第4話 冒険者通り

 組合を出たマーレー達はレジスの案内の元街を散策する事になった。



「これから住む街だからある程度の場所は覚えておいた方がいい。と言っても大抵はこの"冒険者通り"って言われてる道で済むけど。」


 レジスの言葉通り、この通りには組合の他にも武器屋に防具屋、道具屋、鍛冶屋、取引所等がある。この通りだけでもほぼほぼ生活には困らないだろう。


「この通りを北西に抜けると中央広場がある。中央広場から見て北が行政区。西が居住区。南が商業区で東が興業区になる。俺達の宿は現在地から見てちょい西に行った方向だな。」


 冒険者組合は興業区と商業区の間にある。ちなみに街の入り口にあたる門は街の最南に位置している。


「ところでマーレーさん。森に住んでいた時ってお金とかその辺はどうしてたんだい?」


「???…お金?」


 首を傾げたマーレーを見た三人はやはりか…と苦笑した。


「秘境での物の取引はどの様に行ってたのですか?例えば…採集を行う方から食物を頂く時とか…。」


「取引…我々は基本自然の恵みは個人の物でなく里の物という認識でしたので誰かが独占という事はありませんでした。全てを分け与える事で全てを得られる。施しという物はあくまで自然からの恵みであり我々はそれらに価値をつける事などなかったですね。」


「成る程…。立派な教えだと思います。本来なら私達も勝手に価値をつける事なく行う方が正しいのかもしれません。ですが見ての通り外の世界と言うのは沢山の人々が住んでいます。この街の大きさですら数万と言う人々が。王都となれば何倍も人が住んでおり更には国外からも来られます。単に価値をつけずに分け与えるといずれ枯渇するでしょう。更にはそれだけの人々に与える為には相応の労働力が必要となります。残念ながら人と言うのは全てを養う程の恵みを得る事は出来ません。なのでお金という万別する事のない基準を作り恵みに価値をつける事で労働に見合う給料を受け取り、恵みに見合う価値を支払う事で繁栄しているのです。」


「成る程…。」


 キリによる経済の仕組み勉強会(仮)を受けたマーレーは深く頷きながら納得する。その横でラフィンはポカンとしていた。


「まっ…全くわからない…。」


「いや君生まれも育ちも普通にお金使ってる場所でしょうが。」


 目を回してるラフィンにレジスが溜め息を吐きつつ何かを思いついた様子でマーレーの方へ向き直る。


「そうだ。先日討伐したコボルト達の素材やマーレーさんの秘境周辺の魔物の素材とか有れば取引所に持っていけばお金を貰えるじゃないか。」


「確かに。それでは持って行ってみます。」


 ※※※


 冒険者通りを南東に進み最端まで進む。組合程ある大きさの建物の中に入ると中は取引所となっており、討伐を終えた冒険者は依頼報告を行う前にここによる。剥ぎ取りした素材を換金した後、店員から受け取り証明書を貰い組合に提出するのが決まりとなっている。


「討伐対象によっては持ち運んでいると邪魔になる物があるからねぇ。ほら、あれみたいに。」


 ラフィンが指差した先には討伐を終えたベテランパーティーと、その後ろにある彼らよりも大きな角が運ばれていた。


「あれは本体をみた事なくてもよく知ってる。ビックホーンって言われるモグラの角だね。鉱山地帯に住んでてかなり強いらしいんだ。」


 取引所から出てきた数人のドワーフが大騒ぎしながら状態を確認している。他にも様々な素材を持ち込む冒険者は多く、出入りする人々は後を絶たない。


「ま、依頼を受けてなくても問題無いしとりあえず入るか。」


 一同もレジス先導の元中に入り目的を果たす。ちなみに、換金した物はコボルトの皮を十枚、コボルトリーダーの皮を一枚、更に大森林の深部で採れる希少なきのこを幾つか出した所、銀貨20枚で取引された。


「結構な額になったな。」


「そうなのですか?」


「ああ。ここ"サラディア王国"の貨幣は1金貨=100銀貨=10000銅貨で換算される。ちなみに単位は1銅貨=1サディとよぶ。交易都市だと外国の人達も来るから混合しない様にしてるのさ。で、基本的に一泊の宿代が10サディ。今マーレーさんが持ってるのは2000サディだから、単純にそれだけで200日分の宿代が払えるのさ。勿論、買い物とかも必要だから全て生活費にってのは出来ないけど。まぁ、この先稼げば良いからな。」


「成る程…確かに、レジスが扱う様な鉱石の剣や防具も必要となりますから多くに越した事は無いのですね。」


「そうそう。折角だし俺達の宿に行った後装備買いに来るか?俺と男二人で…って言いたい所だが通訳居ないと会話出来ないからキリも交えて三人で!」


「ちょっ、それなら私も行く〜!!」


「良いけど…宿のバイトは良いのか?今日ラフィンの当番だった気がするけど。」


「…げっ。しょんぼり…。」


 目に見えて落ち込むラフィンをレジスがからかい、キリが慰めつつも冒険者通りを後にした一同は宿のある商業区へ向かう事にした。


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