第7話 ジャパロボ7

「わ、わ、私が寝ている間に何があったの!?」

 さとみが目を覚ました頃、関東ブロック代表チームは半壊状態だった。

「分からない!? 本当に寝ていて分からない!?」

 イリスも前回優勝者の優子が病院送りにされ昏睡状態になっていることが理解できない。

「あなたたちが寝ている間に大変なことがあったんですよ。」

 AIロボットの令和ちゃんが寝坊助姉妹に第1試合の詳細を説明する。

「テロリスト!? 何それ!? 強いの!? 戦いたい!?」

 さとみは自分の欲望に素直である。

「情けない。テロリスト如きに前回の優勝者がボコボコにやられてどうするのよ?」

 イリスは冷酷であった。

「私以外に負けるなんて許さない。必ず目を覚まし、戻ってこい。」

 そして情に深かった。

「令和ちゃん、優子の看病をよろしくね。」

「はい。お任せください。」

「バイバイ~! ウホホイ~!」

「さとみちゃん、病院ではお静かに。」

 ここは自衛隊病院であった。


「すずちゃん。」

「さとみちゃん、イリスさん。」

 エース優子が負傷するという緊急事態に見舞われたことにより、すずは全国ジャパロボ大会の他の試合を真剣に観戦していた。 

「優子さんは大丈夫でしたか?」

「うん、生きてたよ。」

 身も蓋もない言い方である。

「あいつはアンドロイドになってでも帰って来るから心配するな。」

 妹が妹なら姉も姉であった。

「ですよね。」

 その友達も友達である。

「ワッハッハー!」

 類は友を呼ぶ。

「で、他の試合はどう? 何かおかしいなことはある?」

「特にありませんね。まず第2試合は中部・北陸ブロックと中国ブロックの戦いでした。10対5の戦いなので、多勢に無勢で中部・北陸ブロック代表が楽勝でした。」

 どこか設定がハンデ戦でおかしい全国ジャパロボ大会であった。

「次に第3試合が東北ブロックと九州ブロックの戦いでした。6対8の戦いで混戦でしたが、やはり数に勝る九州ブロックが勝ちました。」

 数的有利は直接勝利につながると思われた。

「第1回戦第4試合は北海道ブロック代表の勝利です! なんとたった1人で関西ブロック代表の6機を倒してしまいました!」

「え? 見てないよ?」

「いったい何があったんだ!?」

「起きていたのに分からない!? 起きていたのに!?」

 さとみたちは話に夢中で試合を見ていなかった。

「一人だからといって弱いとは限らないのだよ。ジャパロボの数が戦力の決定的な差ではないことを教えてやる! ワッハッハー!」

 不敵に笑う北海道代表であった。

 つづく。


「次の私たちの戦いの相手は中部・北陸ブロック代表チームです。」

 準決勝を前にさとみたち関東ブロック代表チームはミーティングを行っている。

「相手も大破したジャパロボは補充や修理が完了していないので5機。こちらとおなじですね。」

 関東ブロックは寝ていたさとみ、イリスのジャパロボは無傷。すず、麻理子も問題なし。

「いい? よく聞いて。私たちは強い。」

「な!?」

 年長者として仕切る麻理子の意外な一言に衝撃を受ける一同。

「私って強かったんだ!?」

「どんな所でも寝れるから強いね。」

「私が最強です。」

「あはははは・・・・・・。」

 さとみたちの心に麻理子の言葉は響く。

「どんな相手と戦うことになっても、私たちは勝つ。そしてチーム戦を優勝して、個人戦で戦って誰が一番強いのか決めましょう。いいわね。」

「おお! 私たちは強い!」

 チームとしての活動は連帯感と協調性、仲間意識をさとみたちに育てた。

「私、後方で隠れておきますね。アハッ!」

(冗談じゃない!? こんな人たちと一緒に戦ったら殺される!? 命が幾つあっても足らない!? 全国ジャパロボ大会って地方をPRするイベントじゃなかったのかよ!?)

