第5話 存在

「俺と付き合って下さい!」



ドキッ

初めての告白。



「ゆっくりで良いので、お願いします」




私は一先ず同級生である


飛口 了(ひぐち りょう)。18歳と付き合う事にした。


今まで、片想いばかりで告白しても駄目だったり付き合えたかと思ったら友達止まりで相手からの告白がまずなかった。




そして、付き合い始めて1ヶ月 ―――9月



私達の正式な付き合いが始まった。



でも、そんなある日。




「あれ…?…了…?」



街に出た時、了が女の人と一緒にいる所を偶然見掛けた。



次の日、問いただすと。




「女友達。お前も男友達いるだろう?」


「そうだとしても、私は彼氏いて男友達と出かけようとは思わないよ」

「じゃあ、誤解されないように、今度からは出かける時は一言言うようにする」

「うん、その方が良い。約束して」

「分かった。じゃあ…そうする」



その日の夜、憂鬱な気分でバイトを終え帰る。




「じゃあねー、瀏ちゃん、バイバーイ」

「バイバーイ」



キスして別れる二人の姿。



≪また違う女の人≫




もう何度見ただろう?


見掛ける度に違う女の人ばかり


一体、何人の彼女がいるんだろうか?


彼は誰でも良いという考えなのだろう?


彼は一人の人を愛せない


多分そういう人なのだろう?と……




「おかえり、晶ちゃん」

「あんたに晶ちゃんと呼ばれたくない!」

「じゃあ、晶が良い?」

「カップルじゃあるまいし!」


「本当、あー言えば、こー言うで」

「ふんっ!」

「可愛くねーな!」

「どうせ可愛くないですっ!」



私は通り過ぎる。




「なあ、カルシウム取ってる? それとも欲求不満?もしくは女の子の日?」



足を止め、バッと振り返ると歩み寄る。




「ほんっとっ!いちいち何!?あなたには関係ないでしょう!?」


「いやいや、欲求不満なら俺が満たしてあげ……」




グイッと胸倉を掴み、引き寄せる。



「うわっ!」

「お断りします!誰があんたになんか!」



グイッともう片方の腕を掴まれ、私の体は、180度回転し壁に押し付けられた。



ドキッ



「なあ、お前さ、もっと素直になれないわけ?」

「わ、私は素直です!」

「何処が?」



ムカッ

否定され腹が立つ。



「大体、好きでもない人に自分を曝け出す理由が分かんないから!一人の人を愛せないあなたに何が分かんの!?」



ドンッと押しのけ、自分の部屋に行った。




「お前こそ、俺の事何もしらねーくせに…マジムカつく!」



カチャ

一希の部屋のドアが開いた。




「本当、二人って仲悪いのね~。相性悪いんじゃなぁ~い?」

「…あっちが素直じゃねーだけだろ?」

「まあ、18だから若い証拠よね~? でも、そんな瀏ちゃんも負けてないけど~?」



「………………」



「瀏ちゃん、晶ちゃんの事、気になるの~?」

「えっ?」

「私の勘違いかしら?それとも妹みたいな存在なだけ~?」

「さあな」


「もし、晶ちゃんが気になるのであれば、自分の恋愛の過去をきちんと話して晶ちゃんだけを愛さなきゃ、一生無理よ~。色々な異性毎回連れ込んでいるなら尚更よ~」



「………………」



「晶ちゃん、本当は素直で可愛い所あるし~瀏ちゃんが変わったら二人は仲良く愛を育めると思うのよね~?私。私が男だったら絶対手放したくない存在だわ~」



「…………………」



「本当の瀏ちゃんは全然違うんだから、本気で晶ちゃんの事考えて、晶ちゃんに変えてもらいなさい!二人は絶対うまくいくから!あ~私も恋したいわ~じゃあね~瀏ちゃん♪」






そして、また、ある日の事。



「瀏介君、私の事、考えて欲しいの」


「最初の約束だったろ?第一、俺、まだ心の整理が出来てない恋愛があるから体の関係以外の他に理由はない!」



「…………………」



カチャ

私が通り過ぎようとした瞬間、部屋のドアが開く。


大屋さんの部屋から出て来たのは琳夏さんだ。



「………………」





≪相変わらず…やっぱり付き合っているんだ≫

≪でも…何か様子がおかしかったような…≫




ガチャ

ドアが開き目が合った。



「うわっ!ビックリした!何してんだよ!」

「別に。今、帰って来た所だったんで、通り過ぎる瞬間ですが?」

「あっ!なあ、お前、この後の予定は?」

「特に」

「だろうな!」



ムカッ



「ふんっ!」



私は去り始める。



グイッと腕を掴まれ引き止められた。



「きゃあっ!何?」

「ちょっと付き合え!」

「えっ?」



グイッと掴んだ手を引っ張り帰るはずだった私の部屋から離れていく。



「ちょ、ちょっと! 何ですか? 琳夏さん連れて行けば良い…」

「誤解してもらっては困るから言うけど、彼女とは体の関係以外に何の関係もないから!」



「……………」



「大体彼女は、それを承知して付き合っていて、今更、本気で私の事を考えてって言ってくるし。断った所だよ!」



「………………」



「車に乗れ!」

「あの…何処に行くんですか?」

「ペットショップ」

「ペット…ショップ?」

「そう!」


「どうして私が付き合わなきゃならないわけ!?」


「暇そうだったから」


「えっ?」


「特に用事ないって言っていたから。目も合った事だし」

「目が合ったからの理由が分からないんだけど」




どうやら話によると、ここのアパートに犬を飼おと考えているらしく、下見に行こうと思っていたみたいで……


よりによって私が何故、彼に付き合わされなきゃいけないわけ?




