第35話中国単身赴任(5)

 会社側では受注に間に合ってない状態なのでラインを止めないで何とか原因を調べて欲しいとの事だったので、工場の組み立てラインや部品の外注先などを1週間もかけて調べたが、これと言った原因は不明であった。


 ちなみに何時頃からこの不良品が出始めたのか会社側に尋ねると、今の製品になってから3年余りだと言う。

 私は直感的にこのミスは加工場のミスではなく設計のミスなのだろうと思い、設計部に図面一式の提出を指示したが、どう言う訳か拒否して来たのである。

 仕方なく社長命令で図面を出させたら分厚くファイリングされたモーターの図面が出てきた。

 それを私の事務所でパラパラと3ページをめくってすぐ図面の間違いを発見したのである。

 簡単に説明すると寸法公差の表記が+0.1 -0とするべき所を±0.1になって居るのだ、この事でラジアルベアリングに内輪と外輪に無理がかかるのは設計上の常識だが、多分設計部は全て大学院の卒業らしいので、原因はとっくに分かって居たのだろうが、表ざたにしたくない彼らの面子が、3年間で3億円も会社に損害を与えていたのであろう。


 当時は中国の縦社会が非常に気になって居た事だったが、年俸900万円などでは無く、最初から一部成功報酬にすれば良かったと思ったが後の祭りである。

 社長も専務も機械には疎く、設計部も何となくごまかし切れると思ったのであろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る