金魚球
武江成緒
前編
という書き方は、当て字なのだと教わったのは、十一のころ、お盆祭りの夜でした。
それは昔、
そう教えてくださった
大人の腕でも一抱えもある球鉢は、その
中にはどろりと
白い
とぽん、と首が切り離されると、私の手には
ほんのり青く透きとおる球を、お店の
三
昨年も、一昨年も、いえ、物心のついた頃から幾度となく、お祭りのたびに、球のなかに見たその赤い影は、見るほどに金魚にそっくりで。
やはりこれは、
どうして
微笑んだ横顔で私の問いを受けながら、叔父様はお店のご主人に何かを指図なさいます。
ご主人はお店の奥へ下がられると、やがて黒ずんだ木箱をかかえて戻ってこられました。
霊符の貼られた
金魚球、いえ、禁形魂でした。
あの球を、
と、叔父様は右の球を手に取られて、
私の手にある青い球とはちがった色の、黄色にちかい球でした。
そのなかを泳いでいるのは、見慣れた金魚の姿とはすこし変わったものでした。
五
二本の脚が生えているかのようでした。
黄色く
私はすこし、
叔父様はその球を箱の中へと戻されました。
そして今度は、左の球を手に取られると、また明かりへと翳されました。
さきほどの球の中には茶色の影がもがいていましたが、今度の球は、球そのものが茶色に染まっておりました。
濃い番茶でも詰めたかのような色でした。
そのなかに、黒ずんだものが身をうごめかせておりました。
球のなかを窮屈そうにぐるぐる回るその形には、二本の脚に加えてさらに、前足と呼ぶか、手と呼ぶべきか、とにかくそれをうごめかせて、球を内から引っ掻こうとでもいうかのようにさかんに動いておりました。
私はとても
と、叔父様は、浴衣のふところに手をさし入れられ、なにか黒いものを、明かりのもとへ翳されました。
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