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改めて、街並みを探索していると、あれは何、これは何、と好奇心がそそられるものばかりだった。周りからしたら、完全に初めて都会へ来た田舎者、という風にしか見えないだろう。ま、まあ田舎者なのは事実だし……。
逐一フィジャにたずねて、フィジャもフィジャで一つひとつ律義に答えてくれるので、図書館にたどり着くまでに随分と時間がかかってしまった。とはいえ、あれこれ道中を探索しながら来たので、次もそんなに迷わずに、フィジャの家から図書館まで行くことが出来るはずだ。
「おお、結構大きいね」
一昨日見た冒険者ギルドより、さらに大きな建物だ。ホラーゲームの舞台になりそうな、ちょっと薄暗い、それでも立派な洋館のような建造物。図書館、と言うよりは、どこかのお金持ちのお屋敷、と言う方が近いような気もする。
「足元、気を付けてね」
わたしの前にいるフィジャが、振り返りながら言う。
確かに、入口へと続く石の階段はぐらついていて、その上、踏面が狭いのでぼけっと歩いていると躓いて転んでしまいそうだ。
その数段を登り、図書館へと入ると、わたしは小さく感嘆の息をこぼした。
凹の字に室内は形どられ、壁はすべて天井まで本棚が並んでいる。中央に螺旋階段があり、そこで二階へと昇れるようだ。出っ張った部分と螺旋階段がつながり、少し廊下のようなものが出来ている。
一階部分には、長方形の机が等間隔に並べられ、ちらほらと利用者が本を読んだり、何かを写し書いているのが見える。
前世ではあまり図書館に足を運ぶことはなかったが、絵画のような図書館に、見るだけでわくわくしてきた。
「マレーゼ、こっち」
声量を落とした、囁きのような声でフィジャがカウンターへと案内する。カウンターは、入り口から入って、すぐ右のところにあった。
司書さんであろう犬獣人らしき女性に、フィジャが声をかける。
あれこれと、司書さんから図書館のルールを聞き、フィジャに手伝ってもらいながら貸し出しカードを作った。現代日本の様にバーコードで管理するのではなく、すべて本にまとめてあるらしい。故に、一回に借りられるのは基本的に一冊まで。学生だと五冊まで借りられるらしいが、まあわたしには関係ない話だ。なお、貸出期間は一週間。
一週間に一冊、絵本を借りて読み解いていくのがいいかな……。
そんなことを考えていると、貸し出しカードを差し出すお姉さんの手が止まった。てっきりすぐ受け取れるものだと思っていたので、受け取ろうとしていたわたしの右手が行き場をなくす。
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