第2話

「お前、またそうさぼっただろ」

 学校から帰ったばかりのわたしに、兄はいきなりそう言った。

 あーあ、またおごとが始まるよ。

「ここはしんせいな場所だから毎日きれいにしなきゃいけないって、中学生にもなってまだわかんないのか? お父さんにしかられるのはお前だけじゃないってのに……」

「掃除なんて行事の前日にやればいいでしょ。お正月以外でうちの神社にお参りする人とかいるわけないもん」

「そういう問題じゃないだろって」

「そんなこと言って、兄ちゃんだっていやいやじゃん」

「叱られるよりはましなんだよ」

 兄はどこかあきらめた感じで竹箒を動かす手を止める。

「特に俺なんか長男だしな。落ちる雷も二割増し――っておいこら、ミキ」

「ウチ勉強と部活でつかれてるから明日やるー」

 そもそも家の神社のけいだいはむだに広い。

 か弱い女の子に竹箒一本で掃除させるなんてどうかしている。

 そういうわけで、わたしは兄を通り過ぎ、足早に家の玄関へと向かったのだ。

「今日のところはお任せしまーす」

「ったく、こんな調子じゃいつかになるぞー」

「人手がないのは兄ちゃんのほうでしょー?」

「お前ってやつは……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る