三日後の勇者様もやっぱり超絶イケメンでした
──三日後。
そう、楽しみにしていた三日後です! 今日はまた勇者様が来てくれる! わたしを倒しにきてくれる!
いやぁ……、あのイケメンとまた会えると思うと、なんかすごく楽しみで楽しみで! ウキウキしているわたしに、ガイコツたちが花冠を作ってきてくれたし。うんうん、うちの子たち、やっぱり優しい!
ミイラたちが新しいドレスを作ってくれたし、幽霊みたいな子たちも髪を綺麗に結ってくれたし! 男の子のためにオシャレするなんて、生まれて初めて! 魔王になってからはもちろん、前の人生も含めてね。
いつ頃来てくれるのかなぁ……なんて思いながら、おやつのパウンドケーキもどきを焼いていたら、バタン! と大きな音を立ててドアが開いた。勇者様たちが来たのかな!?
「いらっしゃいませー!」
テンション高く振り向くと、やっぱり勇者様が立っていた。今日も相変わらず顔がいい! 顔がいいけどドン引きしている表情も、相変わらず。
他の仲間たちはいないみたい。ドアの外にいるわけでもなさそうだし……、どうしたのかな?
「……なぁ、もっと魔王らしくなってくれって、俺は言ったよな?」
ズカズカと入ってきた金髪勇者様は、そのままわたしの傍まで勢いよく寄って来る。
「ふぉぉぉぉ、ち、近い! いい顔が近い!」
「何をわけ分かんねぇこと言ってんだよ! そして、何なんだよその格好! 着飾りやがって!」
「す、少しでも可愛く見せたいっていう、乙女心ですすすす!」
「はぁ!? ……確かに可愛いけどさ」
「か、かわっ、ぐふぇごぅでゅぼっせんぢゅばばばばば!」
「だから顔に似合わねぇ奇声をどうにかしろ!」
はー……と大きな溜息をついた勇者様は、疲れたようにフラフラと何歩か歩いた。と思ったら、食卓の椅子に座っている。
なんだろ? 一緒におやつを食べてくれるのかな?
「パウンドケーキっぽいおやつ、一緒に食べます?」
「ぱ、ぱう……? なんのケーキだって?」
ケーキは通じるのにパウンドケーキは通じないのかぁ……。そんなことを考えながら、焼きたてのパウンドケーキもどきを載せたお皿を食卓に置く。
「木の実をたくさん入れてみたので、美味しいと思いますよ。よかったら、どうぞ?」
「……分かった。食うよ」
「えっ……、ほんとに?」
まさか、本当に食べてくれるとは思わなかった。今までとは違う意味でドキドキしながら、勇者様にフォークを渡す。
「だ、大丈夫ですか? わたしが毒とか仕込んじゃってたら、大変なことになるかもしれませんよ?」
「どうせ仕込んでないだろ? はぁ……、いただきます。……あ、美味いじゃん」
勇者様は普通に食べ始めて、それを見たガイコツの一人がお茶を淹れ始めた。さすが、うちの子。気が利く!
わたしも勇者様の正面に座って、気になっていたことを訊いてみる。
「あの……、他のお仲間は?」
「テントを張ってる拠点に置いてきた。どうせ、お前は相変わらずなんだろうと思ったからな」
「はぁ……、まぁ、勇者様一人でもわたしを倒すのは出来ると思いますよ! 大丈夫です! ドーンと来い、です!」
「……お前は何を目的にしてる魔王なんだ?」
おやつをモグモグする合間に、勇者様はウンザリした顔で質問してきた。そんな顔をしていても美形は美形のままだから、すごい。
「魔王が出現したって言われていた割にどっかを襲ってるっていう気配も無いし、モンスターも魔王城の周りにしかいないし、何のためにお前は魔王なんかやってんの?」
「うーん……、強いて言えば、勇者様に倒してもらうのが目的……? 可愛い子に頼まれちゃったし、ボランティア的な感じで……」
「はぁ? ぼ、ぼら……?」
「あ、ボランティアも通じないのか……、えーっと……」
とりあえず、わたしは正直に話すことにした。
信じてもらえるか分からないし、作り話だと思われるならそれでもいいかな、って。どうせ、わたしは倒されちゃう魔王だし。
わたしは元々この世界の人間ではないこと、一度死んじゃってること、可愛い天使に頼まれて魔王に転生しちゃったこと、倒されたあとは幸せな人生に転生できるらしいこと。
わたしの話を聞いた勇者様は、ぽかーんとした後、
「お前……っ、バッカじゃねーの!?」
そう叫んだのでした。
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