第10話 ライバル

それから数か月が過ぎ ――――4月



瀏介とは相変わらずで……



クリスマスの日以来、関係を持っていない。


部屋の出入りはしているもののキス止まり。


時々、不安になる。


瀏介には告白らしき事を言われたけど、私の返事はハッキリ言っていない。


だからなのか……


今一度、再確認じゃないけど、瀏介とはきちんと話し合った方が良いかもしれない。




そんな中、『KAGETSU』に一人の住人が現れた。



「今日から、下の階に住む事になった大崎 昇(おおさき のぼる)と、言います。これ、どうぞ!」

「ありがとうございます。冬月 晶です」

「晶さんというより、晶ちゃんが良いかな?見た所によると学生さん?」

「はい」

「彼氏は?」

「えっ? 彼氏は…微妙な関係の相手なら…」


「じゃあ、一応、いるわけだ」

「まあ…」


「晶ちゃん可愛いから彼氏も彼女と思っているんじゃない?まあ…二人の間柄、詳しい事は当人同士の問題だからね」


「そうですね」


「それじゃ」


正直、瀏介とは付き合っている実感はない。


私がバイト尽くしっていうのも有るし、二人の時間がないからだ。


それにお互いハッキしていないから?


だけど、特に私の方かもしれない。


瀏介の方が逆に不安で、待っていると思うから




そして、ドアを閉めようとすると、隣の部屋が開く。




「晶ちゃん」

「はい?」

「…あーいう人程、裏があるから気を付けるのよぉ~」



私の部屋の前に来ると耳打ちするかのようにコソコソ小声で話す一希さん。



「えっ?」

「晶ちゃんが、一番騙されやすいんだからぁ~」

「や、やだなぁ~辞めて下さいよ。イイ人……」

「ほら!既に騙されてる!」

「えっ!?」

「うまい言葉並べて、その気にさせる男よ」



「………………」



≪じゃあ瀏介も?≫

≪まさかね……だって…だけど、ハッキリしてないから…体の関係になる為に?≫




「とにかく気を付けて」

「はい…そうします」



私達はお互いの部屋に戻る。




しばらくして―――――



コンコン

私の部屋のドアを誰かがノックした。




カチャ


ドアを開けると




ドキン



「…瀏…介…? どうしたの?」



私を部屋に押し込むようにすると中に入って来る瀏介。



「晶、今日の男には気を付けろ!」

「えっ?」

「大崎」


「あー…一希さんもそう言ってたけど……大丈夫だよ気を付けるから……それより私は……瀏介との事が……」


「えっ?」


「私がハッキリしてないのもあるんだろうけど…」


「…晶…?」


「クリスマス以来、全然関係持とうとしないから私達……付き合っているって言えるのかな?って……不安になる……ごめん……瀏介はきちんと想い伝えているから私の方がハッキリ……」




瀏介はキスをした。



「晶は悪くないから。俺が安心しきってんだよ」


「えっ?」


「会いたい時に会えるから。だからって関係ばかり持つのもお前が、それだけの関係なんじゃないかって……お前に思われたくないんだよ……」


「……瀏介……」


「俺は、お前の事マジだから安心しろ」




私は瀏介に抱きついた。


そして、私達は1つになる。





私はきっと彼に愛されてる実感を常に感じていないと不安になる。


今まで、どれだけの女の人を連れ込んでいるのを見ただろう?


その事が私の心の中を不安にさせていると―――



女好きでムカつく奴だけど、彼と身体を重ねている時は、不安なんて一切ない。


むしろ彼が好きという想いになる。





「……瀏介……好き……」

「Hが?」

「ばか……」






ドキドキ加速する私の胸は


嘘じゃない事を物語っている


彼は何度も何度もキスをくれる


時折深いキスをしたり


大人のキスをされたり


戸惑う私を優しく見つめる




しばらく同じ布団で横になっている私達



「瀏介……」

「何?」

「私達、恋人同士の関係で良いんだよね」


「愛し合った後に言う台詞かよ。Hしている気持ちに嘘はないから好きとか愛してるとか言うんだから」



頭を優しく撫でる瀏介。



「お前が可愛くて仕方がなくて、離したくないって思うし」


「瀏介……」


「晶。一緒にいる時のお前は不安なく幸せそうな顔しているから、俺はその姿を見れて、その瞬間は充分幸せだから、そのままで良いから。改めて言う。晶、俺と付き合って欲しい」


「瀏介……うん…」




私達はキスをした。



「晶、後ろ向いて」

「うん」



背後から抱きしめる瀏介。



ドキン



そして、私の身体に触れながら、うなじにキスをされ、唇が下へと這う中、大きい手が私の身体を探る。



私は甘い吐息が洩れる。




「……瀏……介……」

「何?」



つい声が洩れる。



「可愛い~♪ もう一回しよ♪」

「…えっ…?」

「駄目?」



私の返事を聞く前に、私の身体の中を熱が一気に貫いた。


私は自分でも恥ずかしくなる位、声が出てしまった。



「晶…大崎はお前狙ってる気がしてならないからマジで気を付けて欲しい」

「…うん…」

「何もない事願いたいけど……」

「……うん…」





そんなある日の事 ―――



「晶ちゃん、お帰り」

「大崎さん。ただいま……」

「ねえ、今度出掛けない?」

「えっ?」

「映画のチケット手に入って」


「いや…でも私……バイトあるし」

「その後でも良いよ。バイト終わったら連絡頂戴」



そう言うと連絡先を渡され、私達は別れ、自分の部屋に移動する私。


廊下で待機していた瀏介に遭遇。


「お帰り、晶」

「ただぃ……」



瀏介にキスされ、頭をポンポンとした。




「映画…行かなきゃ、アイツは何か仕掛けて来るんだろうな……」


「瀏介……」




私の手を掴み、瀏介は自分の部屋に入れる。




「ライバルの出現って所だな」



瀏介は抱きしめた。

私も抱きしめ返した。




「取り合えず行ってきな。お前の都合の良い日に」


「うん…」


返事をすると顔をあげる。



「そんな顔すんなよ。俺だって二人きりにさせたくねーし」

「どうして好きでもない人と、行かなきゃならないの…行きたくないよ……」

「……晶……」



私は瀏介の胸に顔を埋めた。



「取り合えず部屋に戻るね」

「ああ」



私達はキスをした。



「……瀏介……一緒にいたい」

「来な。自分の用事済ませて俺の所に」

「うん…」



再びキスをし、私は自分の部屋に戻ろうと、部屋を出て行こうとすると、瀏介は引き止め、再びキスをし、深いキスをした。



「待ってる」

「…うん」



私は後ろ髪引かれる思いの中、自分の部屋に戻った。

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