 生き残った千葉県代表ディズニー・ジャパロボは笑顔が引きつっていた。


「それでは準決勝第1試合! 関東ブロック代表対中部・北陸ブロックの戦いを始めます!」

 麻衣の開戦のアナウンスで準決勝第1試合が始まった。今回は珍しく5対5の平等な戦いである。

「よし! 戦うぞ!」

「開戦時に起きているさとみちゃんを見るのは久しぶりだね。」

「矢でも鉄砲でも持って来い! アハッ!」

 さとみとすずは戦う気満々だった。

「ここは私に任せてもらってもいいかしら?」

 イリスがしゃしゃり出てくる。

「いいわよ。イリスに任せるわ。」

「ありがとう。麻理子さん。」

 イリスは単騎で中部・北陸ブロックに特攻をかける。

「ズルい!? お姉ちゃんばっかり!?」

「イリスはライバルの優子があんなことになってしまったから仇を討ちたいのよ。」

 麻理子はイリスの悲痛な心情を思いやった。

「正確にはイリスさんは、撃墜数が0で、入院中の優子さん3機撃墜数に負けています。よってイリスさんは絶対に優子さんに負けたくないのでした。」

 例えるとワールドカップの得点王のようなもの。

「水の精霊ウンディーネ・アシッドレイン!」

「ギャアアアアアア!? ジャパロボが溶ける!?」

 一瞬で5機のジャパロボを戦闘不能に導く。

「準決勝第1試合は関東ブロック代表チームの勝利です!」

 勝ち名乗りを受ける関東チーム。

「やったー! 次は決勝戦だ! アハッ!」

 さとみは純粋に喜ぶのであった。

 つづく。


「う・・・・・・うう・・・・・・私は悪夢でも見ていたのか?」

 ベッドの上で優子は目を覚ました。

「気が付いたんですね。優子ちゃん。」

 そこに看病している令和ちゃんが戻ってきた。

「優子ちゃん? やめてくれ。私は荒んだ人生を送っているのでちゃん付けで呼ばれたことなんてないんだ。」

「まあまあ、そんなに照れなくても。」

「照れてない! いたたたた!? 傷口が開く!?」

「無理しないで下さい。まだ寝ていないといけない体なんですから。」

 大きい声を出して天罰が優子にくだる。

「それより大会は!? 全国ジャパロボ大会の結果はどうなった!?」

「さとみちゃんたちは順調に勝ち上がり、次は決勝戦ですよ。」

「そうか、良かった。もし私が居なくて負けたら祐奈教官に会わせる顔がない。」

「祐奈教官? さとみちゃんやイリスちゃんのお母さんを知っているんですか?」

「あ、しまった!?」

 悟られてしまう優子。

「分かりましたよ。優子さんは昔の祐奈さんと同じ女子高生自衛官ですね。」

「バレたか!?」

「隠し事は通用しませんよ。なんてったって、私はAIロボットですからね。エッヘン。」

 穏やかな感じでも令和ちゃんはAIロボットなので頭脳は賢い。

「バレたからには生かしてはおけない。私が自衛隊所属のパイロットというのは極秘事項。知られたからには解体させてもらおうか!」

「ええー!? 解体!? お代官様!? それだけはご勘弁を!?」

「ええー! 問答無用だ! 着物を剥いでやる!」

 どこで知識を得たのか時代劇が始まっている。

「私のご先祖様は祐奈さんのジャパロボのAIロボットだったんです!」

「なに!? 祐奈教官の!?」

「はい。ですから私は事前に女子高生自衛官の存在は知っています! だから秘密を知られた訳でもないんですよ。」

「なら、いいのかな?」

 優子はためらう。

「なんなら祐奈さんに聞いてみてください。そのご縁で私はさとみちゃんのジャパロボのAIロボットをやっているんですから。」

「分かった。祐奈教官に処分を聞いてみよう。」

 優子は電話する。

「もしもし祐奈教官ですか? 令和ちゃんって知り合いですか?」

「・・・・・・zzz。」

 しかし祐奈から返事はなかった。

「ということで、解体決定だな。ニヤッ。」

「ええー!? そんな!?」

「私のジャパロボのAIロボットになれ。」

「え?」

「それがおまえを自衛隊の鉄の掟から救うことができる唯一の方法だ。」

 優子は優子で令和ちゃんを救う方法を模索した結果であった。

「そ、そんな!? 私にさとみちゃんを裏切れといんですか!?」

「拒否するなら解体しかないな。」

「祐奈さんに相談するということでどうでしょう?」

「いいだろう。」

 いいのか? と突っ込みたくなる令和ちゃんであった。

 つづく。


