第24話 文化祭 夢終幕
空気が冷え切った冬の朝。わしゃは来客で目を覚ました。
玄関の引き戸を開けるとわしゃより少し年下の女の子が怯えた顔で立っている。
身につけている衣服はとても綺麗だ。
公家衆の誰かの娘だろう。
とりあえず部屋に上がってもらうか……
「中に入りなさい」
「はい」
「わしゃに何用じゃ?」
「道長様より晴明様に仕えよとの命を受けました」
成程……
そりゃ綺麗なわけだ。
恐らく先日の件での感謝の印だな。
先日の件とは道長様の庭に呪われた物が埋まっている事に藤原邸を訪れた際に気付いたのだ。
そして外に出ようとする道長様を制止しその物を掘り出したというものだ。
犯人が分からない事以外は万事問題は無かった。
「全く……おぬし、名はなんと申す?」
要らぬ気を回してくれたな。道長め。
「梨花でございます」
「生憎、力の問題上帰せぬ。すまん」
こう言って頭を下げて戻したときキョトンとした表情をわしゃに向けてきた。
「そんなに驚く事か?」
「いえ……お聞きしていた印象と違ったもので」
「なんと聞いておった?」
「人を寄せ付けぬ気を持ち全てを見透かす男と」
「……」
わしゃは周りから見るとそう写っていたのか。
確かに道満と出会うまではそうだったかもしれない。
それからというもの道満と当番制にしていた料理や掃除等は梨花がこなすようになった。
やる事が減ると日常に充実感が伴って無くなっていく感じがする。
働けと言われればそれまでだが元々一人でこなしていた仕事を道満と分担してやっている為かなり暇なのだ。
それから間もなく梨花の表情もかなり柔らかくなり何よりよく笑うようになっていた。
そんな頃、大陸へ渡らなければ行けない日が来た。
大陸での仕事が増えてきて手が回らなくなってきたと師匠が文をよこす。
それを放っておくことなど出来ずわしゃは早速向かった。
大陸での生活は修行をしているかのような日々だ。
祓ってもウジのように湧いてくる壊霊に体力と精神が蝕まれつつある。
そんな時道満から日本で問題が起きたとの一報が入った。
急ぎ日本へ戻ると京の都は異様な雰囲気を放っていた。
草木は枯れ街には華やかさの欠片のない沈んだ人々が歩き回っている。
その中に二人華やかさを放つ者がいた。
「遅かったですね師匠」
「そうですね」
わしゃは察した。
この都のあり様の原因を……
本当は裏があることを気付いていた。
しかしそうではないでくれと願ってしまったのだ。
あの藤原邸の呪いの物。
証拠になるものが無さすぎた。
これができるものは陰陽師をよく知る者しかいない。
そしてわしゃより格上の陰陽師は一人しかいない。
そうなるとその後にわしゃの前に姿を現した梨花は道満側の人間。
「願わくば世が平たく人間が和みあっている時代にまた会いましょう」
その後の記憶は無い。
「晴明……晴明!!」
「うるさいのう〜」
何か辛い夢を見ていた気がする。
何だったのかのう……
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