第6話・最終話?『紙一重でも大好きだよ、お兄ちゃん』
何だかんだと問題を起こすお兄ちゃんですが、何とか私や達也さんと明美さんがフォロー
しつつ、私は無事に高校生になりました。
〈なぁ真央、高校生活はどうだ?〉
「ほとんど、何も変わらないよ」
変わったのは学校の方でした。売店はコンビニのように食堂はレストランのようになり、
外観も変わった。お兄ちゃんの仕業で…。
〈部活にも入らない、友達とも遊ばずに帰ってきてるけど学校、楽しくないのか?〉
「そんな事ないよ。ただ、お兄ちゃんと一緒に居るのが1番、楽しいんだもん」
本当にそうでした。私がゲーム好きで、どんなゲームでも最強にしてくれ、
それに付き合ってくれるし、最近は隣の工房、研究所でまったく分からないけど、
お兄ちゃんが作った物で遊んだり、作っているのを見たりしているのが楽しい。
一見、お兄ちゃんが私を溺愛しているように思われがちだけど、それはまったく逆なのです。
ただ、お兄ちゃんは普通ではないので、もどかしい事も困ることも多いのです。
ある朝、目覚めると…。
「あっ…しまった…」
私は女の子の日で、シーツに血をつけてしまった…
お兄ちゃんに気付かれなかったかと、心配した時にはすでに遅かった…
なんだか、外が騒がしい…起きて窓の外を見てみると…えっ!
医療バス?救急車…とにかく大きく重々しいバスが4台、救急車が2台止まっていた。
〈真央!何、起き上がってるんだ!横になっていろ!〉
「あのね、お兄ちゃん…」
〈大丈夫だ!何も心配するな!学校にもしばらく休むと連絡してある〉
えぇ…。
ピコーン・ピコーン…
〈やっと来たか、真央は安静にしていろよ!〉
「いや、あの…」
お兄ちゃんは玄関に走っていった。
えぇ…何で分からないの?知らないの?
プシューゴゴゴゴゴ…
〈早く、早く!こっちです〉
えっ?何?誰?
〔内科医の○○です〕〔外科医の○○です〕〔婦人科の○○です〕〔整形外科医の○○です〕
〔東洋医学医の○○です〕〔生物学者の○○です〕
えぇ~…。
〈挨拶なんかいいから、早く診てやってください!〉
お、お兄ちゃん…もぅ!あぁ…違う意味で誰か助けて…。
〔はい、もちろんです。診察しますので、清志さんはリビングでお待ちになってください〕
〈分かりました…どうか、どうか真央を頼みます…〉
えっと…どうしよう…。
〔真央さん、初めまして婦人科の○○です。あの、ただの月経ですよね?〕
「あっ、はい…」
何でこんな知らない人たちの前で公表しなきゃならないのよ…っていうか分かってて?
何でこんなに人が集まってるの…。
〔一応皆さん、もしもの時に備えて医療器材や看護師も連れ、それぞれ医療車で来ましたが、何事もなく良かったです〕
えぇ…全く良くないですって…。
「お騒がせして、すみません…」
〔いえいえ、皆さん誰も迷惑だとは思っていないと思います〕
〔そうですよ、お兄さんには研究費や技術面、機器なども提供、
開発してもらっていますから〕
〔こうして、日本を代表する名医が一同に集まる事もなかなか無い事ですし〕
〔そうですね、○○さん。この度はノーベル賞おめでとうございます〕
〔ありがとうございます〕
名医?ノーベル賞?…私の生理で集まったの?…居たたまれない…。
〔とにかく、私たちは共通して清志さんに1つだけ約束をしてるのです〕
「約束?」
〔はい。妹さん、真央さんに何かあったらすぐにかけつけるという約束です〕
あぁ…もっと違う場面で聞きたかったよ…。
「そうなんですね…」
〔はい。なので、真央さんにも1度は会っておきたかったので、気にせずに〕
いや、気にしますよ…。
「いえ、兄が常識無いので迷惑かけてると思います…」
〔まぁ、お兄さんは人智の及ばない天才ですから、常識なんて小さな事ですよ〕
だとしても…紙一重なんです!
と、
〈すみませーん!真央は!真央は!大丈夫でしょうかー!〉
叫ぶ、お兄ちゃん…。
「あの…先生たちから、兄がパニックにならないように説明してくださいますか…」
〔はい、もちろんです〕
「お願いします…」
そうして、先生たちはリビングに行った。
お兄ちゃんに理解してもらうのは大変だろうな…大丈夫だろうか…
とにかく私はその隙に寝室からそっと出て自分の部屋に行き、着替えて聞き耳を立てた。
〈えっ!真央が?子供を産める体に!〉
そっか…医学的に説明してるのか…。
〈大人の体になったという証だと?〉
そうですよ~いつまでも子供じゃありませんよ~お兄ちゃん…。
〈月に1回!血が!どうすれば!〉
そっとしておいて…
この後、お兄ちゃんと顔合わすの嫌だな…。
〈おっぱいが急に大きくなったのも、そのせいですか!〉
えぇ…何聞いてるのよ…急にじゃないし…せめて胸と言って!
あぁ、もう聞かないでいよう…でも、長いな…
そうして、1時間過ぎ、やっと静かになった。
プシューゴゴゴゴゴ…
先生方は帰っていったようだ。
お兄ちゃんの足音。
私は思わずベットにもぐり、寝たふりをした。
〈眠たくなるとか色々な症状があると言ってたな…お兄ちゃんに心配かけないように
無理してたんだな…〉
と、お兄ちゃんはつぶやいて、リビングに戻った。
心配かけないようにとは、違うんだけどな…まぁ、いいけど…
とにかく、この変な雰囲気は嫌だな…普通にしようと、私は何も無かったように振舞った。
「お兄ちゃん、お腹すいた~」
〈ま、真央…な、何が食べたい?〉
動揺しないで…。
「明美さんの作ったピザ~」
〈よし、分かった…〉
お兄ちゃんは明美さんに電話をしてくれた。
〈大丈夫なのか?〉
「うん」
〈これからは、辛い時は辛いと言うんだぞ…〉
いちいち、言うの?
「うん、分かったから、その話はいいよ…」
〈でもなぁ…あぁ…〉
お兄ちゃんは頭を抱えた。何?
「何よ…」
〈いつの間にか大人になって…はぁ~いつか真央もお嫁に行くんだなって…〉
お兄ちゃん…本当に保護者感覚なんだ…。
「行かないよ?覚えてないの?小さい頃、私、誰のお嫁さんになるって言ってた?」
〈お兄ちゃんか?〉
「うん、そういう事~」
〈そうか、そうか〉
「うんうん」
本当にまだ思ってるよ。
「ねぇ、お兄ちゃん。ピザ食べてから買い物、連れて行って」
〈買い物?ネットじゃダメなのか?〉
「うん、スーパーな自転車で一緒に」
〈分かった、行こう〉
おわり。
なのかは…紙一重。
紙一重お兄ちゃん 涼。 @neko1025
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