「なんだ!? あのデカブツは!?」

 全国ジャパロボ大会の準決勝第2試合を観戦に来ていたさとみたちは目を疑う。

「ガオー!」

 九州ブロック代表チームと北海道ブロック代表チームの戦いに化け物が出ていた。

「いやあああああー!? 潰される!?」

 北海道代表のジャパロボは巨大で何本も生えている触手で九州のジャパロボに巻き付き握り潰していく。

「残り1匹。」

 北海道代表のパイロットは人を人とも思っていない。

「あれは本当にジャパロボなの!?」

「ジャパロボというよりもジャパロボ・ビックって感じね!?」

「やめてよ。ジャパロボ・ロトとか、ジャパロボ・ナンバーズとか登場させるの。」

「みなさん!? あれと決勝で戦うんですよ!?」

「あ、忘れてた。アハッ!」

 さとみたちは目の前の光景を疑った。

(ピキーン! なに? この感覚は?)

 麻理子は北海道ブロック代表チームのジャパロボ・ビックから何かを感じとる。

「死んでいった仲間たちの仇!」

 九州ブロックのジャパロボが一矢を報いようと捨て身の反撃に出る。

「誰? こっちが一人ぼっちだからって、試合前に楽勝、楽勝ほざいていたクソガキはー!」

 高エネルギーが圧縮される。

「ソロプレイヤーだからって勝てると思うなよー!」

 そして高エネルギー砲は放たれた。

「ギャアアアアアア!?」

 一瞬で九州ジャパロボを消し去った。

「北海道ブロック代表チームの勝利です! 明日の決勝戦は北海道ブロック代表チームと関東ブロック代表チームの戦いになりました!」

 決勝戦の組み合わせが決まった。

「さとみちゃん、あいつに勝てる?」

「大丈夫だよ。私たちは絶対に勝つから。」

「その自信はどこから来るのよ?」

「う~ん? 分かんない。アハッ!」

 笑って誤魔化すさとみ。

「でも、自分でできると思えるからできるんだよ。勝てると思っていたら勝てる・・・・・・気がする。」

「なんじゃそりゃ!?」

「昔っから、さとみは根拠のない自信だけはあるからな。」

「酷い!? お姉ちゃん!?」

「ワッハッハー!」

 北海道代表の巨大なジャパロボを見ても和気藹々とした東京都代表のチームだった。

(あの感覚は、どこかで会ったような? 怖い? 寒気がする?)

 麻理子だけは感じ取ったもの怨念の脅威を感じ取っていた。


「順調ですね。」

 その夜、北海道ブロック代表チームのジャパロボ・ドック。

「これもあなたたちからの技術提供があったおかげよ。」

「それはどうも。お役に立てて何よりです。」

 反大日本帝国同盟ジャパカイダの首領、前田みなみがいた。

「私は、この全国ジャパロボ大会で優勝して、奪われたものを全て取り戻す! このデッカイドウでな。ワッハッハー!」

 そして北海道代表チームはテロリストとつながっていた。

 つづく。


「いい? 絶対に勝つわよ!」

「おお!」

「私たちは強い!」

「おお!」

「できる! できる! できる! いくぞ!」

「おお!」

 試合前にエンジンを組む東京都代表チーム。


「zzz。」

 いつでも祐奈は寝ている。

「いいのかしら? 決勝戦も見ないで眠ってて?」

「祐奈教官らしいといえばらしいんだけど。」

「決勝戦は綾幕僚長も来るでしょ。寝てたらシバかれるわよ。」

「その時は覚醒して目覚めるんじゃない。祐奈教官は新人類だから。」

「ワッハッハー!」

 麻衣と久美は談笑する。

「あれ? 入院中の優子じゃない?」

「祐奈教官にスタンバイしておくように言われたんだって。」

「自衛隊って、ブラック企業よね。私も休みたい!」

「私も久美ちゃん。ジャパロボを改造したい!」

「おい!?」

「アハッ!」

 会場には優子も観戦にやって来ていた。


「それでは第5回全国ジャパロボ大会の決勝戦を行います! 関東ブロック代表チームと北海道ブロック代表チームの戦いです! それでは試合を始めてください!」

 ついに決勝戦が始まった。

「いくぞ! みんな!」

「おお!」

 さとみたちがフォーメーションを組み北海道代表のジャパロボに攻撃を仕掛けようとする。

「だ、ダメ!? 怖い!?」

「麻理子さん!?」

 しかし、麻理子のジャパロボは動かない。動かないどころか震えている。

「どうしたんですか? 麻理子さん?」

「あいつから悪意のような、歪んだ人間の憎しみを感じるの!?」

(その通りだ!)

