第13話 文化祭3
「なんじゃ、疲れておるな~」
「学校は、疲れるものだからな」
「学べる事に感謝するんじゃぞ~」
「そういう疲れじゃないんだけどな」
「分かっておるよ! 人と関わることは大変じゃからのう~」
「そうなんだよな~」
「隆! 御飯よ~」
「?!」
晴明がすごい勢いで駆け出した。
腹が余程減っていたのだろう。
鈴子の呼び声への反応速度が……
俺が居ないときはおやつを食べれないから仕方がないと言えば仕方がない。
呼ばれたのは、俺なんだけどな。
「まぁ、いいか~ 今、降りるよ!」
下の部屋に降りると、焼き鮭が湯気を立てている。
晴明がその横で鮭を頬張っていた。
こう見ているとただの猫なんだよな。
「ん? にゃんじゃ?」
こんなところで話しかけないでほしい。
鈴子には、鳴いているようにしか聞こえないのだ。
それなのに俺が何か言ったら……
考えるだけで言い訳が面倒だ。
なるべく、普通にしているように見せたい。
「ゆっくり、お食べ! 訳 食べるか話すかどっちかにしろ!」
「……」
どうやら、伝わったようだ。
平安の女性ってもっと、華やかでおしとやかなイメージがあったが。
そんな雰囲気……
無いな。
男として生きていた時間を考えれば……
それにしてもか。
この日の夜は、月が美しく太陽の光を反射していた。
この光が無ければ月は輝けない。
そして壊霊も似たようなものかも。
組織で動く霊。
まだ、遭遇したことがないけれどどんな奴らなのだろう。
名前から考えるに……
「いやいや、そんなわけないか~」
頭浮かんだ、暴力団にいるような髭のサングラス。
その妄想をかき消すように手を振り回す。
会わないに越したことはないけれど。
そしてこの日、虫の鳴き声をBGMにして幕を下ろした。
「隆~ 起きるのじゃ!」
「ん…… もう少し……」
「ぎゃーーーー」
「なんだよ~ うるさい な?」
手にもこもことした感覚がある。
気持ちの良い感覚だ。
「話せ!!」 わしゃの尻尾!」
「いってぇ~」
晴明の後ろ蹴りが顔面に入った。
「わ わしゃのチャーミングな尻尾が……」
晴明の尻尾がM字の様に折れ曲がっている。
流石にこれは、酷いな……
「あの、晴明さん…… 申し訳ありません!」
「誰が許すか~~~」
晴明の怒号が、頭に響き渡る。
「今日、晴明の好きな物買ってきてやるから機嫌直せよ」
「そんな安い手にはかからんぞ! ふんだ!」
なにそれ、可愛い。
じゃない! 今回は、流石に駄目だったか。
「って、やばい! もうこんな時間! 本当に御免!!」
時計に目をやると、出発の時間だったのだ。
これは、帰ってからしっかりと謝らなければいけない。
「こら~ 待つのじゃ!!」
ふんだ!とか言ったのはどこのどいつだよ!
「母さん! 行ってくる!」
「あら! いってらっしゃい!」
今日も文化祭に向けて動いていくのだろう。
昨日決め損ねたことが、すんなりと決まるといいけれど。
朝から幸先が悪いのが、嫌な感じだが。
塚本先生が最悪何とかするだろう。
いや、するのか?
「あの先生、意外と面倒くさがりだからな~」
前に職員室に行った時、塚本先生のデスク周りだけやたらと散らかっていた。
「先生、もう少し綺麗にした方がいいですよ~」
「仕事が多いとどうしてもな~」
「それにしてもですよ!」
「それぞれの場所は覚えているしいいだろう?」
「あんまり整頓できないと結婚できないですよ! 痛い!」
正拳突きが腹に飛んできた。
「生徒を殴る先生なんて、今時いませんよ!」
塚本先生と話す時の禁句を忘れていた俺が悪いが。
「暴力に対する正当防衛だよ」
「どう見ても、一方的な暴力じゃないですか~」
「ん? なんか言ったか?」
「いえ、なんでも……」
ここで発言を間違ったらどうなるか。
ハイキックを腹に……
恐ろしい。
「まぁ、私は面倒なことが嫌いなのだよ!」
「そうですか」
「だが、大切な物はしっかり整理している。心配するな!」
「この状況が無かったら、格好良かったんですけどね」
「そうだな! ほら、もう教室に戻れ!」
「はい! 失礼しました!」
と、いう事があった。
さてと、こんな事考えている場合じゃない!
急がないと間に合わないかもしれない。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと共になんとか教室に滑り込んだ。
我ながら間に合うと思わなかった。
今日も、退屈な授業が始まる。
なんか学校の勉強って、知恵を押し付けられる感じだ。
勉強が嫌なわけではないが。
四限目が終わり、昼休みに入った。
「疲れたな~」
思わず溜息が漏れてしまう。
腰が痛い。
「ねえ、一緒に昼御飯食べよ?」
後ろから、菫がひょっこりと顔を出してきた。
「うん」
「ちょっと、あの二人付き合ってるのかな?」
「ええ! 菫と勝村が?」
「釣り合ってないよな~」
背後から口々に声が聞こえてくる。
こういうことを言われるのは辛い。
相手に嫌な気をさせてしまう。
それに対して罪悪感を持ってしまうのだ。
俺が悪い訳ではないのに。
「本当、こういう事好きよね~」
「菫は嫌じゃないのか?」
「私は、こういうことよく言われてきたから」
「それ自分がモテるって言ってるのと同義だぞ~」
「そういうわけではないよ!」
「まぁ、いいや! 食べるか~」
「そうだね~ 隆君はこういうの嫌じゃないの?」
「相手が可哀そうだからな~」
「本当 いい人だね!」
「そんなことないよ! 迷惑をかけてる分だけ」
本当にこのメンバーで大丈夫なのか。
そんな引っ掛かりを胸にして午後にある文化祭の話し合いを迎えた。
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