第4章 カオナシ

第13話 遭遇


 その日、王都の西3キロルのところで王国騎士団は巡回を兼ねた演習をしていた。

 

 班長は30歳のサムナ。

 

 新人のホバーバイクの搭乗技術の向上も兼ねて、班内でレースを開催していた。


 適当な岩を目印にしてそこまで全速力で走らせ、ターンして帰ってくる。


 トーナメント制になっており、決勝まで上がれば班長のサムナと対決することになっている。


 トーナメントの山が半分ほど消化された時にある隊員が異変に気付いた。


 遠いのか、近いのかも分からない蜃気楼のように人影らしきものが見える。


 違和感、そして殺気。


 隊員がサムナ班長に報告するとレースは即中止となり、新人のカズマが呼ばれ、王都に伝令を命じられる。


 内容は「カオナシが王都の西3~4キロルに現れたもよう」である。


 カズマは何か班長に言いかけたが、すぐにホバーバイクのエンジンを入れ、王都に向かった。


 残った隊員は9名。


 全員が王都から離れて行ってくれと祈りながら、カオナシの方角を見つめている。


 それを嘲笑あざわらうかのようにカオナシはその20メルはあろう体を揺らしながら迫ってくる。


 

 サムナがメンバーに指示を出す。


 カオナシを9名で倒すのは不可能。

 王都への進行ルートを変更させるように攻撃を仕掛ける。

 

 3名ずつ3組になりカオナシに向かって飛ぶ。


 カオナシはその巨体からは思えない程軽快な動きをする。


 班員は十分安全な距離を取っているつもりだったが、カオナシの動きがそれを上回った。



 残像が残るようなスピードで動いたかと思うと、右手と左手に隊員の体が握られていた。


 なす術もなく、2人は握りつぶされる。


 カオナシは隊員を無雑作に投げ捨てると、両手についた血をぺちょぺちょとなめる。



 さらに距離を取って囲むが、そうすると王都の方に歩き始める。



 騎士団はぎりぎりまで近づくがまた、近づきすぎて1人カオナシの両手に掴まれて命を落とした。


 カオナシはその間も王都に向かって歩き始める。

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