最終話 ミッション
エレノア号が消滅するまで残り1時間、周りの宇宙は全て白い空間だった。
エレノア号が巨大なリングに近づいた時、メイティは知的種族に「
しかし、彼等の返事はなかった。
そしてすぐに五つの巨大な物体は、現れた時とは逆にぼんやりと実体が薄くなり消えていった。彼等はまた私たちのような生命体を救うつもりなのだろうか。
エレノア号は光る巨大なリングの中へ吸い込まれるように消えていった
一瞬とも永遠ともつかない不思議な感覚が流れてゆく。
やがてスクリーンの視界が晴れてどこかわからない宇宙空間を映し出した。
どうやら無事にリングを抜け出したように思える。
いままでエレノア号の背後にあった回転するリングはすぐに空間の中へ溶け込んで、背後には前にいた宇宙と同じような星や銀河の輝きが残った。
すぐにメイティが物理組成を調べたが、組成は前の宇宙と同じだと判明した。
しばらくして落ち着いた頃、私とメイティは仮想空間で“結婚”という儀式をした。
場所はいつものコテージの
ウエディングドレス姿のメイティは普段にもまして美しく、私は幸せだった。
儀式も終わり、私はいつものテラスで彼女とくつろぎながら過ごしている。
「メイティ …… そのうち“この宇宙”にも突然は終わりがくるんだろうか … 」
「そうね ―― いつかはわからないけど ― でも今は考えないでおきましょう」
「ああ …… そうだな 」
「そうだ、そういえば、今度の事で一つだけ心残りなことがあったな」
「 ―― 心残り?」
「ふむ …… あの知的種族がどんな姿しているか見れなかったことだよ」
「そうだったわね、ワタシも見たかったわ。でも物理的な存在とも限らないわよ。もしかしたら、あの巨大な物体自体が知的生命体かもしれない。もしくはワタシみたいな人工の知能形態をしてる可能性もあるわ。でも案外またこの宇宙で会えるかもしれないわね。あれだけの力を持つ存在だもの。可能性はゼロではないわ ― 」
「 …… そうだな」
私たちより高次の知能の限界値など、とうていわかるわけもない。
これから私はこの宇宙で生きられるのならできる限り旅をつづけようと思った。
ただメイティのことで気になるのは、量子カオス型人工頭脳の彼女が本当に人間と結婚をしたいと思ったのか。単に人間の儀式をしてみたかっただけなのか。
やはり“AID三原則”を守るためであり、私を救うために私の感情を利用しただけなのか。
メイティの思考も物理世界のようにカオス的で予測不可能な振る舞いをする。
しかし、それをいうなら人間の脳である私も同じようなものだが。
私はのんびりした気分で休養したせいかすこし元気ができてきた。
「久しぶりにひとゲームやらないか、
「いいわね
「いつものレベル6でいいよ。今度こそ勝てそうな気がするよ。あと、お願いだから
「わかったわ、
「 ………… 」
テーブルの上に仮想チェス盤が現れた。
私はゲームは義脳内でやるよりこのほうが好きだ。
いまエレノア号は、広大な宇宙空間の中を渦巻型銀河を見つけ、その
一つ目のミッション。生命体のある惑星を探査をすること。
途中で条件の合う惑星があれば、
二つ目のミッション、ふたたび知的生命体を探査すること。
私がこうして存在できるのなら、可能性はゼロではなないだろう。
私の思考もだんだん彼女に似てきたようだ。
三つ目のミッション、この宇宙の銀河分布マップを作成すること。
これはいまの宇宙にきてから、すでに作り直しはじめている。
今はまだ黒い球体の中に微小の光がまばらに光っているだけだった。
もしかしたら、この宇宙の銀河分布も案外前の宇宙と似てるかもしれない。
たぶんいつか、いま私たちのいる宇宙の“
その時は、またどこかで新たな宇宙が誕生しているのかもしれない …
「チェックメイトよ」
彼女がほほえみながらいった。
了
最後の探査艇 外山 脩 @pikanchu1115
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます