第87話「過去との邂逅」
天下布武の達成を目前にした
京都御所での
「───あの日、任務に失敗した上におめおめと逃げ帰ったあたし達を
バサラは頭に刺さる
「うふふ、綺麗でしょ?女みたいでしょ?これは
「お前はそれでいい。だが、この二人はなぜそれを刺した?私にはこの二人はお前と
「あら?もしかして気づいたのかしら?うふふ、そうよ。この二人はあたしとは違う。二人の行動も愛故の行動だけれど、
「…そうか。二人はお前が……それはさておき思わぬ所でいい話を聞かせてもらった。一応礼を云おう。ありがとう」
「???」
バサラは慶一郎に礼を云われたことの意味が理解出来なかった。
しかし、慶一郎には礼を云う理由があった。
「そろそろ終わらせようと思うが仕掛けても構わんな?」
「あらん?仕掛けますって云ってから仕掛けるなんて貴女は優しいのね。それともお馬鹿さんなのかしら?」
「ふっ…どちらでもない」
「あらそう?ならあたしの
「…はあっ!」
「な…ッ!!?」
声と共に慶一郎に向けて数十本の小さな毒針を放ち、同時に両腕の袂から鋼鉄の針を取り出しながら前へ出たバサラの頬を一陣の風が撫でた。
「ああ……そんな……あたしの
バサラの声と共に血が地面を濡らす音が辺りに響いた。
その血は肩口から切断されたバサラの両腕から流れて出ていた。
「…すまないな。私は父から教わった事があるんだ。大小様々な針を自在に操る使い手の話とその対策を」
「父?…まさか貴女は!?」
「ああ、リクとは私の父だ。リクという名は初耳だが、
慶一郎はバサラに云った。
その内容は慶一郎にとっては
そして、甚五郎はその日のバサラとの
バサラの業を破る術、それは放たれた針が自身に到達する直前に素早く剣を振り、それによって発生した風圧、即ち剣圧によって放たれた針の推進力を奪い、それを落下させることで無効化する事であった。
これにより、針を飛ばしたことで先手を取れたと
「うふふ…まさかリクちゃんの子に負けるなんてね……」
「これは父のお陰だ。無数の針を上半身に飛ばして
「……どうかしらね…あたしはユラとギドウに対して一瞬だけ見せた貴女の剣が本気だと思い込み、それがまだ肩慣らし程度でしかなかった事を見抜けなかった…相手の
「…それは誰にもわからん。もう父はいないのだから」
「いいえ、あたしにはわかるわ…自信を持ちなさい……」
「そうか。ならば、その時点での父よりは強くなれているかも知れないとだけは思っておこう。だが、私の知る父はもっと…」
「強いのね…リクちゃんはあたしが戦った時よりも強くなっていたのね?」
「ああ、恐らくはお前の知る父と私の知る父は比較にならない程に差がある」
「云ってくれるわね…あたしにとってはあの時のリクちゃんこそが至高の武を持つ人間だったのに、そのリクちゃんよりも強い貴女はあたしと戦ったリクちゃんがまだ成長過程だったと云うのね…うふふ、自らの意思で自分の限界を決めた人間は
「仮に嘘だとしても信じるさ。父の話を聞かせてくれたお前の言葉なら信じられる。……何か云い遺す
「うふふ…貴女、よく視るとリクちゃんに似ているわね…云い回しも仕草も…」
バサラは慶一郎の云った言葉にあの日のリクの面影を、即ち
「…そうか、私は父に似ているか。…そう云われるのは存外嬉しいものなのだな」
「うふふ、
「何だ?」
「貴女の名を教えてくれる?その姿での名ではなく、
「私は
「そう…慶びと書いて
それは、藩主代理の男に対する言葉だった。
バサラは慶一郎がこの後で対峙し、殺そうとするであろうその男へ向けた言葉に「愛してる」と「死なないで」という二つの言葉を選んだ。
「わかった。会った時には必ず伝えよう」
「うふふ、ありがと………さよなら……」
バサラがゆっくりと瞼を閉じると、慶一郎は迷うことなくその首を
それから慶一郎は、刎ねたバサラの首、ユラとギドウの
そして、
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