第14話 緊急事態宣言


 王都キルリには緊急事態宣言が出された。


 王都の西・南・北の地域の住民は東地域、もしくは王都外へ避難するように警報が出た。


 30万人の王都の住民はそれでもパニックにはならずに移動する。


 避難誘導には王都警察がその任に当たっている。


 最も西門に近いほうから順番に東へ移動が開始された。


 その間にもカオナシは近づいてきている。



 カオナシは目も鼻も耳もないが、尖った牙を生やした口と舌はある。


 その不気味な口で子ども、特に幼児を好んで食べる。


 

 王都の西部地区の30パーセントの避難が終わったところで、とうとうカオナシが王都の外壁にたどり着いた。


 その頃には王国騎士団のホバーバイク50台ほどがカオナシの周囲を取り囲んでいる。


 王国騎士団の指揮はガラナ団長が直々に執っていた。



 対モンスター用の威力の高いボウガンなども命中はしているが、カオナシにはまるで効いている様子がない。


 接近戦でダメージを与えようとして、すでに10名近い団員が犠牲になっている。


 カオナシは外壁の近くから、大きく跳躍し、王都の中に入り込んだ。


 無人の地区。


 王国騎士団は慌ててカオナシを追いかける。


 それを嘲笑あざわらうかのように、一直線に走る。



 そして、止まった。


 そう、そこには幼児2人を含んだ家族4人が避難をしているところだった。


 カオナシは表情もないのに嬉しそうな雰囲気をして、まずは両親を片手で掴んで握り殺す。


 残された男の子と女の子はただ、呆然と立ち尽くす。


 カオナシは宝石でも掴むようにそっと二人の幼児を掴むと、口の中に放り込む。


 カオナシの口の中で2人がはじけるように肉の塊となり、血がカオナシの口からこぼれおちる。



 それを見た王国騎士団の若手がいきどおり、カオナシに突っ込んでいくが軽く握りつぶされてしまう。



 カオナシは、幼児を求めて王都の深くまで入り込む。


 もう、10人近い幼児とその両親が犠牲になっている。

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