 何者かが麻理子の心にテレパシーを送ってくる。

「なに!? 今の声!?」

 その声はさとみたちにも聞こえた。

「キャアアアアアア!?」

「麻理子さん!?」

 動いていない麻理子のジャパロボが北海道代表のジャパロボの触手に捕らえられる。

「久しぶりだな。麻理子。」

「ま、ま、ま、まさか!? その声は!?」

「そのまさかさ。自分の飼い主の声は忘れていなかったみたいだね。嬉しいよ。」

「大江都知事!?」

 なんと北海道代表のジャパロボのコクピットにいたパイロットは東京都知事の大江百合子だった。

「どうして東京都知事のあなたがジャパロボに乗っているのよ!?」

「私は、このジャパロボ大会で優勝して、自衛隊に奪われた東京都のジャパロボ開発機関やパイロット研究所を返してもらうつもりだ。」

「なんですって!?」

「だが私の圧倒的な強さで考えが変わった。私は東京都知事で甘んじる気はない。このデッカイドウで逆らう者は皆殺しにし、私が大日本帝国の女性初の帝国女王になるのだ! ワッハッハー!」

 恐るべき、大江都知事の野望。

 つづく。


「ワッハッハー! 私は大日本帝国の女帝になるのだ!」

 野心を前面に出す大江都知事。

「狂ってる!? なんなのこの自己中は!?」

 サイコパスを見て一歩引き下がるさとみたち。

「北海道代表の人達はどうしたのよ?」

「ああ、今頃、津軽海峡で大間のマグロのエサになっているだろうよ。」

「ええー!? 大間のマグロって人食いだったの!?」

「いや、驚くところが違うだろ。」

「アハッ!」

 どんな逆境でもユーモアは忘れずに。

「私が女皇帝になる前に、過去の汚点は消しておかないとな。」

「ギャアアアアアア!?」

「麻理子さん!?」

 麻理子のジャパロボを締め付ける大江都知事。

「い、今のジャパロボの操縦技術に触手なんて動かすことはできないはず!? こんなことができるのは!?」

「そうだ。私は強化人間になったのだ。」

 大江都知事はジャパロボを操縦するために脳波で動かせるように自分を強化人間に改造したのだった。

「まだ、あの恐ろしい実験をやっていたのね!?」

「麻理子。おまえを強化人間にしてデータは取れていたからな。おかげで私は人体に不可をあまりかけずに強化人間になることができたよ。ありがとう。感謝するよ。ワッハッハー!」

 麻理子は元々は都庁の強化人間であった。その呪縛から自衛隊に引き取られて解放されていた。麻理子が嫌な感覚を感じたのは強化人間同士が惹かれあっていたからだった。

「死ね! この裏切り者!」

「ギャアアアアアア!?」

 大江都知事は麻理子を締め付けていく。

「麻理子さんを助けよう!」

「おお!」

「私が突撃するから、さとみとすずちゃんは援護を!」

「了解!」

 作戦を決めイリスが化け物に突撃する。

「こんな奴を助けるのか? させるかよ!」

 大江都知事は触手でイリスのジャパロボを捕まえにかかる。

「あなたには物にしか見えなくても、麻理子さんは私たちの仲間だ! うおおおおおおー!」

 360度回転しながら突き進んでいくイリス。

「いけ! お姉ちゃん!」

「援護します!」

 さとみとすずが触手をイリスに近づけないように援護する。

「小賢しい!? ハエ共が!? これならどうだ!」

 高エネルギー破で攻撃する大江都知事。

「ウワアアアアアー!? 近づけない!?」

 圧倒的な力の前に前に進めないイリス。

「さあ! 処刑の始まりだ! 死ね! 麻理子!」

「ギャアアアアアア!?」

「麻理子さん!?」

 躊躇なく触手で麻理子のジャパロボを締め付ける大江都知事。

(みんな、私の分までがんばってね。)

「麻理子さん!?」

 さとみたち全員に麻理子の声が心に響いた。

「ドカーン!」

 麻理子のジャパロボが爆発した。

 つづく。


「私の卒業式は、みんなに祝ってほしいな。アハッ!」

 強化人間から普通の少女に戻った麻理子のささやかな願いだった。


「麻理子さんー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 その願いも虚しく、さとみたちの目の前で麻理子が爆発した。

