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「あの……?」
どうしたんだろう、と思っていると、お姉さんも少し不思議そうな顔をしている。
「お客様、本当に猫種でしょうか……? 匂いがどうも……。たまにいるんですよね、種をごまかす人」
「えっ」
バレると思っていなくて、ドキリ、と心臓が強く鼓動した。すんすん、と鼻を動かす司書さんに、わたしはなんて返すか、言葉を失ってしまった。
流石、犬。そう言うべきなんだろうか、鼻がいい。
「ね、猫です、本当に」
適当に誤魔化してみるが、司書さんは腑に落ちない表情だ。それでも、わたしが頑張って耳を動かしてみれば、今だ納得していないような表情ではあったが、引き下がってくれた。
そっと、心の中だけで安堵のため息を吐く。フィジャも、少し緊張がほぐれたようだ。
耳、動かせるようになっててよかった……。一昨日と昨日で、ようやく慣れてきたようで、なんとか動かせるようになったのだ。痺れた足を無理やり動かすようなぎこちなさと違和感はあるけど、頑張れば動かせる。さらに時間が経てば、感情と直結して、放っておいても動くようになるはずだ。
「……それでは、こちらを」
今度こそ貸し出しカードをもらった。表面に何か文字が書いてある。数字っぽい文字と、何かの文字。何かの文字の方はわたしの名前かな? じっと見ていると、フィジャが指をさしながら教えてくれた。
「これがマで、この四文字でレー、で、最後の二文字でゼだよ。これでマレーゼって読む」
「へ、へえ……」
うげえ、という気持ちになってしまったのは、ここだけの話である。
マは一文字、レーが四文字、ゼが二文字。ローマ字みたいな読み方だったら、文字さえ覚えておけば楽勝、と思ったが、全然そんなことはないらしい。ちなみに、レが一文字で、伸ばす部分が三文字だとか。
「ちなみにフィジャはどう書くの?」
図書館で大声を出すわけにもいかず、こっそりと聞く。そうして見せてもらったのが、フィジャの貸し出しカード。……うわ、三文字だ。これ絶対、漢字とひらがなみたいな関係性だよね。わたしのマレーゼはひらがなで、フィジャの方は漢字、みたいなイメージであってるんじゃないだろうか。
シーバイズ語はほぼローマ字みたいなもんで、挨拶の言葉や地名などは少し特殊で短く表記されていたが、その特殊型さえ覚えてしまえばあとはローマ字読みでどうにかなったもんだから、フィンネルの方も楽勝でしょ、なんて鷹をくくっていたのだが……。
普通に難しそうで、わたしは心の中で頭を抱えるしかなかった。
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