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 目を覚ましたらそこは知らない場所でした、第三回目!

 いや第三回目とは言ったけど、こんなことそう何回もあるもんなの……? いくら異世界転生や異世界転移が一世を風靡したとはいえ、一人にそう何回もあってたまるか。


 脳内では明るくふるまってみるが、知らない天井に結構パニックである。どうやら寝かされているようだ。

 どくどくと心臓が暴れて、頭の中ではシーバイズに転生したときのことがフラッシュバックしていた。

 恐る恐る手をかざしてみるが、そこにあるのは女性の手だった。よかった、赤ちゃんの手とかじゃない。

 混乱する頭の中では、どことなく違和感があるが、大丈夫、わたしの手だ。日本じゃなくて、シーバイズのわたしの、だけれど。


 辺りを見回すが、カーテンで区切られていてほとんど場所の把握ができない。ただ、どことなく病院らしい匂いがする。

 わたしがきょろきょろとしていると、シャッとカーテンが開かれた。

 オレンジと赤のまだら鱗が点々とあるその顔は、安堵に満ちていた。


「よかった……っ」


 絞り出されるようなその声に、わたしは思わず手を伸ばした。


「……フィジャだ」


 そっと握ったフィジャの手は温かくて、その存在感に、涙があふれてきた。

 ひどい話だけれど、フィジャが無事でよかった、とか、そんな感情より先に、「ああ、また別の世界に飛んだわけじゃなかったんだ」という安心感がどっと沸いた。


「ど、どうしたの? お医者さん呼んだ方がいい?」


 おろおろと慌てだすフィジャだったが、わたしはそっと、彼の手を強く握りしめた。

 彼の手を握りしめている自身の手が、思っても見ないほど震えているのに気が付いた。


 思ったよりも未練があったんだな……。


 異世界転生が慣れっこ、とは言わないけれど、それなりに自分で前の生活に折り合いをつけていたつもりだったけれど、日本にも、シーバイズにも未練があるようで。

 そして、この生活にも。

 たった三日しか経っていないけれど、彼らにも未練のようなものが出来てしまっているらしかった。

 ぼろぼろと泣くわたしを気遣うように、恐る恐るフィジャに手を握り返されると、余計に涙腺が刺激されてしまう。


 そうして、さらに泣けてしまって。


 フィジャが「やっぱりボクなんかが手を握っちゃいけなかったんだ……!」と慌てているのに気が付くまで、わたしは声をあげて泣いてしまった。

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