ゲームの中のリアルゲーム
二人は恐る恐る頑健な金網で囲まれたケージに入り今まで来た道をしみじみと見つめた。
「なんだか、リピートエクスプロアのドロップスイッチのようですね。」
ジゼルは輝かしく遠い過去を懐かしむように幸福そうに言うと、間髪入れずに下方向のボタンを力強く押し込んだ。
すると、建物の奥でいくつもの動力が動き出し二人を乗せたケージは地面に飲み込まれていく。
人工の地面の断面は、浮きシップやグライダーなどにも使われる金属と複合セラミクス製だった。
その層は、セイムが頭からつま先まですっぽりと収まってしまうほどの厚さで、ケージの全高を収めるのには少しだけ足りなかった。
足元の暗闇から黄色い光を放つ空間が現れて、大勢の大人たちが談笑する声が聞こえて来た。
二人はこすれ合うひし形の金網から絶対指や鼻先を出さないように細心の注意を払い店内を見渡した。
四角くくりぬかれた空間に乱雑に並べられたテーブルでは、地上とは、少し毛色の違うゲームが展開され、人々の放つ熱気や、人またたびの煙で空間全体が霞がかっていて向こう側の壁を見渡す事すらできない程だった。
極太のケーブルに取り付けられたいくつかの照明は太陽のように輝き、元をたどればそれは、床から延々と引かれた物だった。
施設2階3階部分は、殆ど通路と足場しかなく。
その僅かな場所すらゲームの場と化して、人々の合間を縫ってB級の自動端末が背負ったタンクから酒を配って絶えず動き回っていた。
セイムはこの街全体が一つの生き物のように生き生きとしていて、加えて危険で恐ろしく、まだ自分が知らないだけで、素晴らしい秘密が隠されているに違いないと感じた。
エレベーターの出口で二人を出迎えたのは、眩く煌めく景品の数々だった。
それぞれの景品に付けられた値段は大変長く、金色のプレートの端まで0で埋め尽くされていた。
セイムは好奇心から、近くにいた係員に声をかけたが、その係員は起動前の自動端末で景品の一つだった。
「逃げずに来やがったな。こっちだ」
コーナーの隅で鋼鉄の柱に寄りかかっていたのは、昨日のソースを舐めとった男だった。
男は、3本指を立てて、塗装の剥がれたB級自動端に末入場料金を支払った。
ジゼルは、心細そうにセイムの上着の端をつまんでいった。
「セイムさん、やめておきましょう。なんだか嫌な感じがします」
彼女が怯えているようだったのでセイムは自分の身勝手な好奇心を咎めた。
「・・・そうですね、慣れていない僕たちを皆さんきっと迷惑がるかもしれません。あの人には悪いですけど・・・戻りましょうか?ジゼルさん」
セイムはエレベーターに振り返った。
その時、沢山の景品の中にある銀色の綺麗な髪飾りを見つけて、あれはきっとジゼルによく似合うだろうと思った。
ジゼルは安心したようにセイムを追い越してエレベーターを呼んだ。
しかし。
「おい、人から受けた好意は無駄にしちゃいけねぇって先生から教わんなかったのかよ?あん?とにかくこっちに来い、取って食いやしねぇよ。」
そうしているうちにエレベーターが来た。
中には誰もいない。
二人は、少し考えていてセイムが言った。
「少しだけ行ってみませんか?あの人たちも・・・もしかしたら・・・」
セイムの言葉を最後まで聞く前にジゼルはハッとして、そうですね。と言った。
黄色い
テーブルには既にもう一人の男が座っていた。
「『場代は』、そこのホルダーにクレジットを指し込んどけば勝手に支払われる。『安い』もんだ。」
「・・・・へへへ。いらっしゃい、坊やたち」
二人が席に着くと、男はテーブル真ん中の写しガラスに指を置いた。
「押せよ」
言われるままに二人も指を乗せると、4か所同時押しを感知したテーブルの仕掛けが作動した。
ガラガラガラガラ!!!ガラガラガラ!!!ウィーン・・・・。
『ッ!』
「ハッ。俺が親だな。」
それは、『麻雀』だった。
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