「そんな!?」

「クッ!?」

 すずもイリスも悲しみと悔しさを噛み締める。

「悲しむ必要はない! 直ぐに会わせてやるぞ! あの世でな!」

 無限の触手と高エネルギー砲で同時に攻撃を仕掛けてくる大江都知事。

「うわあああああー!?」

 悲しみに包まれたさとみたちは劣勢に立たされる。


「私は出る! 機体はないのか!? 機体は!?」

 優子がキレている。麻理子が目の前で倒されて、居ても立っても居られないのだ。

「ダメだよ。優子。祐奈教官が無理するから優子はジャパロボに乗しちゃあダメって言ってるんだもの。上官の祐奈教官の言うことは自衛隊では絶対だよ。」

 しかし久美に止められる。

「私が、私が出ていれば、麻理子さんがあんなことにならなかったはずなんだ!? 私さえ出ていれば・・・・・・。どうして私のジャパロボがないんだ!? うおおおおおおー!」

 何もできない自分が歯がゆい優子は涙を流す。

「優子・・・・・・。」

 久美にも優子の悔しさが伝わってくる。

「ありますよ。ジャパロボ。」

 そして、物一人にも優子の気持ちが伝わる。

「令和ちゃん!?」

 優子の想いが伝わったのがAIロボットの令和ちゃんだった。

「優子さんは意識高杉さんで仲間よりも任務優先していて、誰かを思いやるような人ではないと思っていました。でも麻理子さんがいなくなったら泣ける人に変わっていたんですね。」

 確かに以前の優子なら大好きな祐奈以外に興味はなかっただろう。この全国ジャパロボ大会を通じて多くの人々と接するうちに優子の心に他人を思いやる心が生まれた。

「思いだけでは何もできません。力が無ければ何もできません。あなたの思いを叶えるジャパロボが必要です。」

 地面から新しいジャパロボが出現する。

「こ、このジャパロボは!?」

「地の精霊ノームのジャパロボです。私、風の精霊とお友達なので。アハッ!」

(おまえが令和ちゃんかい?)

「はい。AIロボットの令和天皇です。宜しくお願い致します。」

(シルフィードの友達の頼みなら断れないな。)

「ありがとう。ノームさん。」

「よ、よろしく。ノーム。」

 不器用な優子。

(二人とも早く乗りな! 仲間を助けに行くんだろ!)

