので手短に伝えよう。

 このメッセージを最後まで読み終わった段階で少し記憶が戻る。あとは、未来の俺に託すとしよう。


 この世界ヴァナリーでは、おまえの敵も多いだろう。

 確実な敵だけをおまえには知らせておく

 ・魔法の勇者;アーシェ・ロギンス

 ・槍の勇者:ナイト

 ・聖女:レナ・ボーグ

 確実な敵はこの3名だ。そしてこいつ等の背後にいるナニかだ。俺はこの3人の裏切りにあい命を落とした。

 だが、俺には女神の協力があった。いまおまえが転生し、再びこの世界に生きて存在できるのも女神のおかげだ。


 次におまえがこの世界でやることを伝えておく

 ・女神の封印を解き、力を借りること

 ・全ての記憶と力を取り戻すこと

 ・信用できる仲間を作ること

 ・敵には容赦するな。甘さが悲劇を招く


 それと、あの3名と黒幕以外にも敵がいる可能性がある。そして、あの裏切り者たちは当然生きている。全盛期の力のままにな

 いずれ接触があるかもしれんが、倒す力を得るまでは知らないフリをしておけ。ヤツ等に勝てる力を身につけるまではな。


 あと、女神についてだが……

 全員凄い力を持ち頼もしいのだが、色々抜けているところもある。

 ようするにだ、*女神なんだ。だが、全員当然ながら駄*神な自覚はない。間違っても駄女*などと言うなよ?心だけに留めておけ。

 ※女神権限により一部文言に制限がかかっております。


 さあ、そろそろ記憶が戻り始めるだろう。次の記憶が戻る条件が整ったら、またメッセージが送られる。まどろっこしいのは承知してるが、段階を踏まないとおまえが持たない。


 では、次のメッセージまでさらばだ。


 過去のおまえより

 ―――――――――――――――


(……※女神権限により一部文言に制限がかかっております。って普通に駄女神だめがみって読めるじゃないか……

 記憶ねぇ~~特に何とも……!!!)



(とその時、俺の頭の中で光が弾けた……)



 ―――――――――――――――

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