第2話 大屋さん

「はあぁぁ~……今日も1日疲れた……」


大きい溜め息を吐きながら呟く。




学校行って


バイト行って


小遣い稼ぎ


そして1日が終わる


それが私の1日の流れだ






―――ある日の事 ―――




「じゃあね! 瀏ちゃん」

「うん、バイバーイ」



大屋さんの部屋から女の人が出てきた。


この間の人とは、また別の女の人だ。




「………………」



大屋さんと目が合う。



「何?」

「別に」



私は通り過ぎる。



「なぁ」

「何か?」

「あんたいくつ?」

「いくつでしょうね」

「18」


「知ってるなら聞かないで!」

「知らないから聞いたんじゃん!」

「嘘だ!超能力者じゃあるまいし…年齢当てるなんて何者なんですか?」

「見た目の判断。つーか学生だよな?」


「そうですが」

「バイトしてんの?」

「しないとやっていけませんから!」

「彼氏は?」

「あなたに話す必要ありますか?」


「あー…その反応はいねーな?そりゃそうだよな?キスもHもした事ないなら」


「悪かったですね!ええいませんよ!失礼します!」




私は部屋に戻る。



「もうっ!何なの!?」





そしてまたある日の事。



カチャ

ドアが突然開く。




ゴンッ

私のオデコを直撃。



「あれ?今…変な音…」

「……っ!」

「あ…すみません……大丈夫ですか?」


「………………」


「あー、大丈夫。大丈夫。その人、石頭だから」

「……ムカつく…!!」



≪また違う女の人…≫



「すみません……あっ!じゃあねー、瀏介君。また来るね!」

「ああ」



「………………」




二人はキスをした。


しかもかなり濃厚だ。


キスにも色々あるだろうけど、正直、無縁だった私は詳しい知識は知らない。


正直、見ているこっちが恥ずかしい。


私は足早に去る。


大屋さんは、毎回違う女の人を連れ込んでは身体の関係を持っている最低野郎だ。


今迄、会った事のない男の人だ。




数日後の朝。



ガチャ

大屋さんのドアが開いた。



「おはよう。冬月 晶さん」

「おはようございます。女好きの大屋さん」

「一言多いぞ!」

「ふんっ!事実でしょう?」

「モテるだけだ!」

「何処が?」


「妬くな、妬くな!」

「妬いていませんっ!勘違いしないで下さい!」

「で?今から学校か?」

「学校ですけど」

「それより、お前大丈夫か?」




スッとオデコに手が触れた。



ドキン



「熱あるし!」

「これ位、大丈夫です! ご心配なく!」



私は去り始める。



確かに熱があるのは事実。

環境が変わり疲れが出たのだろう?



グイッと腕を掴まれた。



「何ですか?」

「送るから車に乗って行け!」

「大丈夫です!」

「その体じゃ無理だろう?今日、バイトは?」

「休みもらいました……つーか……あなたには関係ないでしょう?本当に大丈夫ですから!」


「何かあったら遅いから」

「大丈夫です!」




その時だ。



「どうしたの~?騒々しいけど~?」

「一希」

「春日さん」

「痴話喧嘩~?あら~?それよりも晶ちゃん熱あるんじゃなぁ~い?顔赤いけど~?大丈夫~?」


「大丈夫です」

「嘘つくな!」

「本当に大丈夫だってば!」



私は押し退け去り始める。



「おいっ!待てよっ!」



グイッと腕を掴まれた私の体を支えるように片手で抱きしめた状態で、もう片方の手は壁に押し付け行く道を塞ぐように、かなりの至近距離感に私の胸がドキンと大きく跳ねた。



「まあ!瀏ちゃん大胆なんだから~♪」


「熱、どれ位あるか知らねーけど下手すりゃ体のバランス崩して倒れ兼ねないからな!」


「ちょっとした心遣いね~♪頭打っちゃうかもしれないからね~♪」



「………………」



「晶ちゃん、無理しない方が良いわよ~。送ってもらったら~?学校は近いとはいえ倒れたりしたら大変よ~」



「………………」



私は仕方なく送ってもらう事にした。



「帰りも迎えに来るから」

「女の人との時間なくなっちゃうよ」

「それは関係ねーだろう?終わったら連絡しろ!」



私は学校に行った。




「全く……意地張ってんの見え見えなんだよ」




学校終わる頃には、既に着信が大屋さんから入っていて私は折り返し連絡した。


迎えが来て、助手席に乗る私のオデコに触れる。




ドキン

胸が大きく跳ねる。



「まだ熱いな」


「………………」


「何か欲しいのは?店に寄るけど?」

「大丈夫です」

「そうか」



私達は帰る。



帰ると同時に春西さんが、声をかけてきた。



「晶ちゃん、おかえり~。今から、この一希様が営養たーっぷりの、おかゆを作るわよ~♪」


「えっ?」


「一希、料理すっげーうまいから作ってもらえ」



頭をポンポンとされ、大屋さんは、部屋に戻って行った。


そんな私は、春西さんにおかゆを作って貰う事にした。



「おいしい~♪」

「良かった~♪ ねえ、晶ちゃん」

「はい」


「瀏ちゃんの事だけど……色々な女の子連れ込んでいるけど理由あるのよ」

「えっ?」

「良いイメージないかもしれないけど……実は傷付いているの……」


「あれで?」

「まあ無理もないだろうけど……もっと長い目で瀏ちゃんの事見てあげて」

「春西さん……」


「一希で良いわよ~♪ 晶ちゃん。これからも仲良くするんだから~♪ 瀏ちゃんの事で何かあったら何でも聞いて~♪」


「一希さん……」


「今は本当ムカつく!とか、色々悪いイメージあるかもしれないけど……瀏ちゃん、本当は優しいから……まあ…これから色々な瀏ちゃん見る事になるだろうし、ゆっくり分かってあげると良いわよ。あなた達、暫く喧嘩絶えなさそうだけど」



「そうかもしれませんね」





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