他者との境界
デイフの水が
その中で溶かされ生命の坩堝となっている転移者達。
そんな中、未だに人の形を保ったままでいる存在が一人いた。
彼の名前は
ここまでデイフへの拒絶を行えるだけの存在は珍しい。
肉体的には他の個体と同程度の強度しか無いはず、となると、これは魂に起因する結果と言う事になります。
「エラ、この場所に呼び込んだ当初の彼の情報を」
“こちらになります”
イナンナはこの場所に連れてきた当初の情報をエラ=シシスア=レス・イギ=テテリムより取り寄せる。
そこに記されている各種データを流し見る速さで見るが、的確に情報を収集し解析していくイナンナ。
瞬く程の時間であっという間に結論を導く出すと一言。
「有り難う、エラ」
“どういたしまして”
とだけ零し視線をデイフの殻の中で揺蕩う諸葛へと向ける。
やはり、この現象は魂起因の結果。
システムへの適合率が低いと言うと語弊がありますか。
システムを認識出来る能力といった所ですかね。
他者と自分との間を明確に認識する能力と、そこから来る他者との隔たりを明確化する能力。
「貴方からの介入にすら隔たりを認識する事が出来る程とはすごいですね」
“はい、この存在は特異個体として成長させていた存在ですので”
「成程、では、今回の転移に学校関係者以外のイレギュラーとして巻き込まれたのはフォーラス神群様のご意向と?」
“その質問に関しては答えられません”
鼻息一つ、溜息のように吐き出すとイナンナは思考を巡らせつつエラ=シシスア=レス・イギ=テテリムに返答する。
「そうですか、解りました」
そうなりますと、この件にどう私が対処するのもまた、楽しみにして居られると言う事でしょう。
思考に数瞬の間が空き。
この魂が耐えうる限りの強化を施す事にしましょうか。
今回の転移、フォーラス神群様方の意識がかなり向いているようですね。
そうして始まるのは時間を掛けた
如何に強固な他者との境界認識とそれから来る境界の強度を誇っていたとしても、それは一個人としての能力でしか無い。
世界そのもの、世界の理であり、アカシックレコードでも在るエラ=シシスア=レス・イギ=テテリムからの介入を防ぎ続ける事は無理である。
そう結論づけてイナンナは、自身の作業リソースの大方を
「エラ、彼の魂を、魂の許容量の許す限り強化します。それに辺り彼に適切な能力は何かありますか?」
“このスキル、ノウレッジテクニックは如何でしょう”
打てば響く速さで、適格な返答を繰り出すエラ=シシスア=レス・イギ=テテリム。
それはまるで、
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