戦いを目の当たりにした時のレポート(3)

「あれ? あなたはもしかして、笠原工業のご子息だよね? なんでこんなところにいるの? 琴平の人質にでもなった?」

「…関係者どころか身内じゃねぇか」

 それを聞いた伊野田が毒づくのが拓の耳にも入る。


「あれ? きみは知らなかったの? 笠原拓。笠原家の長男だよ。公になってないけれど家を飛び出したことは知っている。ぼくを追ってることも知っているよ」

「追ってることも知ってた…?」


 話が見えない中、拓は意図せず横にいる男の顔を見上げた。琴平と呼ばれた男は、拓に初めて笑みを浮かべて見せた。”おまえの素性など、自分はハナから知っていたが、何か?”と言わんばかりの顔に、拓は思わず舌を噛んだ。


「追ってることを知ってた? それじゃおまえが、本当にウェティブ・スフュードンなのか?」

 彼の問いには誰も答えることもなく、いびつな機体は伊野田に向き直った。


「まずはきみを行動不能にしようと思う。そのあと琴平。ついでにご子息も無力化しておこう」

「そんな出来損ないの機体で、よくそんな大口が叩けるな」

「機体の状態は良くないけど、叶えたいことは口に出さないと」

「そうかい」

 言い終えると同時に、先に踏み出したのは伊野田だった。

一瞬で機体の間合いに踏み込むが、相手も後方に弾んだ。

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