第6話 街での初夜
武器屋を出た三人は続いて隣の防具屋へ向かう。そこには先程の武器屋にいたアスタと瓜二つのドワーフがいた。
「おう、レジス。アスタの店帰りか?うちに来たって事は後ろの兄ちゃんかい?」
「そうそう。ガスタさん、見繕ってあげて欲しい。」
どうやらアスタとは双子らしいガスタの見立てで防具を選んでもらう。その際に武器や戦闘スタイルなども伝えておいた。
「うむ。兄ちゃんなら硬めの皮素材で組んだ方が良さそうだな。森のエルフって事は風の加護があるだろう。金属鎧を付けると速度が上がりきらなくて余計な攻撃を喰らう可能性がある。その点皮ならまだ動きやすい。ただしよく体に馴染ませなきゃ関節が動きにくい。兄ちゃんの体に合わせてある程度癖は付けておくが暫くは違和感を感じると覚えときな。」
「承知しました。助言ありがとうございます。」
早速装備する。アスタの店で購入した細剣もあり冒険者としての雰囲気が出た所でこちらにも銀貨3枚渡して店を後にする。
「そう言えば購入したのは剣だけだったけどいいのか?杖も買えばよかったのに。」
「いえ、杖も考えたのですがアスタさんに『その杖を下取りしたらむしろ多額を払わなきゃいけねぇ。』と言われました。魔力の伝導率が良く一級品だそうです。」
成る程。と納得した様子で店を出たレジスと共に道具屋にも寄って薬草等を補充する。前回使用していた炎属性魔術のスクロールも買い足しておいた。
その後適当にぶらつきながら冒険者通りを散策した三人は夕時になったのもあり交易語の参考書を購入してから酒樽の飛沫へと戻った。
※※※
「お帰りなさいませ〜…ってなんだ。レジス達か。」
酒樽の飛沫に戻ると営業スマイル前回のラフィンが表情を戻しつつ出迎えてくれた。エントランスは依頼から戻ってきた冒険者が沢山座っており、食事を摂りながら談話していた。マーレー達も空いている座席に座る。
「どうせならラフィンも交えてマーレーさんの歓迎会したいしそれまで時間潰そうか。」
「それなら交易語を覚えながら待ちましょうか。早めに話せる様になった方が困る事がないでしょうし。」
早速先程買ってきた参考書を取り出したキリに交易語を学びつつ2時間程経った頃、ディノから今日のバイトを上がっていいと告げられたラフィンが合流して来たところで食事を注文する。
「働いたからお腹ぺこぺこだよ〜…何食べる?」
ラフィンは自分が働いているのもあってかメニューを一つ一つマーレーに教える。と言っても森のエルフは夕食をほとんど必要としないの為軽めの山菜のサラダと水だけ頼み、卓上に並べられた殆どの料理はレジスとラフィンの好きな物になった。
「それじゃ。改めてラフィンさん、ようこそ俺らのパーティーへ!乾杯!!」
『乾杯!』
レジスとラフィンとキリは麦酒を、マーレーは水の入ったグラスを鳴らして乾杯する。一気に飲み干したレジスはすぐに追加の麦酒を頼みつつ、他の三人はほどほどに飲みつつ、運ばれてくる食事に手を出しながら談笑した。
※※※
「もうのめらいのぉ…らふぃんしゃぁん…。」
「…弱いんだから飲まなきゃよかったのに…。」
歓迎会を始めてから1時間。たった二口で出来上がったキリに絡まれながら食事を終えた一同は彼女がふらふらなのもあり解散することにした。ラフィンがキリを抱えて部屋に戻るのを見届けてマーレー達も部屋に戻った。
「多少は話せそうかい?マーレーさん。」
「あー…ええ。少し、ゆっくりであれば。」
流石はエルフと言ったところか。地頭の良さもあり完璧ではないもののある程度会話が出来る様になったのを見てレジスは嬉しそうに笑う。
「うん、それじゃ明日からもう少し学びつつ依頼やってくか!」
「そうですね、頑張りましょう。」
軽く言葉を交えて二人はそれぞれベッドに横たわる。窓際を譲ってもらったマーレーは月明かりに目を細めつつ今日を振り返り、明日に備えて睡眠を摂る事にした。
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