 優子と令和ちゃんはノームに乗り込む。

「リンク!」

 令和ちゃんは元々のジャパロボのAIロボットとして地の精霊ノームに自らを接続する。

「優子さん、私がサーポトします。さとみちゃんたちを守ってください。」

「ああ、そのつもりだ。もう誰も悲しませない! 地の精霊ノーム・ジャパロボ! 優子! 出るぞ!」

 新しい優子の戦いが始まる。

 つづく。


「ウワアアアアアー!?」

 さとみたちは激しいデッカイドウの攻撃に危機にさらされている。

「みんな消えるがいい! 全ては私の糧になるのだ! 私だけが生き残るのだ! このデッカイドウがあれば、大日本帝国の支配者になることも夢ではない! ワッハッハー!」

 強化人間と化した大江都知事は普通の人間ではない狂気の世界に足を踏み込んでしまっていた。

「もうダメ!? あんな化け物とどうやって戦うのよ!?」

「せめて麻理子さんがいてくれたら!?」

 すずもイリスも麻理子を失って気落ちしていた。

「しまった!?」

「さとみ!?」

「捕まえた。」

 さとみのジャパロボを触手で捕まえた大江都知事はニヤリと笑う。

「死ね! ドブネズミ!」

 高エネルギー砲がさとみを狙う。 

「やられる!? ギャアアアアアア!?」

 死を覚悟するさとみ。

「ズバっと!」

「何!?」

 何者かが触手を切り裂き、さとみを救出する。

「さとみちゃん大丈夫ですか?」

「その声は令和ちゃん!?」

「はい。優子さんも居ますよ。」

「優子さん!?」

 さとみのピンチを救ったのは優子搭乗の地の精霊ノーム・ジャパロボだった。

「あんたたちが情けないから、ゆっくり病室で寝ていられないんだよ。」

 全員に声かけなどしたことが無いので照れる優子。

「クスッ。なんか優子さんポイ。」

 さとみの表情に笑顔が戻った。

「でもあんな化け物とどう戦えばいいのか!?」

 不安なすず。

「よく見るんだ。あいつは一人ボッチだ。でも私たちには仲間がいる。それに麻理子さんも見守ってくれている。みんなで力を合わせれば倒せない敵なんかいないんだ!」

 麻理子ばりのリーダーシップを発揮する優子。

「やろう。私たちならどんな敵が相手でも勝てる! 勝ち切るんだ!」

「おお!」

 心を一つにして、さとみたちの反撃が始まる。

「シルフィード・ウインド!」

「サラマンダー・ファイア!」

「ウンディーネ・ウォーター!」

「ノーム・ランド!」

 4大精霊ジャパロボが風、火、水、地の属性の一斉に攻撃を仕掛ける。

「バカな!? こんな所で私の夢が終わるというのか!? 嫌だ!? 嫌だ!? 死にたくない!? ギャアアアアアア!?」

 大爆発を起こす大江都知事のデッカイドウ・ジャパロボ。

「全国ジャパロボ大会の優勝は関東ブロック代表チームに決まりました!」

 こうして全国ジャパロボ大会はさとみたちの優勝で幕を閉じた。

「やったー! 私たちの優勝だ!」

「やったね! さとみちゃん!」

 歓喜するさとみたち。

「さとみたちは救ったよ。麻理子さん。」

 優子は空に呟いた。

「優子さんは本当は名前通り優しい人なんですね。

「そ、そんなことはない!? 私は私だ!?」

 令和ちゃんの言葉に素直になれない優子であった。

 つづく。


「それでは綾幕僚長から優勝の表彰状の授与を行います。」

 全国ジャパロボ大会は関東ブロック代表チームの優勝となった。さとみたちは表彰状やトロフィーを受け取った。無理が祟った優子は再び病院送りで欠席している。

「おまえたちがキビキビ動かないとお母さんが怒られるんだぞ!?」

 怖い綾幕僚長がきているということで祐奈は眠い目を見開いて起きている。

「それでは優勝しました関東ブロック代表チームには副賞として、公務員である自衛隊に入隊する権利が与えられます。」

「やったー! これで将来の生活は安泰だね! アハッ!」

 さとみは母親の祐奈と同じ就職先を手に入れた。

「それでは最後に優勝チームの願い事が1つだけ何でも叶えることができます。関東ブロック代表チームの願い事は何ですか?」

 司会進行役の麻衣がさとみにマイクを向ける。

「私たちの願い事はたった一つ、麻理子さんを生き返らせてください!」

 さとみたちの願いは死んでしまった麻理子を生き返らせることだった。

「おい!? さとみ!? そんな願い事は無理に決まっているだろうが!? 綾幕僚長を困らせるんじゃない!?」

 必死に娘を説得する母親の祐奈。

「いいよ。」

 しかし、綾幕僚長は気軽にできると言う。

「ええー!? いいんですか!?」

「いいんです。麻理子は強化人間だから、身体データと心とメモリーデータも保存しているからクローンとして復元は可能だ。性格も、そのまんまに復活できるぞ。」

 便利な強化人間。科学技術の進歩した大日本帝国。

「そうだったのか!? 知らなかった!?」

「祐奈。おまえ会議で何を聞いていたんだ? まさか!? おまえ会議中に眠っていやがったな。」

「ギクッ!?」

「裸逆さ吊り世界一周旅行の刑だ!」

「やめて下さい!? 綾教官!? 私には娘がいるんです!?」

「問答無用!」

「ギャアアアアアア!? 助けてー!? 神様!?」

 祐奈の消息は不明になった。

「やったー! また麻理子さんに会える! アハッ!」

「良かったね! さとみちゃん!」

「うん。」

 喜ぶさとみとすずは大の仲良し。

「よし! 明日からもがんばるぞ!」

「おお!」

 こうして全国ジャパロボ大会は無事に幕を閉じた。


 かに見えた。

「戦いはこれからだよ。」

 ここは反大日本帝国同盟ジャパカイダの研究所。リーダの前田みなみがいた。

「強化人間が復元できるのであれば、我々にも強化人間は復元できるということだ。」

 細胞の培養液の中では元東京都知事の大江百合子の肉体が復元されようとしていた。

「それに百合子細胞は世界のブラック・マーケットで高値で売れ幕ぞ。ワッハッハー!」

 戦いは憎しみを生み、復讐の戦いは終わらない。さとみたちとテロリストの戦いは続いていく。

 つづく。

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