おまけ2・ビッチヘイムの妖精さん
★★★(ヒカリ)
私はヒカリ・ヤマモト。葉秘元年生まれの8才。
スタートの街を救った聖女、漢字聖女と言われている、クミ・ヤマモトの娘。
スタートの街の寺子屋の2年生。
家族構成は両親におじいちゃん。ひいおじいちゃんも居たらしいけど、私が物心つく前に死んじゃったらしい。
相当私のことを可愛がってくれていたって、お父さんが言ってた。
あと、私の下に弟が3人。2才下の弟のサトシと、その2つ下に双子の弟のトミイチとトミジ。
全員お父さん似で、お母さん曰く「Y遺伝子って強いんだね。顔見ただけで男の子の場合、誰の子か分かるわー」って言ってた。
Y遺伝子って何?
ウチのお母さんはたまに分からないことを言うんだ。
まあ、そんなことは、別に大したことじゃ無いよね。
実は、私には秘密があるんだ。
それは……
『ヒカリ』
私の傍には、妖精が居るのだ。
名前は、テツコというんだけど。
ビッチヘイムという国から来た妖精なんだけど、物心ついたときには、すでに居た。
他の人には教えてはいけないよと言われているので、誰にも話していないんだけど。
見た目は、黒いセーラー服の年上のお姉さん。靴は履いて無くて、裸足。
おとなの姿で(17才くらい?)
見た目はすごく美人。
目が大きくて、唇薄くて、背が高くて。
髪の毛が金色。それを肩に掛るくらいの長さで切り揃えてるんだ。
で、おっぱいがすごく大きい。
ウチのお母さんも、おっぱい大きいけど。
それ以上。
そんな妖精が、私の傍にいつもいる。
私の傍で、宙に浮いて、ふよふよしてる。
そんな妖精が、私に言って来た。
『ヒカリ。アンタのお母さんが塞ぎ込んでるよ。励ましてあげなって』
はいはい。
言われなくてもそうするよ。
テツコはビッチヘイムで色々あったらしく、よく「アンタは良いお母さんのところに生まれたんだから、精一杯親孝行しなさい」って言ってくる。
良いお母さんって……悪いお母さんってものが居るの?
テツコもよく分からないことを言うんだよね。たまに。
私はちゃぶ台で顔を伏せているお母さんに近づいた。
お母さんの頭の傍には、丸い眼鏡と、前にお母さんが「アイスクリーム」って呼んでた、棒みたいな硬い凍ったお菓子が数本。
食べさせてもらったことあるけど、正直、あまり美味しいと思えなかった。
お母さんもそれが分かってるのか、味の感想を聞いてこなくて。
無理に「美味しいよ」って言うの、良くないんじゃないの? って。
そう思ったことを覚えてる。
多分、このアイスクリームもおんなじ。
お母さんの中で、失敗作って扱いの、お菓子。
だからお母さん、ちゃぶ台に顔を伏せて塞ぎ込んでる。
上半身をちゃぶ台に伏せて、突っ伏してる。
顔を伏せて、お母さんの大きなおっぱいが、着物の上からだけど、ちゃぶ台で潰れてる。
……元々は、あんまり大きくなかったって、お母さん言ってた。
でも、私を産んで、サトシを産んで、トミイチとトミジを産んだら、戻らなくなって、今があるんだって。
赤ちゃんをたくさん産むと、おんなのひとはきょにゅうになるんだって、お母さん前に言ってた。
……まぁ、そんなことは、おいといて。
いまは、かんけいないから……
「お母さん、どうしたの?」
まず、声を掛けないと。
なんとなく、理由は分かってるんだけど。
私たちを喜ばせようと思って、頑張ったのに、上手く行かなくて落ち込んでるんだよね?
お母さん?
そしたらやっぱり。
思うようにアイスクリームが作れないから、って理由でお母さん落ち込んでた。
……どうすればいいのかな?
すると。
『ヒカリ。アタシの言うとおりにしなさい』
テツコがそんなことを言って来たんだ。
「……え?」
『アンタがアイスを作るの。作り方は教えてあげるから。……まず、大量の氷を出して貰って。あとアイスの材料』
私は……作るの?
