第3話『お兄ちゃんとの新生活』
次の朝、私は一緒に入りたがるお兄ちゃんを押さえ、夜中までお風呂で遊び遅くに目覚めた。
お兄ちゃんはリビングに居た。
「おはよう、お兄ちゃん」
〈おはよう、相変わらず真央はよく寝るな〉
「お兄ちゃんはちゃんと寝た?」
昨日、私が寝るまで頭を撫でてくれていた。
〈寝たよ、お兄ちゃんは4,5時間しか眠れないんだ、
それよりもう昼前だけど朝ごはんいるか?〉
「いらない、お腹すいたら昨日の残りのピザ食べるよ」
〈そんなもの捨てたぞ、昨日、話した執事さんと学校の先生が来るから着替えておいで〉
「はーい。ナナ!」
ヒメ・ナンノヨウダ…
「ついておいで」
ナンデダ・メイレイカ…
「うん(笑)」
口は悪いけど、ペットみたいで気に入っていた。私はナナを連れて着替えに部屋に行き
リビングに戻りソファーに座った。
〈じゃあ、執事さん呼ぶぞ〉
「はーい」
〈真央、冷蔵庫の1番右の少し離れたドアにスイッチがあるから押してきて〉
「あっ、そういえば何だろうって思ってたんだ…」
ドアの前に行くと、2つのスイッチが…1つには「兄」1つには「執」と書いてある。
「執のスイッチを押せばいいの?」
〈そうだ、6つの家は地下通路で繋がっている〉
そこまでするか普通…もう、お兄ちゃんの事は普通だと思わない方がいいな…。
私は「執」のスイッチを押してソファーに戻った。
〈すぐに来ると思うよ、真央はこのノートパソコンで家具を選びな、あと服とか靴とか
何でも買っていいから〉
「うん!」
値段は気にしなくていいんだよね…ガーリーなので揃えよう…。
そうして、選んでいると、冷蔵庫の並びの地下通路のドアがトントンとノックされ。
〔岡田様、参りました〕
と、声がした。
〈どうぞー〉
と、作務衣姿のおじさんとおばさんがドアを開けて入ってきた。
執事というより旅館の仲居さんといった感じだった。少しホッとした…。
〔失礼いたします〕
〈こちらに来てください、妹を紹介します〉
そして、私に向かって。
〔今日から、お世話させてもらいます。藤井達也と申します、こちらは妻の明美ともうします。どうぞ、よろしくお願いいたします〕
と、三つ指をついて挨拶をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします。妹の真央です」
ダレダ・オマエ…
〔!〕
「こらっ、ナナ!私の部屋に行って!」
ワカッタ…
「すみません、兄が作ったお掃除ロボットでして…」
〔そうですか流石、清志様〕
〈達也さん、明美さん、そう堅苦しく様なんてやめてください、こっちが気を使いますよ〉
「そうです、そうです普通に接してください」
〔ですが…これは長年の癖でして、それに清志様には命より重い恩があります〕
えぇ…お兄ちゃん…何をやらかしたの…?
「お兄ちゃん、ナナからおかしな音がするの、見てあげて」
〈ん?分かった〉
と、お兄ちゃんは私の部屋に行った。
「お2人は、お兄ちゃんと、どういう関係ですか?何か弱みがあるとか、
無茶とか言われてませんか?」
〔めっそうもございません、私たちは親が残した借金と旅館の経営に失敗しまして…
一緒に心中しようと山中に…そこで、清志様に合いまして、訳を話すと多額の借金や従業員の退職金まで払ってくれ、助けてくれたのです〕
どうして、お兄ちゃんが山中にいたのか気になるところだけど…。
「そういう事でしたか…でも、本当に気を使わないでください、私たちは親が居ないので
心強いですし、ラフにいきましょう」
〔真央様がそう言われるなら…〕
「さんでいいですから」
と、お兄ちゃんが戻ってきた。
〈真央、ナナは何ともなかったぞ〉
「あっそう、良かった」
〈達也さんたちは、とりあえずは戻ってください。今、ちょうど真央の学校の先生が
来たみたいだかから、また用事ができたら呼びます〉
〔はい、では失礼します〕
と、地下通路のドアで戻っていった。と、すぐにピコーン・ピコーン…とチャイムが鳴った。
〈はい、はーい〉
「忙しいなぁ…先生かぁ…」
プシューゴゴゴゴゴ…・プシューゴゴゴゴゴ…
と、スーツ姿の貫禄のあるおじさんが入ってきた。
〔どうも、真央さんですね〕
「はい」
〔理事長の向井です。この度は本校を選んでいただき、ありがとうございます〕
えっ…理事長?お兄ちゃん…またお金を積んだな…。
「あっ、いえ…」
〔お時間が無いという事なので、早速ですがクラスを決めたいと思うのですが、
よろしいでしょうか?〕
「えっと…クラスを私が決めるんですか?」
〔本校は一応、進学校でして成績順にAクラスからFクラスまであります。
清志さんの、妹さんですから聞くまでも無くAクラスでいいですね〕
ちょ、ちょっとー待って~!!
「あのっ…お兄ちゃん、ちょっと来て」
〈ん?どうした?〉
「どうしたじゃないよ…私、お兄ちゃんみたいに賢くないから、普通の中学2年生だから、進学校のAとか無理だよ…」
〈そうなのか?真ん中ぐらいにしとくか?〉
「もう、前もって言ってよね…Dぐらいにしといて、どれだけだか分からないけど
頑張るから…」
〈向井さん、Dクラスで!〉
〔Dですか?まぁ、色々とゆとりがあった方が良いということですね。分かりました、
そう準備しておきます。では、パンフレット置いて失礼しますね、今後ともよろしくお願いいたします〕
〈はーい、ご苦労様でしたー〉
プシューゴゴゴゴゴ…・プシューゴゴゴゴゴ…
ゆとりできるだろうか…とりあえず、置いていった学校のパンフレットを見てみた。
「わぁ、さすが私立だね、校舎から違うよ…制服はブレザーだ!可愛い~」
〈そういえば、もう用意できてるはずだ、後から持ってきてもらおう、今日が金曜日だから3日したら学校だな、家具は決めたか?〉
「うん、こんなのがいいんだけど?どう?」
私はお兄ちゃんにノートパソコンの画像を見せた。
〈いいよ、でも価格からして質がどうか分からないな…
このリビングを作ったデザイナーの会社に写真とメールをしよう〉
と、お兄ちゃんはパソコンを操作した。すると、すぐにお兄ちゃんのスマホが鳴った。
♪Oh~雨上がりの夜空に~…♪
あっ、お父さんの着メロだ…お兄ちゃん…。
〈誰だ!〉
何その電話の出方(笑)
〈届いた?そんな感じの家具を同じブランド物で統一して明後日までに
届けて配置して、よろしく~〉
わぁ…有無も言わせず…私のわがままになってなければいいけど…。
とにかく、こうして私たちの新生活が始まった。
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