銀の少年。

「デイヴィッドさん!?でも。どうしてここに・・・?」


ディヴィッドは銀色の手を振って、そこからゆらゆらと立ちのぼる湯気を振り払うと、テーブルの影に隠れている二人の方を見て彼等の方へ向かおうとした。


しかし、乱闘の最中テーブルの上に立ってその場の誰よりも上等な銀の腕を持ったデイヴィッドは目立ちすぎた。


荒くれ者たちのエクスプロイターのいくつかは、再びデイヴィッドへ向けられ、火を噴いた。


この時、人々にあったのは、攻撃的な破壊衝動よりも、鉄をも融解させる弾丸を正確に手で弾き飛ばしたことを目の当たりにした衝撃と、それが偶然か否かを確かめるための探究心だった。


デイヴィッドは、まるで耐久実験よろしく情け容赦なく飛来する弾丸を軽々と全て弾き飛ばして見せた。


そして再び、何食わぬ顔で二人の元へと向かおうとした。


玉の切れたエクスプロイターを手にした者らは愕然とし。


その一方で、テーブルの影の二人の若者は、知らぬ地での頼もしい友人との再会を心待ちにした。


だが、またしてもその瞬間が訪れる事は先延ばしとなった。


男たちの『実験』は、より直接的でシンプルなものへとシフトした。

彼等は、玉の切れたエクスプロイターを投げ捨て、雄たけびを上げ、手を何かをむしり取る形にしてデイヴィッドに掴みかかった。


デイヴィッドは、それら全てを軽々と投げ飛ばした。


そして、次第にその野蛮な実験は、ハンガーにいた多くの者の関心を引いて、いよいよデイヴィッドは球のようになった男たちの集合体の影に隠れてすっかり見えなくなった。


「お前ら。知り合いだったの?」


正に苦境を迎えるデイヴィッドを無視して、テーブルの影の二人の元へメイプルが一足先にやってきた。

二人は必死になって、ステレオで同じような内容の話をした。


そして、めちゃくちゃになった人々を眺めて悲しそうにセイムが言った。


「どうしましょう・・!皆さん僕たちのせいで」


「大丈夫、これだけの騒ぎだ。もうすぐさ」


「もうすぐって・・・。何の事ですの?」


メイプルの半身がテーブルから少しはみ出していたので、ジゼルは心配になって彼を自分のそばへ寄せて聞いた。


セイムは、球のように覆いかぶさった男たちの中心にいるであろうデイヴィッドがすぐに心配になった。


球は圧縮され縮み始めている。


「デイヴィッドさんが・・・・!」


しかし、セイムの心配をよそにデイヴィッドの膂力りょりょく凄まじく、圧縮された男たちは軽々と四方八方へと投げ飛ばされた。


ここまでくると彼等の好奇心はすっかり鳴りを潜めて、それぞれの目には得体のしれないに対する明確な敵意が現れ始めていた。


デイヴィッドは、その両のセンサーで彼らの明確な敵意を感知したのか。

もう二人が身を隠しているテーブルの方を見なかった。


セイムは、それがとても悲しくなった。


「デイヴィッドさん・・・」


デイヴィッドは、3度押し寄せる荒くれ者たちに向けて両手を向けた。


5枚の障壁が現れて彼の銀色の手がオレンジ色に輝いたかと思うと陽炎を纏ってすぐに白くなった。


セイムはその美しい姿を影から身を乗り出して眺めた。


まるで、天使のようだ。と、彼は思ったのだ。


「セイム!危ない!」


ジゼルが、セイムを影に連れ戻すのと、ハンガーに爆音が響いたのは、ほとんど同じタイミングだった。

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