料理したこと無いんだけどな。
……でも。
なんか、出来る気がした。
だから、こう言ったんだ。
「分かった。うん、そうする……」
『卵を割るの。ヒビを丁寧に入れて、力を入れずに左右に開いて……そう。さすがアンタ』
テツコが言うとおりにお母さんに用意してもらった材料で、アイスクリームの素を作っていく。
何故か私は、初めてのはずなのに、楽々とそれが出来た。
『最後は氷よ』
テツコは言った。
氷に塩をたっぷり振り掛けると、すごく冷たくなるから、その冷たさでアイスを固めるんだ、って。
アイスのふんわりは、中に含まれる空気のおかげだから、そうすることによりふんわり仕上がると。
そしたら。
言われた通りにしたら。
……出来た。
お母さん、すごく驚いて……泣いてた。
懐かしいんだって。
お母さん、自分の記憶が無い状態でこのゴール王国に1人でやって来た人だから、子供の時の記憶は無いはずなんだけど……
そういう記憶はあるみたい。
よく分かんない。
私も食べさせてもらった。
……すごく美味しかった!
弟たちにも食べさせてあげようと思ったから、呼んできた。
サトシたちは「美味いよお母さん!」って言いながら、どんどん食べていく。
結構あったと思ったんだけど、あっという間に無くなった。
そして別の日。
私は、余所行きの服を着せてもらって。
お母さんが昔仕事をしていたっていう、お菓子屋さんに連れて行ってもらった。
何だろう?
お団子を食べさせてもらえるのかな?
だったら、サトシたちも連れて行こうよ……。
お母さんに手を引かれて連れて行ってもらいながら。
私は家に置いて来た弟たちの事を想っていた。
弟たちは、今日がお父さんの工房がお休みの日なので、お父さんに面倒を見て貰ってるハズ。
遊んでもらってるんだろうけど……
私だけ、美味しいものを食べるの、ヤダ……
私、お姉ちゃんなのに、弟たちをそっちのけで、自分だけ美味しいものを食べるなんて……
でも、このお菓子屋さんのおじさん、お母さんが昔お世話になった人だし。
私が我儘を言うと、お母さんが恥を掻くから、黙ってた。
「ヒカリ・ヤマモトです」
挨拶だってちゃんとする。
私はお姉さんなのだし、サトシたちの見本にならないといけないんだから。
すると、お菓子屋さんのおじさんはすごく喜んでくれた。
『さて、アンタのお母さんは何をするつもりでここに来たのかしらね?』
私の傍で、テツコが腕を組んで浮いていた。
……お菓子を食べに来たんじゃ無いの?
……お菓子を食べに来たのはその通りだった。
だったんだけど。
少しだけ、違ってて。
お母さん、この前美味しくできたアイスを、ここに持ってきて。
他のお菓子と、合体させたんだ。
大福餅と、最中と。
……大福餅は弟たちだと喉に詰めてしまうから、私だけ連れて来たんだね。
やっと、意味が分かったよ。
『……雪〇だいふくとアイスもなかを作ろうって言うんだね……さすが道本さん。隙が無い』
テツコはそんな事を、お母さんのやってることを眺めながら感心した感じで、呟いていた。
道本さん……?
テツコの言ってること、ちょっとだけ気になったけど、目の前に完成品の新しいお菓子を出して貰えたら、そんなことは吹っ飛んじゃった。
だって、とても美味しかったから。
アイスだいふくは、お餅の部分がアイスの甘さと合わさって、とても美味しかったし。
アイスもなかは、皮のパリパリ感と、アイスの冷たさを閉じ込めるところが「美味しい」になってる。
私はアイスもなかが好きだったけど(弟たちも食べられるし)お菓子屋さんのおじさんは、アイスだいふくが良いみたいだった。
そして、自分の店でも売り出したい、って言ってて。お母さんがそれを「いいですよ」って。
そしたら。
『……一応、釘を刺しておいた方がいいのかな?』
それを見ていたテツコが、ぼそり、とそう呟いて。
私にこう、耳打ちしてきた。
『ヒカリ』
何……?
アイスもなかを食べながら、私は聞いた。
テツコは、こんな事を言ったんだ。
『お母さん、雪〇だいふくは■ッテの製品だよ、って言いなさい』
雪〇だいふく……?
■ッテ……?
よく分からなかったけど、テツコの言ってることで間違ってたことってあまり無かった気がするから。
言われた通りにしたよ。
お母さん、すごく驚いていた。
……何なのかな?
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