第25話文化祭
特に何事も無く時間は過ぎていった。
晴明達も何も収穫がない。
俺の方も手掛かりすら掴めなかった。
怪しんでいた菫の動きもその後は全くである。
神経だけが擦り減って行く。
そして文化祭前日を迎えた。
教室は授業で使う為、前日からの準備になる。
まずは教室のロッカーを移動させていく。
「ちょっと!あんたらも手伝ってよ!」
疲労困憊で誰に向けて発された言葉なのか分からなかったが恐らく携帯をずっと触っている奴に言ったのだろう。
やっと移動が終わったと思うと次は机の移動だ。
机は二段に背中合わせで積み壁を作る。らしい。
「これ本当にやるの?」
同感。びっくりしてぶつかられたら怪我につながる。ロープでつなぐならまだいいけれど。
机を積み上げて誰かの意見かわからないがロープで崩れないように結んでいく。
周りの話を聞いているとこの積んだ机の下に脅かす役は隠れるらしい。
「ハァ……ハァ……」
机を積み上げ終わった段階で身体は限界を迎えた。
そんなに動いてないはずだが動きの質の問題だろうか。
明日の文化祭、腕終了のお知らせが警報音と共に身体に鳴り渡っている感覚だ。
辛いところである。
「隆、大丈夫?」
そんな声が耳に届いた。
振り向くとそこには菫が立っている。
「筋肉痛確定だけど大丈夫」
「なら大丈夫だ!」
どこが"なら"なのだろうか。
「てか手伝えよ〜」
「見ての通りやってるよ!」
そう言うとダンボールに黒の着色スプレーを噴射する。
さっきからのシンナーのような臭いはこれのせいだったのか。
疲れていた事もあってスプレーを使っている事に気付かなかった。
「外でやれよ〜臭い籠もるだろう!それに気分が悪くなる」
それを理由に帰れるのでは?なんて事が頭を少しよぎった。
「だって外はもう暗くなり始めてるし」
「うわ!本当だ」
指差す方向に目を向けると空が焼けた鉄のような色を帯びている。
嫌な時間だ。
常にどこからか見られているような気分になる。
晴明が居てくれればかなり心が楽になるのだけど。
「終わった〜」
机の位置調整やロッカーの移動。教室の窓から光が入らないように黒に塗ったダンボールで塞ぐ。
通路の壁にする机にも黒塗りのダンボールを被せとことん暗くなるようになっている。
時計を見てみると時間は20時を指していた。
「疲れたね〜」
菫が横に並び溜息をつく。
「本当にな〜これで客はいらなかったら結構落ち込みそうだな」
「へぇ〜隆はそう言うのないと思ってた」
「ソンナコトナイヨ」
「カタコトになってるよ!でも明日はお客さんたくさん来てくれるといいな〜」
ニコリと笑顔を浮かべる菫を見てそうなるといいと心から思った。
いよいよ明日こら文化祭だ。
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