第18話文化祭8
「おかえり!」
家に帰ると俺を出迎えたのは鈴子ではなく雪達だった。
「なんで俺の家知ってたんだ?」
「あ~晴明に連れてきてもらったんだ!」
また勝手に。人を呼ぶには部屋と俺の心の準備が足りない。
汚いとか思われてたらどうしよう……
あれ?そういえば部屋がかなり綺麗になっているような。
晴明がしてくれたのか。
全くありがたいな。
「お~隆。部屋掃除してもらっておいたぞ~」
「え……」
「どうかしたのか?」
「どうかしたのか?じゃねえわ!なに客様に掃除させてるんだよ!」
「なんじゃ。そんな事か」
溜息を少しこぼすように晴明が息をつく。
「な!」
「だってそうじゃろう!毎日綺麗にしておかない隆が悪いのではないか?」
「た、確かに……」
正論過ぎて言い返せない。
俺が片付けていればこんな事にはならなかった。
「じゃろう!すなわちわしゃを責めるのは間違いじゃよ!」
「晴明もしたのか?」
「いえ!晴明は寝転んで煎餅食べてたよ!」
「せーいめーいー」
「やめ!やめるんじゃ!」
晴明に猫じゃらしで攻撃した。
それにつられて晴明がぴょんぴょこと跳ね回る。
身体が勝手に動き回る苦痛を与えてやった。
「もうやめてあげて!」
雪の笑いの混じった声が俺の動きを制止させた。
「そうだよ!俺達が頼みごとをしようと思って連れてきてもらったんだから。これぐらい!」
「頼み事?」
「一週間前程から御香宮の周りで変な壊霊がうろついていて」
「変な?」
「そう!隆と同じ制服を着た壊霊を見かけて」
「俺と同じ?壊霊は日中は出てこれないんじゃ」
それに俺と同じ制服。どういうことだ。
「いや。見たのは夕方」
夕方。狙いが分からないな。
「おぬし。また夕方にうろついておるのか!」
「すいません」
「それで?」
晴明に切られた話を元に戻さなければ。
「恰好だけなら理解できるけれど。人間と話していたんだ!」
人間と話していた?
この周辺にまだ俺と同じ見える人間がいたのか。
考えが終わりに辿り着かない。
「それでどんな格好をしてたか分かるか?」
「霊と同じ制服を着ていたな。性別とかは暗くて分からなかった」
「そっか!そりゃそうだよな。それで何を頼もうと?」
「そりゃ除霊だけど。正体が分からないならどうしようもないだろうけど」
その通りだ。分からなければ何もできない。
「それにしても。わしゃが気すら感じない」
「気すら感じないのか」
かなり実力のある壊霊だ。そしてそれに関わっている人間。
一体何をする気なのだろう。
文化祭もかなり近づいてきている。
何事もなく終わればいいけれど……
「とりあえず正体を探るしかないか~」
「そうじゃのう。じゃが隆。昼間でも気を付けるのじゃぞ!」
確かに。壊霊は昼間は動けないが人間は動ける。
本当に人間で同じ学校なら噂で俺に注意を向けていてもおかしくない。
「分かってるよ」
「もしよければ昼間の学校に私達も同行するけど」
空が俺の事を考えて言ってくれたのだろう。
でも俺の周りに霊がうろついている事を見られるのはリスクが大きすぎる。
「いや。巻き込みかねないから遠慮するよ!でも本格的に正体が分かってきたら頼むかも知れないからその時は頼むよ!」
「分かった!いつでも頼んでくれ!」
「俺は文化祭の準備で暫く探れない。夕方は晴明に任せる。空達と一緒に同行してくれ!」
「分かった」
「仕方がないのう~」
「晴明!よろしくお願いします」
雪はやっぱり礼儀正しいな。
「それじゃ!そういう事で頼んだ!」
晴明の言っていた組織で無いことを祈るばかりだ。
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