≪あっ!ついて来たものの彼氏に見られたら誤解される≫




「あの!」

「何?」

「私、彼氏いて誤解されるの嫌なんですけど!」

「えっ?彼氏いたの?」

「一応…」

「ふーん。お兄さんにしておけば?」

「えっ?」


「納得するだろう?」

「…でも…」

「だったら何かあったら言え」



「………………」





だけど ――――



「了ちゃん」

「美寿々(みすず)」



運命のイタズラか彼氏が女の人といる所に遭遇した。




「………………」



女の人は私の彼氏に腕を絡める仕草。


私は足を止めた。



「私の事好き?」

「勿論」

「じゃあ…早く彼女と別れてよ~」

「ああ、そうだな」



「晶?どうかしたのか?」



私に気付き、大屋さんが尋ねた。


「晶?」


「…彼氏が」

「えっ?」

「前にいる…」

「えっ!? ……もしかして女連れてる奴?」



私は頷いた。



「前に…一緒にいる所見掛けて女友達って…言われたんだ…」

「あれは…友達じゃねーだろう?」



私は彼氏に歩み寄って行く。



「あっ、おいっ!晶?」




「了」

「あ、晶!?」

「えっ!?彼女さん!?」



女の人は絡めていた腕を慌てて離した。



「晶」



大屋さんが私の名前を呼び隣に来た。



「晶……って…えっ!? その人…誰? まさか、お前、他に男いんの?それとも友達?つーか俺に女の子と出掛けるなら言えって言ったお前こそ男友達連れてんじゃん!一言、言えよ!それとも実は友達じゃなくて本彼?」


「嘘ー。彼女さん二股?」

「違う!彼は…」



グイッと肩を抱き寄せる大屋さん。




「彼氏じゃねーよ。友達」



「………………」



「街にいるのを見掛けて、ついさっき、俺が無理に誘ったんだ。俺、晶に彼氏いんの知ってるし、すっげー迷惑して困ってんの知ってだけど、一回で良いからデートしてって、ドライブに誘った所」



「いいなぁ~、車持ちの人なんだ」と、女の人。



「俺は晶が好きなんだけど、彼女に片想い中でさー。で? 二人は…どういう関係なわけ?何か晶と彼氏さんの中でルールあるような感じだったけど?」



「………………」



「まあ、いいや。それより二人の関係教えてよ!」


「わ、私達は付き合っているんです!」

「へぇー、付き合っているんだ。でも彼氏さんは、まだ晶の彼氏なんだよね?彼氏こそ二股じゃん!」



「それは…」



「なあ、この際ハッキリしてくんねーかな?」


「えっ?」


「別れるなら別れろよ!それとも、このまま二股かけていくわけ?俺の好きな女、傷付けんの辞めろよ!」




ドキン



≪香月さん……≫



「それは…」


「後回しして、そのうちなんて言い訳、聞きたくねーし。ズルズルしてんじゃねーよ! 彼女さんも嫌でしょ?やっぱ自分だけ見て欲しいよなー?」


「それは、そうですけど」

「だったら、ハッキリと今ここで蹴りつけてよ!」


「…晶…ごめん…こんな形になって……俺と別れて欲しい……」


「……そっか…分かった……」


「本当…悪い…」



二人は私達の前から去った。



「………………」



「…ペットショップ…」


「えっ?」


「行くんでしょう?」


「…晶…」


「行こう!」



私は歩き始める。



グイッと引き止められ、くるりと回転したかと思ったら、私の体は胸の中にスッポリとおさまり抱きしめられていた。



ドキッ



「無理すんなよ…」



ドキン



「だ、大丈夫だよ……動物観て癒されれば嫌な事も忘れ……」



両頬を優しく包み込むようにすると顔の向きを変えられてキスされた。




ドキン



「…帰るぞ!」



軽く押し退ける私。



「やだ!だったら何処かに連れて行ってよ!」



「………………」



「……アパートに…帰るなんて…嫌だし……今日だけ一緒にいてよ……」



私は下にうつ向く。



彼女が一瞬、愛しく見えた。



「良いけど」




意外な返事だった


いつも言い合い


彼の嫌な一面を


何度も見てきた


だけど……


今回は彼に


救われた気がする




グイッと抱き寄せられた




ドキン



「一緒にいてやるよ」




私達は街を出てドライブに行った。































































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