第2話『2人のお家』
「なんか、重々しい扉だね…ノブも鍵穴もないよ?」
〈鍵はお兄ちゃんと真央の手だ、このパネルに右手を当てるだけ〉
と、お兄ちゃんは扉の横にあるパネルに手を当てた。
プシューゴゴゴゴゴ…。扉は意外にも上へと上がった…。
「基地みたいだね…」
〈厚み20センチ、重さ1トン以上ある、セキュリティは大事だからな、
でも、中は普通だぞ〉
どうか、普通であってください…。
「わぁ…凄い…」
中はすぐに広々としたリビング、天井無しの吹き抜けで…普通だった!
〈北欧スタイルだそうだ、とりあえず、デザイナーに任せたけど、真央どうだ?〉
「おしゃれで凄くいい…」
〈奥の左側がトイレ、その隣がお風呂で、右側が真央の部屋と寝室だ〉
「見ていい?」
〈いいに決まってるだろ、自分の家だぞ〉
なんか、色々と信じられない嬉しさだった。
私はまず、トイレをちらっと見て、お風呂場に行った。
「わぁ広い…けど…」
照明も無く、壁も天井も灰色でした…。
〈真央、この液晶パネルスイッチ押さないとダメなんだ〉
見ると、大きな液晶パネルがあり、「天井」「壁」とあり、その下にキーボード?
「どうしたらいいの?」
〈まず、天井を押して〉
私は液晶パネルの「天井」を押したが…何も起こらない…。
〈次に下のキーボードで星空と打ってみて〉
「うん、hosizora…わっ!」
と、天井が星空になった…。
〈言葉を入力すると、変えられる。大体は認識できる、壁も同じく変えられる。例えば…
「壁」yuugata・akafuji〉
と、お兄ちゃんが液晶パネルを打つと、一瞬にして壁が変わった。
「わっ、外になった…夕日に照らされた富士山だ…」
〈リアルだろ?凄いだろ?世界中の何処にでもなるし、朝昼夕夜の設定もできる〉
「凄いね…」
〈言葉に合った風景を選んで再現してくれる〉
「これだけでも、しばらく遊べそう…」
〈うんうん、お兄ちゃんは天才だから〉
自分で言っちゃうかな…それより何より…。
「お兄ちゃん、脱衣所は?」
〈ん?そんなものはない、誰も居ないのに要らないだろ、2人で入るだろ?
ジャグジー、バブル付きだぞ〉
えぇ…そりゃ、叔父さんの所に行くまでは一緒に入ってたけど…私、もう中学生だよ…。
「昔とは違うんだよ?お兄ちゃんは恥ずかしくないの?」
〈違う?…まぁ、お父さんみたいに毛は生えたけど、真央は恥ずかしいのか?〉
お兄ちゃんの馬鹿…。
「恥ずかしいよ!」
〈何でだ?真央も生えたのか?〉
「もうっ(照)とにかく一緒には入らないから!」
〈何でだよ、寂しいなぁ〉
お兄ちゃん…天才かもだけど常識が抜けてるよ…紙一重だよ。
「とにかく、そういう事だから!次、私の部屋、見に行くよ」
と、私の部屋を見に行った。その部屋は8畳ぐらいの洋室で何も無く、私のボストンバッグだけがポツンと置かれていた…。
「…」
〈勉強机とか家具とかはリビングにパソコンがあるから
ネットで好きなのを注文したらいい〉
「お兄ちゃん、ドアは?」
〈ドア?家の中に居る限り安全だ、心配するな〉
そういう事じゃないって!あぁ…まぁ、ずっと私を見てるほど暇じゃないだろうし…
カーテンでも付けるかな…。
「そうだね…」
〈あとは寝室だけど、寝るだけだからシンプルにしてる、でも、ベッドはお兄ちゃんが作ったウォーターベッドだ、硬さを調節できて温度は自動で一定に保つようにしてる〉
「一緒にねるの?」
〈当たり前だろ〉
昨日、久々に一緒に寝てドキドキしたんだよ?最初は落ち着かなかったんだよ?
でも、まぁすぐに心地良くなっからいいけど…。
とにかく、私たちはリビングに戻った。
「大きなテレビだね…」
〈70インチの特注品を改造している。見れないチャンネルは無い、ネット動画も最新の映画も見たい放題だ〉
何でもありか…凄いのかなやっぱり…。
「あの壁の3つの扉は?」
〈冷蔵庫だ、端から飲み物用、食料用、冷凍庫だ、しゃがまなくていいし、ドアだけだからドアも軽いし、いいだろ?〉
確かにいいかも…でも…。
「手洗いみたいのはあるけど、キッチンは?そういえば洗濯機も無い?」
〈無い、デリバリーか作ってもらう、洗ってもらう〉
「え?誰に?」
〈明日、前の空き家に執事さん2人、夫婦で来ることになってる、そこの電話で用がある時、用事を言えばいい〉
「えぇ…それはそれで、なんか気を使うな」
〈すぐに慣れるさ、慣れるまでお兄ちゃんに言えばいい、
夫婦で旅館をしていたんだ、いい人たちだよ〉
「まぁ、その辺はお兄ちゃんに任せるよ、それより私の学校は?」
〈ちゃんと手回ししているぞ、来週からだ、それも明日パンフレットと教科書を持って
先生が来る、近くの私立中学高校だ、制服は執事さんに頼んである〉
よくよく考えたら、お兄ちゃんは3つ上、ここまで出来る17歳は何処にも居ないだろうな…天才というのは間違いないのかな…。
「ねぇ、気になってたんだけど、アレ何?」
〈あぁ、お兄ちゃんが作ったナナホシテントウムシ型掃除ロボットだ…ナナ!〉
と、お兄ちゃんが言うとソレは近づいてきて。
トノ・ナニカヨウカ…
「わぁ、話した!…っていうか殿?」
ダレダ・オマエ…
「えっ!」
〈人口頭脳搭載してるから。ナナ、同じご主人で、姫だ〉
ヒメ…ワカッタ・ヨロシクナ…
「よろしくね…」
トノ・ナンノヨウダ…
〈壁が汚れてないか調べてくれ〉
イマカ…
〈うん〉
ワカッタ…
すると、ナナ?は壁に向かい、壁に登った。
〈床だけじゃなく壁も天井も窓も掃除、洗浄、殺菌までするんだ、
命令しない限り普段は夜中にやってくれる、凄いだろ?〉
「うん…でも、聞いててよかったぁ…夜中に出会ってたら腰抜けたよ」
あと、どうしてため口に設定したんだ…それよりも…。
「お兄ちゃん、天才かどうかはおいといて、お金ってどうしたの?」
〈ここだけの話だぞ。実はな、国際的テロ組織のコンピュータにハッキングして
根こそぎ資金を奪い取ってやったんだ〉
「えっ?」
お兄ちゃんの妄想?事実?
〈資金が無くなったから組織は消滅、お兄ちゃんは世界の平和を守ったんだぞ〉
事実ならそうかもだけど紙一重…と、タイミングよく
ピコーン・ピコーン…
え?ウルトラマン?
〈おっ、来たか、ピザ頼んでたんだ〉
「ピザ~いいね」
〈真央、好きだもんな〉
ずっと食べてなかったけど、覚えてくれてたんだ…お金をどうしたなんてまぁいいか。
ピコーン・ピコーン…
〈はい、はーい〉
プシューゴゴゴゴゴ…・プシューゴゴゴゴゴ…
チャイムと玄関の扉の音と振動…どうにかしてもらおう…。
こうして、無事に引っ越しが終わった。
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