第14話糸の切れた凧状態

 父が亡くなった後の自分は何でなのか自分でも今となっては理解できない事が次々とやらかして居た。

 先ずは住み込みを辞めて赤線時代は有名な女郎屋だった木造3階建てが、個室の貸し部屋になっていた。

 木造とは言え3階造りなので、柱は太く床は滑るくらいに磨かれて居たし部屋は全て4畳半で廊下とは障子で隣の部屋とは襖であった。

 一見して分かる赤線が廃止になっても行先の決まっていない女郎が、住民として数人は残っていた。

 部屋代は朝夕の2食付きで確か6000円だったと記憶していて、1階の大きく立派な座敷に囲炉裏があって虎の皮と熊の皮が敷いてあり、上座には何時もつるっぱげの主人が虎の皮の上に胡坐をかいていた。

 座敷の横には長机が有って、そこで賃貸人が順に食事をするが、人によって仕事が違うので時間で込み合う事も無かったし、野菜類は近くに畑もあるらしく採れたてが出ることが多く、食事には満足できた。

 ただ不満は隣の部屋とは声も筒抜けで、今で言うプライバシーなど全く無いく、ある時など隣の25歳くらいの男性が女を連れ込んでことが終わるまでの間の音、例えばことが終わってチリ紙でふく音まで聞こえたりしたこともあった。

 どうやら女のほうは処女だったようでしくしく泣いているし、男のほうは畳についた血を迷惑そうにふき取る様子が聞こえるのだ。

 こっちは17歳の夜学生で、布団にもぐって眠れない夜を過ごしたのを覚えているが、翌朝その彼と顔を合わせても何もなかった素振り。

 私はその頃市内ではなく郡部の学校の営業や配本を担当していたので、ホンダの250CCのバイクを乗り回していたが、免許を取るまでは自転車で砂利道でほこりを浴びながらの大変な状態だったのだ。

 

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