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 祝集祭も後半戦を過ぎ、あと数日というにも関わらず、街はやっぱり賑わっていた。普通の、長期間開催される祭りだったら、中日は少し人の流れが穏やかだったり、ある程度空いている日、というものがあるんだろうが、祝集祭は開催期間、ずっと人で賑わっていた。

 五年に一度の、ここでしか家族と集まらない、となると、自然とそうなるのかもしれない。イエリオみたいに、開催期間はずっと基本的に休み、と言う人も少なくないらしいし。


 そんな中、わたしとイナリは、イナリの両親に会っていた。


 イナリの父親は、イナリそっくりな人だった。イナリが年を取ったらこんな風になるのかな、と想像できてしまう程で、本当に父親似に生まれたのだな、と改めて思った。言葉にしたところで誰も喜ばないだろうから、口にはしないけど。


 母親の方は、なんというか、美人、というよりは、愛嬌のある人だった。美人系ではなく、可愛い系の人。肉付きがよく、そのふっくらとしている丸さが、より魅力的に見える絶妙なライン。そして何より、人と見間違うくらいだった。


 でも――イエリオの両親とも、フィジャの両親とも、決定的に違うのは、わたしのことを、あまり歓迎していない様子なところ。

 嫁いびりをしてきそうなほど険悪、というわけではないが、なんとなく、良く思っていないのが感じられる。イエリオのときは手放しで喜ばれ、フィジャのときは分かりにくくはあったが問題なく受け入れてくれたから、余計にそう感じるのかもしれない。


 少し重い空気の中、イナリが口を開く。


「彼女はマレーゼ。まだ家が建ってないし、首輪を送りあってないから、婚約状態だけど――僕の、嫁になる人だよ」


 イナリの言葉に、イナリの母親の眉が、ぴくっと動いた。

 わたしがこの場にいる時点で察してはいただろうに、それでも、イナリの口からハッキリと言われるのでは、また違うのだろう。


「あ、あの、よろしくお願いします」


 わたしは、イナリの両親からなんとも言えない視線を受けながら、軽く頭を下げた。イナリを溺愛していて、どこぞの女に取られてしまうのが嫌、というのが分かればハッキリしていたのだが、どうにも、それだけじゃないように感じる。

 それでも、わたしはそのくらいでひるんでなんかいられない。皆を家族として大切にする、と決めた以上に、わたしが、みんなと一緒にいたいから。


「――マレーゼさん、だったかしら」


 ずっと黙っていたイナリの母親が、口を開く。


「あなた、本当にいいの?」


 それは、なにも嫌悪感から、とか、そう言うわけではなく――ただただ、本当に疑問を感じたから聞いた、という風だった。

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