第19話文化祭9

さて色々決めたのはいいがどうやって探そうか。

学校の生徒なんて山ほどいるし制服を着ていただけでうちの高校の生徒かもはっきりとは分からない。

「霊見える奴知ってる?」とか「一人で喋ってる人知りませんか?」

そんな事を聞いても俺自身が変な奴いると思われてしまうだけだか……

もしも同じ学年の奴なら俺の事を警戒してるかもしれないし。

自意識過剰な気がする。

自分で考えておいて恥ずかしい。


「どうかしたの?」


「おわ!!」

教室でぼんやりと座って考え事をしていたせいで気付かなかった。

意識を声の方に向けると菫の瞳がこちらを見ている。

それに驚き俺は椅子から転がり落ちた。


「だ、大丈夫?」


「なんとか……」

手を差し伸べてくれた菫の手を取り立ち上がる。

そういや知らない間に俺は菫の事をかなり信用するようになっていたな。


「あいつら最近仲良いよな!」

背後から聞こえてくる声。

ここでようやくクラスメイトの注目を集めていることに気が付いた。


「俺に構ってたらこうなるぞ」

人に不気味がられると些細なことで注目を集めてしまう。

嫌だな。


「いいの!私、変だから!」

周りからどう思われているのか知っていたのか。

元気よく押し出された言葉とは裏腹に少し表情が濁ったように見えた。

その台詞に嫌な妄想が頭に流れ込んでくる。

それが現実なら俺は恐らく二度と他人を信じられなくなるだろう。

確かめる術を今は持たない。不安だけが大きく膨らんでいくのを感じる。


「次の教室に移動しよ!」

俺の沈黙のせいで妙な空気を生み出してしまった。

気を遣わせるのは申し訳ないな。


「そうだったな。行こうか!」

この自分を壊す妄想から目を逸らすように教室に向かった。



「もうチャイムなるから席つけよ~」

科学の担当米田 天満よねだ てんまが生徒達に着席を求める。

歳は確か50半ばだ。白髪交じりの髪。皺だらけの白衣。マッドサイエンティストのようだ。

授業も少し変わっている。

宿題に人体の構成要素をできる限り調べてこいとか鶏を一羽買ってきて突然焼肉するぞと言って捌き始める。

恐らく意味を持ってしている事だろうがそれを理解できない。

この鶏の件で親からクレームが入って暫く謹慎していた。

本当にマッドサイエンティストかもしれない。

理解ができないそんな先生だが学校の授業では学ばない何かを学べた気はする。


「まさか米田先生じゃないよな……ありえそう」

米田先生が独り言言ってたまたまそこに壊霊が居たとか?

周りを疑い過ぎて物事に集中できない……


「おいそこ!意識覚醒させろ!アルコールランプで燃やすぞ~」


「しまった!すいません!」

考えるあまり寝てしまった。それにしても生徒にアルコールランプで燃やすぞはやばいだろう!不良でもそんなことしないぞ。

この人教師向いてないだろう。

こうして人を疑っていく日々が幕を開けた。


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