第41話溶接の実習

 4年生になると溶接の実習があったが、その頃は鉄工所で働いて居て、毎日酒田港で新潟沖地震で壊れたのを復旧するためのテトラポットを積む簡単な箱舟を何艘も造って居たので、アーク溶接は全姿勢プロだった。

 小さいながらも船である為起工式や進水式は神主を呼んで、料理やお酒が出るので他の現場よりは楽しいものだった。

 造船と言ってもただの波打ち際の砂浜で、三脚をうまく使って何とかして居たが、骨材は切り板をエル字に曲げたものだった。


 先ず砂浜に底板を並べその上に竜骨を組む、その竜骨に沿って側板を取り付け、内部の溶接を済ませてから上板をはった。

 そこで一メートルほどジャッキアップして溶接だが、防毒マスクをしても10分程しか入って居られない。

 もっと大変だったのが内部の塗装さび止めだが、これは5分しかできなかったが、当時の対岸の漁船からは流行りの流行歌がガンガン聞こえてきたのを思い出す。

 それと波打ち際には食べても美味しくないボラの大群で有った。

 それでもその年は3隻造ったように思う。

 最後に船底に丸太のオスメス状の橇をを置いてユックリ下すと一人で海に流れ出すのだった。

 当然残材も出るので、離れた町のスクラップ屋さんに売っておこずかい。

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