第16話鉄工所での体験
新潟地震の直後に破壊された新潟港の復旧工事用の仕事が入ったが、テトラポットを乗せる艀で3台の受注であったが、造船所等の設備もない単なる砂浜である。
荷役の重機もない単なる砂浜で、どうやって幅7メーター長さ15メーター高さ1.8メーターの艀をどうやって造るのか、今では考えられない方法であった。
一応艀とは言えども海に出る船であることから、安全を祈願して起工式と進水式は神主に来てもらい祝詞を挙げて一杯やるということだが、約ひと月で一艘を完成させる予定で始めたが、我々同級生と他は国鉄の機関区などのてをかりてやった。
同級生の親父さんは作業は出来ないが、顔が広く職人を探すのは得意で、機関区の人も、普段はさほど作業もなく声をかければ喜んで来てくれたので、何とか希望納期には間に合った。
材料は全て9mmの鋼板で、内部の骨もエル字に曲げたもので、そこの平らな部分に骨を組んで、その骨に沿って外板を貼り付けて行くのだ!
仮組が終わると全体を1メートルくらいジャッキアップして本溶接に入るが、これは全姿勢での溶接技術を身に着けるための格好の条件となり、その後においてもアーク溶接では他人に負けないほどの自信につながり、千葉県での企業の元となったと思う。
一番大変だったのは溶接が終わってペンキ塗りが、中は防毒マスクをしても10分と入って居れないが、シンナーで頭もふらふら状態!
ペンキも乾きいよいよ進水式だが、内部で漏れそうな場所を再点検し海に出す準備だが、艀の下にそり状の二本を艀の下から水辺まで設置し、浜辺はなだらかな傾斜になっているのでジャッキアップしたのをゆっくりそりの上に下ろすと、艀はゆっくり海に出て行く。
そもそもレッカー車などなかった時代で、発注が材料屋であったためトラックに積んで順調に現場に運んで来ると一枚づつワイヤーでアンカーに結んでトラックを走るだけで地面に落とす原始的な方法だが、横移動も三脚でやっていたが、それでも納期に間に合わせる気力だけは十分に有った。
ただ他の仕事に比べ嬉しいのは、起工式と進水式にはそれなりのご祝儀もあって、仕事のやる気には拍車がかあった物であった。
港にたどり着く漁船からは、当時はやりの流行歌が流れていたのを思い出す。
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