グズグズにトロトロにサラサラに

 仄暗い空間、周囲に浮くは役目を終えたデイフの水。

 その中にあって未だに転移者を孕んでいるデイフの殻が一つ。

 彼の名前は諸葛もろかずりょう、未だにデイフに溶かされていない転移者。

 他の転移者達は周囲を見て貰えば解る通り、既に異世界へと旅立ちそこで環境の激変とそこからなる試練とも先例とも呼べる状況にその心身をすり減らしている。

 そんな中、諸葛もろかずりょうは未だに身体の調整をしている段階。

 今の彼の身体はグズグズになっていた。

 デイフの水により徐々に融解されていく身体は、皮膚を溶かし筋繊維を溶かし血管を溶かしていた。

 血管が溶かされ血が流れ出た為、今デイフの水は斑に血の色に染まっている。

 本来であれば個人差で多少の差こそあるが、一瞬と呼んで良い程の速さで終わる工程が数日に及び行われている状況。

 さらに数日。

 諸葛もろかずりょうはついにその身体の全てを溶かしきられてしまった。

 デイフの水は人一人分の成分を抱え込みトロトロとした質感へと変貌していた。

 さらに数日。

 新たに肉体を構築する為に、人間だった肉体をより強固にする為に、肉体を構成していた物質にデイフの水が結びついていった。

 その結果として、デイフの水はサラサラとした質感へと変貌していた。

 そして準備が整いゆっくりと時間を掛けて、異世界転移をするに耐えうる肉体を構築していく。

 諸葛もろかずりょうに新たに与えられる肉体はスペシャルだ。

 今回の異世界転移者の中で最も時間を掛けられた為に、最も強固な肉体を拵えられたのだ。

 そして、他者との境界を強く認識出来る者に、その状態が自分の状態だと認識出来るだけの状態へと変化させた。

 つまり、自分の認識上の肉体の拡張。

 曖昧さを孕みつつ明確な境界認識の獲得、これにより彼は他者の追随を許さない能力を獲得する事になった。

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